セバスがやってくれました
「ナギよ」
「……はい?」
「お前は平和な国からこの世界に来たと言ったな?」
「はい。……まあ、所詮平和なんて次の戦争までの準備期間でしか無いんですけどね。三つ以上の隣国が怪しい動きをしてますし……」
「この国は常に戦争状態なのだ、それよりはマシだろう?」
「……まあ」
「それで、平和な世の中はどうだった?」
「どうだと言われましても、皆好きなことを好きなようにしたり、娯楽が沢山あって、食べ物もどんどん新しく美味しいものが出てきて……」
「ふむ」
「好きな仕事についたり、夢を実現させるための努力をすることが許されてて……」
「ふむふむ」
「たとえ夢が叶わなくとも、家族を持ってそれなりに幸せにみんな生きてて、社会的な保証や福祉も充実してて……」
「充分に伝わった。……ナギよ」
「はい」
「平和とはよいものだな」
「はい!」
「私がそれを目指す価値はあるか?」
「はい!」
「今一度問う。……ナギよ、どうか私の夢を共に叶えてはくれぬだろうか?」
答えなんて最初から決まっている。
首を横に振ってこう答えるのだ。
「ごめんなさい」と。
さあ――!
そして、次に僕の口から発せられた言葉は――。
「……わかりました」
エリュシカの顔が大きく歪む。
それから動揺した様子で確認をしてきた。
「……本当によいのか? 修羅の道に足を踏み入れるも同義だぞ?」
「……はい」
「ほんとのほんとか?」
「はい」
「ほんとのほんとのほんとにほんとにか?」
「はい」
「今から嘘だと言っても通じぬぞ?」
「はい」
「後悔は無いのか?」
「……まあ、少し」
ここでセバスが、割り入って来て言う。
「姫殿下、既に言質は取りましたゆえ」
見れば彼は今の僕とエリュシカの問答の最後の方の契約のくだりを、全て克明に紙面へと書き起こしていた。
こ、コイツ、やりおる……!?
「うむ、でかしたぞセバス」
「お褒めに預かり光栄です」
抜け目の無いヤツめ……。
ここで気になって、チラリとエレミーの方を見る。
すると僕以上にやる気に満ち満ちた顔をしているではないか。
それがおかしくて、僕は危うく噴き出しそうになった。
……頼むぞ、用心棒。
これからは菓子作りも手伝って貰うから、覚悟しろよ!




