開店準備
これでカステラもメニューに加えることが出来る。
全ての材料で作ることの出来るものとも合わせれば、全部で五品。
商品に偏りこそあれど、店としてやっていくのにとりあえずは十分な品数だ。
それにこの異世界の季節は丁度元居た世界と同じく夏であり、葛を扱った涼やかな和菓子がとても合っている。
あとすべきことは……。
ナギとエレミーは邸の一部を店舗にするため、家具の配置替えや大掃除を始めた。
そこへ街で買った商品棚を置いたり、飾り付けをしたりと開店準備を進めていく。
しかしこれだけではまだ足りない。
商品を飾り付けるための噐が無いのだ。
もちろんそんなものは買えば簡単に済む話なのだが、情緒を楽しみ、目で見て楽しむことに重きを置く和菓子において、そこは妥協出来ない。
そのため、この際それらを自作してしまおうと考える。
幸い僕は和菓子作りを趣味にしていたためか手先も器用な方だし、そもそも図画工作は得意分野だ。
干菓子の木型を自作したことだって一応はある。
それにありがたいことに日本と似たような風土のお陰でこの付近にも竹薮や笹の木、それに少し山を登れば熊笹などが自生しており、難無く材料が手に入った。
それらを使い黒文字や串、間仕切りの箱や竹を割って作った噐や、笹の葉の包みを制作。
掛かった経費は彫刻刀や鉈など、使用した道具代のみ。
大事な軍資金の節約も出来た。
これでやっと開店出来るぞ!
作業を終えた僕へと、エレミーが話し掛けてくる。
「ナギは凄いな。何でも出来るな」
「何でもは無理だよ。こんな何の役にも立たない趣味の技術くらいさ」
「でもこれが売り物になるんでしょ? 役に立たない技術じゃないよ?」
「……そっか。そうだね、ありがとう」
「うん」
「さ、これで一応の開店準備完了だ! 後は……」
「……?」
僕は紐で作ったメジャーでエレミーの体を採寸し、それを元に型紙を起こした。
そしてすぐに針仕事に取り掛かり、一晩で作業を完成させる。
……後はこれをエレミーに着て貰うだけだ。




