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異世界甘味処 木の実  作者: 兼定 吉行
帝都へ、指導、好機
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生産開始!

 それから僕らは更に場所を移し、別室にて待機していた、選抜された代表者達との顔合わせを行った。

 その場で僕は彼らに大まかにでも計画を理解して貰おうと、用意しておいた図を文章と口頭をもって、ザッと葛粉、麦芽水飴の生産法と醤油を生産するまでの流れ、生葉を緑茶に加工する方法を説明。

 同時にそれらの作業に必要で、この世界には存在しない道具を特注する。

 当然これだけではまだ双方ともに不安が残るので、実際に生産開始の際には僕が指導、監督するという運びとなった。

……っていうか僕自身プロでもなんでも無いし、一から醤油も……ましてや緑茶なんて作ったこと無いんだけど、まあしょうがないという意味でも、召喚された勇者としてのハッタリ的な意味でも、しっかりと務めなきゃな! 

 冬になれば寒天作りや、和三盆作りだって待っている。

 やったね! 

 雇用機会が増えるよエリュシカちゃん! 

……とまあ、やること……いや、やりたいことは山積しているのだ。

 人々を上から動かすからには、救世の勇者としてのカリスマ値も上げておかないとね。

 そんな訳で早速泊まり込みで、まずは醤油を作るために必要な麹菌……を獲得するところから作業を開始する。

 醤油造りは一年近く先を見越した、長期計画だ。

……まあ、それよりも早く僕が元の世界に帰れる可能性もあるが、やっておいて損はないだろう。

 幸いここは未来とはいえ一応は日本なので、空気中に麹カビ、アスペルギルスオリゼーも存在しているはず。

 その入手方法は、茹でて潰して団子にした大豆をただただ放置するだけ。

 うまくいけば一ヶ月くらいで空気中の様々な菌と共に、麹菌も大豆団子に付着するだろう。

 これと同時進行で、葛粉と麦芽水飴も説明を交えながら一から作って見せた。

 難しいことはやっていないので、代表者達もすぐにその手順を憶えてくれたようだ。

 エリュシカによる選抜メンバーなだけあって、皆飲み込みが早くて助かる。

 そして僕的には一番の鬼門である緑茶の生産にも、時期的には三番茶だろう生葉を使って取り掛かった。

 特注した蒸籠を使い、蒸熱(じょうねつ)という生葉を一分程度蒸す工程を行うことで、鮮やかな緑色を保たせながら青臭みを取ったのち、風を送ることで茶葉の表面についた水分を取り除きつつ室温程度まで冷却。

 後はひたすら手揉み作業だ。

 テレビでよく観るように、上半身と両腕を伸ばし、体を左右に振りながら徐々に塊となっていく茶葉を転がすように揉み込む。

 それが済んだら茶の形を整える、こくりと呼ばれる工程に進む。

 茶葉の向きを揃えて両手で強く握りながら、左右の手を交互に屈伸。

 葉を回転させながら強く揉む。

 こうすることで僕らが日頃目にする、針のように形と長さが揃った茶葉になる……のだが、ここではかなりまちまちなサイズになってしまった。

……ま、まあまあ、緑茶を作るなんて初めてだから仕方ないよね? 

 最後に茶葉全体に熱をかけ、ゆっくりと乾燥させれば完成だ。

 早速味見のため、お茶を煎れてみる。

……若干の青臭みと、旨味の薄さ、深みの無さはあるが、なんとかお茶と言い張れる味と香りにはなっている。

 僕はよくやったよ! 

 これを粉末にすればお菓子作りにだって使えるし、大きな一歩だ! 

……ということで色々と雑さは残るが、ここではこれで一応はよしということにする。

 きっと今日共に緑茶を作った代表者たちが、作り続ける内にその技術を確かなものにしてくれるだろう。

……多分。

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