赤VS緑
「紅茶こそ至高の飲み物なのだ! そんなよくわからんものに一割も茶葉を加工するなんて断固私は反対だ!」
この通り、唯一エリュシカから反対されてしまう。
だが、諦めてたまるか!
その後も説得のため、緑虫を擂り潰したような色の苦味の強い汁……もとい緑茶の素晴らしさを、相手の年齢にまで精神レベルを落として語ってやった。
「甘いものに、苦味のある緑茶は合うんですぅー! 口の中がサッパリして最高なんですぅー!」
「紅茶だって砂糖を入れなければ苦味はあるのだー! というか、苦味なんぞ無い方がいいに決まっておろう!」
「緑茶は茶葉本来の、爽やかな自然の香りを味わえるんですぅー!」
「紅茶は豊かで芳醇で高貴な香りを味わえるのだー! はっ? 自然? 自然の香りがよいなら茶葉をそのまま食べればよいのではないか? 愚か者め!」
……くっ!
口が達者なヤツめ!?
「りょ、緑茶には出汁のようなアミノ酸の旨味があって、病みつきになるんですぅー!」
「ダシ? アミノ? はあ? 何言ってるかわからんなぁ?」
くそ、この世界の人間にその辺の旨味云々とか、そりゃわからないよな……。
よし、ここは攻め方を変えるか!
「……でも緑茶の苦味を楽しめてこその、大人だと思うんですよね。つまり姫殿下は、まだまだ苦味のよさがわからないお子様なんですね。どうりで話が通じない訳だなぁー?」
どうだ?
お子様はこういう言われ方をするとカチンと来ちゃうだろう?
「くっ……わかるもん。苦味のよさくらい私もわかるもん……」
よっし!
効いてる効いてる!
このまま畳み掛けるぞ!
「……なら、緑茶を飲んでそれが本当かどうか証明して下さいよぉ?」
「だから緑茶を製造しろと? それとこれとは話が別だ愚か者」
Fxxk!
急に冷静になりやがってぇ!?
さすがは一国の長。
安い挑発には乗らないか……。
もう、こうなったら奥の手を使うしかないな……。
「とにかくお茶じゃなきゃヤなのぉぉぉ! うぁぁぁぁん!」
最後は対子供らしく、僕は駄々をこねて泣き叫び、ドン引きしたエリュシカから緑茶製造の許可を引き出したのだった。
ふっ、これがKoolな大人のやり方だぜ!
……でもなんだろう、負けた気しかしない。
あとセバスとチェルシーの視線に、可哀想なものでも見るような色が見て取れる気が……。
この白熱したやり取りの間エレミーはと言えば、ここぞとばかりに出された紅茶とケーキを黙々と食し、舌鼓をポポポポーンと打っていた。
熱い舌戦は僕とエリュシカの間だけでなく、すぐ隣でも起こっていたのだ。
そんな彼女と一瞬、目が合う。
するとその瞳はこう訴えかけてきた。
「やっぱスポンジと生クリームの組み合わせはは美味しー」僕も「わかるぞ」と、目で返す。
……いや何しに来たんだお前。




