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異世界甘味処 木の実  作者: 兼定 吉行
帝都へ、指導、好機
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変化

 とりあえずは一通り今やるべきことは終えたので、この日僕とエレミーは帝都を後にし、一週間振りに店兼我が家である木の(このみ)へと帰宅する。

 数日間のつもりがそのまま城に滞在しての技術指導となり、一週間も臨時休業をしてしまった木の(このみ)

 これは……。

 嫌な予感を覚えながらも、明日こそは通常営業が出来るよう、この日は夜遅くまでエレミーと共に仕込み作業を行うのだった。

……翌朝。

 短くない間店を開けていなかったことにより客足への影響を懸念していた僕であったが、それは杞憂でしかなかったと思い知らされる。

 久し振りに営業を開始すると、客達はこぞって押し寄せてきたのだ。

「ずっと待ってたよ」

「毎日様子を見に来てたんだから」

「もうここのお菓子が無いとア蓋ヌーンティーが物足りないのよ」

 温かい声の数々。

 それにしても、一体どういうことだ? 

 誰も一週間店を休んでいたことを責めてこない。

 まるで僕の事情を知っているかのように……だ。

 不思議に思って客の一人に訊いてみると、その理由はあっさりと判明する。

 実は先日エリュシカが大仰にも立派な馬車に乗って来店した一件が周辺住民に目撃されたことにより、女帝が足を運ぶ店との噂が立っていたのだ。

 そして臨時休業も、それに伴うものだと皆薄々感付いていたのだという。

 とにもかくにも、不人気とはいえ女帝効果は絶大。

 これにより店は大盛況で、午前中には売り切れ続出。

 午後の初めには全ての商品が捌けてしまっていた。

 閉店時間よりも早くに本日の営業を終えた木の(このみ)の店内。

 そこで僕とエレミーは揃って客席の椅子に腰掛け、ぐったりとテーブルに突っ伏していた。

 ぜ、全然人手が足りない……。

 せっかく新素材を手に入れたことで、新メニューだって出せる環境にあるのに、こんなんじゃ全然手が回らないや……。

 これが嬉しい悲鳴ってやつかぁ。

 嬉しいような困ったような、でもやっぱりこの店が愛されてるっていうのは嬉しいよな。

……いや、やっぱきついな。

 この後も営業を再開させた木の(このみ)には、付近の町や帝都のみにとどまらず、イド帝国内の様々な町や地域からも和菓子の味を求めて遥々やって来る者が後を絶たない。

 そんな中でも僕は、店にはまだ出さないまでも、新たなメニューの開発を進めていた。

 それに新たなメニューを作るために必要な道具の自作も進める。

 例えば干菓子を作るために必要な木型だ。

 こういった物はこの世界には存在しないため自作するしかなく、また自分の求めるデザインを形にするためにも人には任せられない。

 無理矢理に時間を捻出してでも、今からやっておくしかないのだ。

 そして変化は、何も僕の店に限って起こっている訳ではない。

 僕とエリュシカが手を組んだことにより、帝都を中心にしてイド全体にも波及していた。

 この短期間で、雇用拡大により町からは浮浪者が激減。

 不満の大きかった下の層の者達の懐が潤ったことで、犯罪率も低下。

 これにより民からの不満の声もほぼ消失。

 更には貿易でも大きな黒字が見込めるということで皆掌をトリプルコーク1440でくるりと返し、エリュシカを賞賛、支持し始めた。

 そしてこのイドの好調振りを、他国も無視出来なくなる。

 どうやら近々、ナイフォン大陸の全ての国が高官をイドに派遣しようという動きがあると、店に来た客達の噂話から知った。

 なんか、小康状態だった世界全体が動き出した感あるな……。

 そんな風に思っていた矢先のこと。

 エリュシカからの勅使と名乗る、浅黒い肌に金髪のチャラそうなギャル風少女が閉店後に僕の元へと現れる。

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