忍べ、密偵ちゃん
「どーもお初でーす! 密偵やってますレフィー・キツトローでーっす! よろしくっすー!」
いや密偵が所属を名乗っていいものなの?
ってかそんなに悪目立ちしていいのか?
……それとも逆に、あえてそんなふざけた格好をしているのか?
確かにこんな『なり』なら、誰も密偵とは思わないだろうけど……うーん。
それにしてもなんてギャルギャルしいんだ……。
この地は未来の日本な訳だし、昔の若者カルチャーの残滓……か?
でもなぜにギャル文化が残ったし……。
ギャル、強し。
……目眩がする。
などと僕が混乱している間にも、レフィーは強引に続けた。
「うちの姫殿下がナギピッピとエレピッピを呼んでこいっつーからぁ、ちょっと今から帝都まで来て貰いますぅ? 詳しくは向こうで話すらしいけどー、なんか頼みたいことがあるらしくてー。あっ、返事はしなくていいんで、どーせ強制なんでー」
彼女に従う前に、僕は訊いておかねばならないことがある。
「君が本当に勅使だという証拠は?」
これにレフィーは「めんど」と漏らしながら、胸元からクシャクシャになった書状を取り出した。
確かにそこにはエリュシカのものらしきサインと、皇家の紋章の判がついてある。
どうやら彼女は本物の密偵のようだ。
「これでわかったっしょー?」
「……まあ」
どこか納得のいかない僕とは違い、帝都=美味しいものが食べられるという思考が紐付いてしまっているエレミーは乗り気だった。
更には料理の類いをお持ち帰りする気なのだろう。
木箱の用意まで始めていた。
随分と見下げ果てた夜の支配者の種族様だこと。
「エレミー」
「んー?」
「それは置いていきなさい」
「ケチ」
「どっちが!?」
僕はふとレフィーの顔を見やる。
……この女はいけすかないけど、言う通りにするしか無いよなぁ。
とまあそんなこんな、僕らは夜の闇に紛れながら、帝都へ向かったのだった。
城に入ると謁見の間を素通りし、直接会議室に向かう。
するとそこには既にエリュシカ、セバス、チェルシーの姿があった。




