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異世界甘味処 木の実  作者: 兼定 吉行
初戦、事件、加入
63/87

夜を統べる

「どうした? 来ないか? 来ないならこっちから行くが?」

「くっ!?」

 エレミーからの挑発にも、刺客達は不用意には動かない。

 いや、エレミーの持つ強大な力を察知したからこそ、本能から怯み、動けずにいるようだ。

 凄いな……。

 こうやって隣にいると、魔力の無いはずの僕にさえビンビンとその強さが伝わってくる。

 僕にはこの状況が未だ信じられなかったが、なんとかそれを受け入れてエレミーに話し掛けた。

「……まさか本当に、エレミーが僕のボディーガードとして役に立つ日がくるなんてね。とんだどんでん返しだよ」

 エレミーの淫靡な口元が微笑み、その見る者の魂を吸い込むような蠱惑的な目がこちらへと向く。

「どんでん返しじゃない。それも最初に言ったこと」

「ま、まあそうだけどさ」

「これでナギもわかったな? 私こそがあの伝説の亜人種、サキュバスの末裔なのだー」

「んっ?」

「んっ?」

 伝わっていないとでも思ったのか、エレミーは何事も無かったかのようにもう一度言い直した。

「純血のサキュバスなのだー」

「えっ」

「えっ」

 どうやら大事なことだから二回繰り返したようである。

……ええと。

「僕の聞き間違いでなければ、今エレミーはヴァンパイアじゃなくて……」

「そう、私の正体はサキュバス。人のリビドーを吸収し、魔力に変換することの出来る唯一の種族であり、正真正銘夜の支配者たる最強の女王」

 僕は混乱しながらも、大きな行き違いがあったことを理解した。

 そして思い切り突っ込む。

「そういう意味での夜の支配者かよっ!?」

 実に紛らわしいことこの上ない。

「嘘はついてない」

……確かに、嘘はついてない。

「でも僕はてっきりヴァンパイアなのかと思っちゃってたよ!?」

「……? 私はヴァンパイアと名乗った覚えはない」

「まあサキュバスとも名乗って無かったけどね? でもその牙は?」

「チャームポイント。……かわいい?」

「世界一かわいい」

 ボッ! と火がついたような音と共に、エレミーは耳まで熱された鉄のように真っ赤にした。

 かわいいヤツめ。

……でもどうしよう、なんか一気に心許なくなってきたぞ。

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