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異世界甘味処 木の実  作者: 兼定 吉行
初戦、事件、加入
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会談当日

 会談の当日早朝。

 皇城に用意された僕専用のキッチンを見て、驚いてしまう。

「こ、これは……」

 僕が訊くよりも早く、セバスが答えた。

「はい、こちらはナギ様に腕を存分に振るって貰いたく、木の(このみ)の作業場を参考にご用意したものです。必要なものは全て揃ってございましょう?」

「は、はい! ありがとうございます!」

 セバスの言った通り、この一角はまさに木の(このみ)そのもの。

 これならいつも通りの仕事を、気負うことなく行えそうだ。

「ありがとうございます! セバスちゃん!」

「いえ、当然のことです。お気に召して頂けたようで何より。それに礼ならば、このアイディアをお出し下さった姫殿下に、ぜひナギ様の口から直接お伝え下さい」

……そうか、エリュシカが。

「……わかりました。後で伝えます」

「それでは私は諸々の仕事が残っていますゆえ、失礼致します」

「あ、はい! ありがとうございました!」

 これで舞台は整った。

 姫殿下の仰せの通り、その度肝を抜いてやろうじゃないか! 

「エレミー、お手伝い頼むよ!」

「おー」

 さあ、調理開始だ! 

 まずはいんげん豆を六時間程水に浸ける。

 その間に胡麻を擂って砂糖と混ぜ合わせたり、持参した粉末の緑茶葉と砂糖を混ぜたり、同じく持参した小豆餡と葛を合わせて固めたりと、限りのある時間を有効活用し、決して無駄にはしない。

 いんげん豆を水に着け終わったら、水を捨てて豆の皮を一つずつ剥いていく。

 それから豆の二倍程の水で煮ていくのだが、毒性のあるレクチンを抜くためにも煮始めの三回は茹で溢さなくてはならない。

 それから形が無くなりドロドロになるまで煮詰めたら、砂糖と塩を加えて更に煮詰め、適度な固さになるまで練る。

 これで白餡の完成だ。

 しかし今回はここへ更に薄力粉を混ぜて蒸し、麦芽水飴を加えて固さを調整しながら揉みこなした。

 そう、僕が作っていたのはこなしである。

 今回の和菓子には自由に形を作りやすい、こちらの方が白餡よりも適していると考えたのだ。

 出来上がったこなしを半分に分け、片方に赤い着色料を使って色を付ける。

 そして紅白のこなしを適度に混ぜ、それを平らに伸ばし、魚の形に切り出した。

 これで下準備は完了。

 後はこれらの食材を組み合わせていけば完成だ。

「……」

 僕らがこうやって茶菓子を作っている間にも、当然会談は進んでいる。

 きっとエリュシカは今頃、立派に各国の高官達に混じってガンガン自分の意見を主張してるんだろうなぁ。

 さ、僕も頑張らなきゃ! 

 高官や関係者達の数は二十人以上。

 エレミーの手を借りながら、なんとか予定時刻より前に人数分の用意が出来た。

 最後の仕上げにエリュシカからの注文通り、サプライズ感を強めるための演出として茶菓子に蓋をする。

……もしこれで、蓋を開けた時の反応が薄かったら凹むよなぁ。

 そこへ一息つく間も無く、セバスがやって来て言った。

「ナギ様、出番でございます」

「はいっ!」

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