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異世界甘味処 木の実  作者: 兼定 吉行
物件探し、準備、開店
19/87

決めるな

「決めた」

 突如エレミーはフォークを掲げ、そう宣言した。

 恐る恐る訊ねる。

「……何を?」

「今度街の外でスライム見付けたら、食べてみる」

「やめなさい」

「もしかしたら美味しいかも知れないのに?」

 まだスライムを見たことはないが、何らかの細菌が繁殖し、ゼリー状になっている可能性だってあるのだ。

 雪にシロップを掛けて食べるどころの話じゃない。

 だからこう言ってやる。

「もしかしたら食べたら死ぬかも知れないのに?」

「……確かに」と、一応は納得してくれたのだった。

「それにしてもあの迷惑植物、こんなに美味しいならもっと生えてきて欲しいね、ナギ」

「そうだねぇ。でももう全部根っこを取っちゃったから、また新しく探さないとだ」

「そっかぁ。でも色んな所にあるから大丈夫だね」

「うん、そうだね」

 しかし、取り損なった地中に残った根から再び葛が増殖してしまうことを、この時の僕はまだ知る由も無い……。

 そしてそれに気付いた時には、もはや色々と手遅れであった。

 僕は頭を抱えて絶望する。

「またいっぱい生えてきてるっ!?」

「葛餅いっぱい作れるな?」

「そんなに葛餅作らないから! やっぱクズだわこの特定外来種め!」

 その後何日も掛けて葛の根の除去には成功するも、邸の壁面に蔓延る蔦の除去まではついに敵わないのだった。

 あと葛は色んな所に山程生えているので、これからも素材に困ることは無さそうである。

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