和菓子の虜
「それにしてもまさか、ただの迷惑でしかなかった植物にこのような利用法があったなどとは……よもや思いも寄らなかった」
「あの、ご託はいいから早く召し上がられては?」
その瞬間、再度僕の首に冷たい金属の感触が当たる。
「ひぃっ!?」
「貴様の言動、目に余るぞ! 本当ならばもう三度か四度は首が跳んでいたものと思え!」
あああ女騎士様が激しくおこでいらっしゃるぅっ!?
なんなのこの殺意高い系女子!?
五分に一回は人の首斬らないと死んじゃう病気なの!?
こわい。
だがここで、チビ姫が女騎士を制止した。
「よいよいチェルシー。まともな環境で育たず、甲斐性もノミ程の知恵も、ましてや礼節も教えられぬ親の下に育ったのだろう。無理もない」
こんっのガキッ!?
好き勝手言いやがって……。
庶民舐めんな!
ってかこの女騎士、チェルシーって言うのか。
いつかべろんべろん舐め回してやる……ッ!
チビ姫がチェルシーに向かって続ける。
「それにそやつの言うことにも一理はある。これは美術品ではなく、舌で味わう菓子なのだからな」
「ハッ、失礼致しました」
「ではいただこうか」
チビ姫は黒文字を持ち、葛団子を切り分けた。
そしてそれをついに口にする。
キラリとアメジストの瞳に星のような光が、瞬くように輝いた瞬間を僕は見逃さない。
「……この歯切れ、ゼリーとはまた違って面白い! それに中の小豆で作った餡とやらの、なんと優しく上品なことか! 噂に違わぬ味だ! いいや、それ以上やも知れぬ!」
どうやら僕の味は……いや、和菓子の味は異世界の姫をも虜にしてしまう程のようだ。
一口を食べたチビ姫はその顔を真剣なものに変え、こう切り出した。
「この世界に召喚した者へ最初に伝えておくべきことを、遅くなったが話そう」
僕はギリギリチビ姫に届く程度の、女騎士にまでは聞こえぬ声でボソリと愚痴を溢す。
「誰かさんに放逐されたからね」
チビ姫は聞こえぬ振りをして続けた。
「……話すぞ。だがその前に、そこの小娘……確かエレミーと言ったか? 彼女には席を外して貰おう。これから話すのはこの国最大級の機密情報だからな」
いやお前の方がよっぽど小娘だろ!?
「わかった」とだけ言い残し、エレミーはトボトボと店の奥へと引っ込もうとする。
なんか仲間外れみたいだな……。
「待った」
僕はエレミーを呼び止め、こう説明した。
「彼女はもう僕の右腕です。よって同席を求めます」
「ナギ……」
少し考え込むような仕草をしてから、チビ姫が頷く。
「ふむ、よかろう。そういうことならば同席を許す」
……言ってみるものだな。
「ありがとうございます!」




