最悪の状況
状況を理解出来ていないのか、エレミーはなおも訊ねてきた。
「ナギ、なんで黙る? なんで泣いてる?」
……そうか僕は泣いているのか。
死ぬのが恐いのか、エレミーを巻き込んでしまったことが悲しいのか、もうよくわからない。
だが彼女の方はようやく状況が飲み込めてきたようだ。
「……なんでその人達ナイフ持ってるの? ……わかった、お客さんじゃない。……悪い人だ」
そうだよ。
だからせめてお前だけでもなんとか逃げてくれ。
僕はこれから、最期に思いきり暴れてやるから。
その決心が今ついたんだ。
しかしエレミーは、僕が考えうる限り最悪の決断をしてしまう。
「ナギ、今助ける」
「や、やめろエレミー!」
「やめない」
「お前だけでも逃げてくれ!」
「逃げない」
「……どうして」
「今は夜、私の時間」
「……はあ? 一体何を言ってるんだ? どうしたの? おかしくなっちゃったのか?」
「おかしくなってない」
そうはっきりと言ったエレミーは、こう続けた。
「夜は私の時間だ」
「はあ? ……まさかこんな時まで、まだ自分は夜の支配者の種族の末裔なんて冗談言うんじゃないよね……?」
「そうだけど?」
平然とした様子でそう答えたエレミー。
この時には僕も暗闇に目が慣れてきたからか、その表情が徐々にわかるようになってきていた。
いつもは眠そうなエレミーの目がシャッキリしてる!?
メガ目がシャッキリしてる!?
みるみる内にメガシャキエレミーは、その表情に自信のようなものを溢れさせる。
……おいおい、まさかまさかじゃないよな?
「やっと本気出せる」
そう言ってエレミーが不敵な笑みを浮かべたその次の瞬間――!
彼女の体から強い閃光が放たれた。




