えっちな形(はぁと)
「それでナギよ、そなたはこの世界についてどれだけのことを知っている?」
「え?」
「……まさか何も知らないのか?」
「……はい」
「そうは言っても、もうこっちで一ヶ月近くは暮らしているのだ、今居るこの国……イドの名くらいは知っておろう?」
「……」
「まさか……」
「はい、知りませんでした……」
「そこからかぁ……」
チビ姫はクソデカ溜め息を吐いて頭を抱えてから、話し始めた。
「私の名はエリュシカ・クーネル・タウベル。このイド帝国の女帝にして最高権力者だ。よく姫殿下と呼ばれているが、これは昔からの愛称みたいなものだな」
木の実開店に向け頑張っていたからそれ以外のことが目に入ってこなかったこともあるが、僕はあまりにもこの異世界についてを知らな過ぎたのだと気付かされる。
自分が今居る国の名前も今初めて知った。
そして自分を身勝手にも召喚し、あまつさえ無能だと罵って帝都から追放した、このチビ姫の名前すら今初めて知ったのだ。
大人しく彼女……エリュシカの話の続きに耳を傾ける。
「我らが住むこの大陸の名はナイフォン。えっちな形をしている」
「えっちな形!?」
亀かあわびか、それが問題だ。
僕がついおうむ返しすると、チェルシーが怒鳴った。
「貴様ナニを想像している!?」
「も、モザイクが必要かなー……とか?」
「モザイク? 訳のわからぬことを言うな! 殺すぞ!」
殺意カンストしてんなコイツ。
呆れた様子でエリュシカが続ける。
「やれやれ、これは見て貰った方が早そうだな」
「えっ、見せる!?」
「セバス」
「はっ」
せ、セバスがえっちな形を見せるの!?
いやん。
セバスがバサリと手で広げた。
「ご立派!」
……地図を。
そう、地図を広げたのだ。
……なるほどね。
「へぇ、こんな形をしているのか……」
確かにナイフォン大陸はエリュシカの言う通りえっちな形をしていた。
だがいやらしさは全くない。
えっちはえっちでも、えっちじゃないえっちはせーっくす?
……正解はアルファベットのえっちだ。
つまりナイフォン大陸は、アルファベットのHを若干ふにゃりと崩したような形をしていたのである。
異世界なのにアルファベットがあるんだな……。
どういうことだ?
それにこのHを崩したような形もどこかで見たことがあるな……。
中央構造線?
フィリピン海プレート?
太平洋プレート?
とかそんな感じに見える……。




