やなヤツ
剣を鞘に収めた女騎士が、ゴミムシを見るような目で告げる。
「ならばよい。さ、我が親愛なる姫殿下を案内したまえ」
「……こちらです」
否応なく僕がチビ姫御一行を店の中にまで案内すると、それを見たエレミーは目を丸くした。
突然こんなことになったら、そりゃそういう反応しますよね。
ってかエレミーさん、そもそもあんた僕のボディーガードとしてついてくることになったんですよね?
最強の夜の種族だかとか、東口の夜の蝶だかとかなんとか言ってましたよね?
今まさにピンチなんですが!?
助けてちょんまげーっ!?
だがエレミーは「え、偉い人だ……」と、早々に魂から屈している。
仕方無いね。
権力恐いもんね。
「お好きな席へどうぞ」
僕は着席を促し、エレミーに紅茶を運ばせた。
しかしチビ姫は……。
「セバス」
「はっ」
なんとセバスに自前の茶を淹れさせたのだ!
どうりでセバスが何か荷物を持ってると思ってたよ!
ってかやっぱセバスはセバスなんだね!
それにしてもこっちの出した茶は飲まずに、持参したものを飲むなんて失礼なヤツ!
ヤなヤツ!
ヤなヤツ!
ヤなヤ……危ない、三回唱えると恋の呪文になってしまうところだった!
「おいナギよ、適当に菓子を見繕ってくれ」
「……ただ今」
季節感もあるし、一番涼しげな見た目のアレでいいかな。
僕は葛団子をエレミーに運ばせる。
すると氷のように冷たい表情を崩さなかったチビ姫が、ほんの少しだが頬を綻ばせた。
「ほう、伝え聞いていた通りだな。なんとも面妖で……美しい菓子だ。それに竹の器もいい。間違いなくこの世界の人間には無かった発想と感性だ」
彼女は興味深げに葛団子と器をまじまじと眺め、こちらに確認をしてくる。
「ゼリーとは違うようだ。これが報告にも上がっていたあの害なす植物、葛から作ったという菓子で相違無いな?」
報告どうこうは知らないが、その通りなので「はい」と答えた。
「ふむ、竹を伝う朝露の雫のように美しい菓子だ」
「きょ、恐悦至極……」
「バカが無理に難しい言葉を使わずともよい」
クソがぁっ!?
「……はい」




