不穏な気配
「おおそうだお前達、まだ軽くしか食事を取っていなかったろう? セバス、厨房からここに料理を持ってこさせろ。ディナーは多めに作らせておいたろう?」
「はっ、ただ今」
その瞬間エレミーの目が、延べ棒を見た時よりもキランと輝くのを僕は見逃さない。
金銭的価値よりも目の前の飯か……わかりやすいなぁ。
普段からは信じられない程の豪勢な晩餐を取った後、大きな自信をつけた僕らは護衛のために付けられたレフィーと共に、大きな腕の振り幅と軽やかな足取りで店兼家に帰宅したのだった。
翌日のための仕込みだけ済ませ、夕食も済んだことだし今日はもう寝ようということになり、それぞれの部屋に入る。
……だがこの後ベッドに入った僕らを、今日一番の大事件が待っていた。
ザッザッザッ……。
もう脳が睡眠に入ろうかというその時、僕の耳に足音のような音が入ってくる。
それも一人分ではなく、数人分もの足音がだ。
おかしい。
こんな夜中に客が来る訳がない。
もしかしてエリュシカがまた勅使にレフィーを遣わしたのか?
いや、だとしてもこの人数は……。
――嫌な予感。
まさか、今日の今日でそんなこと……。
僕は耳に全神経を集中させた。
すると足音はこの家を取り囲むように、回り込んでいるようだと気付く。
更には正面の玄関では無く、店のキッチンがある勝手口の方から、何やらピッキングでもしているかのようなカチャカチャという音までしてきた。
――決まりだ!
これは多分……僕を暗殺するためにやって来た、どこぞの国の刺客だ!
ハッとして起き上がる。
だとしたら僕だけじゃ無く、エレミーも危ないっ!?
まずは起こさなきゃ!




