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異世界甘味処 木の実  作者: 兼定 吉行
召喚、放逐、出逢い
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情報収集

「ってかナギって変な名前だな?」

「ま、まあこの世界の人からしたらそうかもね」

「……? それで、これからどうする?」

「これからか……。これからのことを考えると頭が痛いな……。でも考えなきゃだよね」

「そうだよ、ナギが考えてくれなきゃ私も困る」

「んー……じゃあまずはこの世界の物価が知りたいし、食材を中心に色々なお店を見て回ろうかな」

「やったー」

「やったーって、別に買って食べる訳じゃないからね? 見るだけだから」

「なんだー」

 しゅんとわかりやすく落ち込むエレミーに訊ねる。

「それで、市場とか色々お店がありそうな場所はわかる?」

 エレミーはくんくんと鼻を動かした後、「あっちー」と指差した。

 いや、犬かよ! 

 コイツ、早速夜の支配者の種族設定忘れやがって……。

 僕は呆れつつ、半信半疑ながらもエレミーの差し示した方角へと歩き始める。

 すると本当に、無数の商店が並んだ通りが現れたではないか。

……恐るべし、食に執着する犬の種族! 

 簡易的なテントの下で、バットごと果物を売っている店。

 青空の下、シートの上に野菜を並べている店。

 移動も可能な屋台で干し肉や薫製肉を打っている店。

 篭のまま魚を売っている店。

 木製台の上で、ケーキやクッキー等を売っている店等々。

 これがマルシェってやつか……。

 市場は多くの人で賑わい、活況付いていた。

 様々な店を見ながら、値札にもしっかりと目を落とす。

……なるほどね。

 どうやらあの兵士の言っていた通り、本当に金貨三枚もあれば人一人が三ヶ月は普通に食べていけるようだ。

 それにしても僕……なんでこっちの世界の字が読めるんだ!? 

 そこに気付いた時一瞬だけ驚いたが、「まあ召喚された時に翻訳魔法的なものも付与されたんだろう。言葉が通じてる訳だし」ということで納得した。

 行く店行く店で物欲しそうに商品を眺め、お腹をぐーと鳴らす煩わしい少女を無視しつつ、僕はなおも情報収集を続ける。

 わかったことは、この世界の食の水準が一、二世紀前のヨーロッパに酷似しているということ。

 だが気候や風土の影響か、米などのアジア系食材も多々見られた。

 町中に見られる木々も杉や桧といった針葉樹から、ケヤキやブナなどの広葉樹まで見られることから、四季もはっきりと分かれていそうだ。

 そしてなんと言っても重要なのは、砂糖の価格が安くは無いが、それ程高い訳でもないということ。

 精製技術はそれ程高くは無さそうだが、それでもこれは驚くべきことである。

 なぜならば十六世紀、ヨーロッパでは砂糖が金と同価値だった。

 きっとこの世界での砂糖の価値は食の水準と同様、十八世紀から九世紀くらいのものだろう。

 それに黒糖が安いこともありがたい。

 こういった売り物などからもわかる通り、この異世界では庶民の間でも甘物が広く楽しまれているようだ。

 更には液体の金とも呼ばれていた時期もあるオリーブオイルも、その他植物油の倍程度出せば手に入る価格だった。

 そこからこの地が、日本で言えば関東南部程度の気候なのだろうことがわかる。

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