月の光を浴びて今……変身
「うわっ!?」
僕は眩しさから目をつむったが、光はすぐに収束する。
そうして目の前に現れたエレミーは、その姿を大きく変貌させていた。
「――なっ!?」
薄暗い室内にあって、ぼんやりと輝くような青紫がかった髪。
コウモリのような羽。
蛇のような黒い尻尾は、挑発的にうねうねと動いていた。
長く伸びた四肢。
膨らんだ胸と尻。
艶やかなパープルに染まった爪。
獲物を惹き付けるためであろう、濡れたようなテカりを帯びた唇。
そこから覗く、大きく成長した犬歯。
頬に差した仄かな紅。
妖しい光を放つ、ライラック色の瞳。
辺りに漂うジャコウのような香りも、彼女から放たれたものだろう。
それまでは十二、三歳と幼かった容姿が、一気に十七、八歳のお姉様くらいには成長している。
僕は驚きから、こう訊ねずにはいられなかった。
「その姿……! エレミー、まさか君は本当に……」
本当に……ヴァンパイアだったのか……。
「まさか本当に、お前が伝説の亜人種だったなんて……」
鮮やかかつ、艶やかに変貌を遂げたエレミーを目の当たりにした僕は、そのあまりの美しさと神々しさから、ついひざまずいてしまい衝動に駆られる。
「ふふっ」という細やかな彼女の微笑みすら、とても尊く思えた。
エレミーは口元に自信を滲ませてから、得意気になってこう答える。
「最初に言ったろー? 今は絶滅しかけているけど、私はかつて夜を統べし種族の末裔だって」
「いやそれは確かにそうだけど……」
完全にハッタリだとばかり思っていた。
信じてやらなくてまことにごめんなさい。
「私の名はエレミュリア・メェルウェルニェル。不埒な輩ども……覚悟があるならかかって来い」
「なっ――!?」
名前が長い!
そして言いにくい!
……だからエレミーって愛称を名乗ってくれたのね、なるほど。
――って、今はそれよりも!
エレミーから強力な敵意をぶつけられ、僕の背中にナイフを押し当てていた刺客が後ろに仰け反った。
――今だッ!
この隙に階段を一気に駆け上がり、踊り場のエレミーの傍らに寄り添う。
さあエレリミェッ……エレミュレッ……エリェッ……エレミーさん、やっちゃって下さい!




