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異世界甘味処 木の実  作者: 兼定 吉行
帝都へ、指導、好機
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サンポマスター

「……それで、エレミーは休みに何をするの?」

 僕が何気なく訊くとエレミーは「んー」とアホ面で悩んでから、なぜか疑問系でこう答えた。

「……散歩?」

「散歩!?」

 散歩とは、わざわざ休んでまですることなのだろうか。

 お年寄りじゃあるまい。

……まあ、彼女の中では重要なのだろう。

 っていうか、僕に至っては休みの日に何をしていいのか思い浮かびすらしない始末。

 だってこの世界には漫画もアニメもゲームも無いんだもの……。

 スマホにならゲームも入ってるけど、とっくに電池なんか切れている。

 スマホ太郎のようにバッテリーが切れないという訳にはいかないのだ。

……やべ、マジで休んだところで何もすることないんだが。

 本当僕ってヤツは、和菓子に関すること以外はてんでダメなんだな……。

 そう再認識させられるのだった。

 困った末、僕は藁にもすがる。

「あのー……エレミーさん?」

「なに?」

「僕も散歩にご一緒しても……?」

「いいよ」

 やったぜ。



 翌日。

 僕らは着の身着のまま、いざ散歩へと出発した。

 午前中とはいえ、真夏の日差しは強い。

 まだ少しは長い影を縫うように、エレミーを先頭に見慣れた道を歩んでいく。

 ふと、僕は気になってこんなことを訊ねた。

「あのさエレミー、今さらだけど今日の散歩の目的地ってどこなの?」

 するとエレミーは振り返りもせずにこう答える。

「足の向いた先が目的地」

 ヤダッ!? 

 なんか深イィッ!? 

 凄く素敵なことを言ってらっしゃる! 

 これは散歩のプロだからこそ出る発言。

 もはやそこを疑う余地は無い。

 散歩マスターエレミー……いや、マエストロの後を僕は弟子のよう、黙ってついていく。

 しかし、マエストロはそれを許さない。

「ナギ」

「なんでしょうマエストロ」

「黙ってないでなんか喋って、暇」

……どうやら黙って歩いているだけでは、散歩ペアはダメなようだ。

 僕はあえて、ここで他愛のないことを言った。

「今日も午前中からもう暑いねー」

「そういうこと言うと暑くなるからやめて」

……怒られました。

「石畳の敷かれた趣のあるいい道だよね」

「ゴミいっぱい落ちてる」

 また怒られました。

「く、空気がおいしいよね!?」

「この糞尿臭い空気が?」

 マエストロからジトリとした目を向けられる。

……。

 僕ってヤツは……僕ってヤツはぁ! 

 なぜ気の利いた言葉の一つも出ないんだ!? 

 歳上として恥ずかしい……。

「ナギ」

「なんでしょう」

「朝ごはん、あのお店で食べたい」

「はい喜んで!」

 その後市場や商店の立ち並んだ通りにも寄り、様々なものを買い食いし、その上しっかりと昼食も取った。

 更には決して安くはない……というかむしろバカ高いアイスクリームまで公園で買わされる。

……あれ。

 これもしかして、僕財布扱いされてるんじゃ……? 

 そうは思ったが、久し振りに食べるアイスはメチャクチャ美味しくて、値段なんてどうでもよくなった。

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