決めるな
「決めた」
突如エレミーはフォークを掲げ、そう宣言した。
恐る恐る訊ねる。
「……何を?」
「今度街の外でスライム見付けたら、食べてみる」
「やめなさい」
「もしかしたら美味しいかも知れないのに?」
まだスライムを見たことはないが、何らかの細菌が繁殖し、ゼリー状になっている可能性だってあるのだ。
雪にシロップを掛けて食べるどころの話じゃない。
だからこう言ってやる。
「もしかしたら食べたら死ぬかも知れないのに?」
「……確かに」と、一応は納得してくれたのだった。
「それにしてもあの迷惑植物、こんなに美味しいならもっと生えてきて欲しいね、ナギ」
「そうだねぇ。でももう全部根っこを取っちゃったから、また新しく探さないとだ」
「そっかぁ。でも色んな所にあるから大丈夫だね」
「うん、そうだね」
しかし、取り損なった地中に残った根から再び葛が増殖してしまうことを、この時の僕はまだ知る由も無い……。
そしてそれに気付いた時には、もはや色々と手遅れであった。
僕は頭を抱えて絶望する。
「またいっぱい生えてきてるっ!?」
「葛餅いっぱい作れるな?」
「そんなに葛餅作らないから! やっぱクズだわこの特定外来種め!」
その後何日も掛けて葛の根の除去には成功するも、邸の壁面に蔓延る蔦の除去まではついに敵わないのだった。
あと葛は色んな所に山程生えているので、これからも素材に困ることは無さそうである。




