浪漫譚
――っと、取り乱してしまった。
……そりゃそうだよね、着物の着付けの仕方なんてエレミーは知るよしも無いよね!?
僕がバカだったよ!
すぐにエレミーの背後に回り込んで頭の帯を外して程き、着物の前を閉じて合わせた上から巻いてやる。
ついでに髪を纏め上げて縛り、お手製の竹から作った櫛で留めてやった。
仕上げに手を動かしやすいよう、たすきで縛ってやる。
するとエレミーがじっと、自身の肩越しにこちらを見ていることに気付いた。
「……その目は何かな?」
「いや、ナギはそういう縛るプレイがお好みなのかと思ってなー」
「違うから!? 動きやすくするために縛っただけだから! 袖が邪魔でしょ!?」
「ふーん」
「だ、だからこれからは自分でも、ちゃんと出来るように結び方憶えてよ!?」
「いいの? ナギの楽しみが減っちゃうけど」
「だから僕にそういう趣味は無いの!」
最後にフリフリレースのエプロンを着せれば、大正ロマン風ロリロリ和洋折衷中メイドの完成だ。
「どう? 似合う?」
再びそう訊ねてきたエレミーの問いに答える代わりに、僕は持っていた電池切れ寸前のスマホで彼女の姿を撮った。
パシャリ!
「……今光った。何それ、魔法石? 光魔法? 魔法の石板? モノリス?」
「違うよ。いいからこれを見てごらん」
そう言って今撮ったばかりの写真を見せてやる。
するとエレミーは甘いものを食べている時にしか見せないような表情で驚き、ほんのりと頬を朱に染めた。
まともな格好をした自分の可愛さに見惚れているのだろう。
……と、思ったがそれは違ったようだ。
彼女は言う。
「この魔法の石板は何? 何で私の姿が写ってるの? 凄い」
「そっち!?」
だが、やはりスマホに驚いているだけではなさそうだ。
エレミーの口元は弛み、微かに口角が上がっていた。
スマホの方にリアクションしたのも、きっと照れ隠しなんだろう。
……可愛いところあるじゃないか。
「さ、明日にはお店を始めるからね! 今日はそのための材料の仕込みを沢山するから忙しくなるよ! 準備はいいかい?」
「おー。……あ、お店の名前はどうするの?」
「それは――」




