くっ殺助
やはり昨日手紙を寄越したのは、エレミーが紋章を見て気付いた通り皇族で間違いないようだ。
それもどうやら相手は……。
「頭が高いと言っておろう。つむじを見せよ。お辞儀をするのだ」
十中八九、このクソチビ姫だろう。
「くっ……」
ヴォルデモートみたいなこと言いやがって!
苛立ちを覚えながらも、チビ姫の隣に控えるセバス的なおじ様とオークに捕えられたら「くっ、殺せ」とか即座に言い出しそうな女騎士が恐いから言うことを聞いておくしかない。
僕がチビにも見やすいように腰を折ってつむじを見せてやると、次にチビ姫はこんなことを言い出した。
「手紙にはすぐに皇城へ来いとしたためたはずだが? 私の言うすぐにの意味がわかるか? 即日だっ! 一体貴様は昨日一日何をしていたのだ!?」
やはり手紙の主はコイツで確定か……。
僕は質問に答えてやる。
「本日の営業の仕込みと、旅の準備ですが」
「手紙を無視する気満々だと……!?」
どうやらチビ姫はお怒りのようだ。
ざまあ。
「……まあよい。さ、この私がわざわざ出向いたのだ。店に案内せい。ああ、だがその前に」
そう言ってチビ姫は、ぎょ者の男にこんな指示を出した。
「人払いを頼むぞ」
「かしこまりました」
「なっ!?」
なんだよ人払いって!?
それじゃうちの味を楽しみにしているお客さん達が店に入れなくなるじゃないか!
「か、勝手なことをしないで下さい! ここは僕の店です! そんなことは絶対にさせま――」
そう僕が言い返した瞬間、女騎士は腰からぶら下げていた剣を抜き、その白刃を僕の首へと突き付ける。
速過ぎて、何も見えなかった……。
人殺しすらいとわないという強い意思の籠った瞳を真っ直ぐこちらに向け、女騎士は言った。
「姫殿下の仰ったことに何か異論でも?」
絶対などというものはこの世には存在しない。
「い、いいえぇ~?」
僕は信念を曲げ、あっさりと脅しに屈した。
……くっ、殺せ!?




