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異世界甘味処 木の実  作者: 兼定 吉行
物件探し、準備、開店
23/87

浪漫譚

――っと、取り乱してしまった。

……そりゃそうだよね、着物の着付けの仕方なんてエレミーは知るよしも無いよね!? 

 僕がバカだったよ! 

 すぐにエレミーの背後に回り込んで頭の帯を外して程き、着物の前を閉じて合わせた上から巻いてやる。

 ついでに髪を纏め上げて縛り、お手製の竹から作った櫛で留めてやった。

 仕上げに手を動かしやすいよう、たすきで縛ってやる。

 するとエレミーがじっと、自身の肩越しにこちらを見ていることに気付いた。

「……その目は何かな?」

「いや、ナギはそういう縛るプレイがお好みなのかと思ってなー」

「違うから!? 動きやすくするために縛っただけだから! 袖が邪魔でしょ!?」

「ふーん」

「だ、だからこれからは自分でも、ちゃんと出来るように結び方憶えてよ!?」

「いいの? ナギの楽しみが減っちゃうけど」

「だから僕にそういう趣味は無いの!」

 最後にフリフリレースのエプロンを着せれば、大正ロマン風ロリロリ和洋折衷中メイドの完成だ。

「どう? 似合う?」

 再びそう訊ねてきたエレミーの問いに答える代わりに、僕は持っていた電池切れ寸前のスマホで彼女の姿を撮った。


 パシャリ! 


「……今光った。何それ、魔法石? 光魔法? 魔法の石板? モノリス?」

「違うよ。いいからこれを見てごらん」

 そう言って今撮ったばかりの写真を見せてやる。

 するとエレミーは甘いものを食べている時にしか見せないような表情で驚き、ほんのりと頬を朱に染めた。

 まともな格好をした自分の可愛さに見惚れているのだろう。

……と、思ったがそれは違ったようだ。

 彼女は言う。

「この魔法の石板は何? 何で私の姿が写ってるの? 凄い」

「そっち!?」

 だが、やはりスマホに驚いているだけではなさそうだ。

 エレミーの口元は弛み、微かに口角が上がっていた。

 スマホの方にリアクションしたのも、きっと照れ隠しなんだろう。

……可愛いところあるじゃないか。

「さ、明日にはお店を始めるからね! 今日はそのための材料の仕込みを沢山するから忙しくなるよ! 準備はいいかい?」

「おー。……あ、お店の名前はどうするの?」

「それは――」

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