ドライアドの棲み処
宿のご主人に紹介された不動産屋の元へと向かった僕とエレミー。
「超オススメ物件だぜぃ~」と言われ、案内されたのは町外れの庭付き一軒家。
予想外に大きな邸だった。
だがもう一つ予想外なことが……。
なんと邸の壁も屋根も庭も、蔦だらけで一面グリーンだったのだ。
なんてジャンゴォ……。
まるで緑の腐海!
王蟲出てきそう……。
僕が顔を引きつらせていると、不動産屋が恐る恐る訊ねてくる。
「手入れはちょっと大変だけども……どぉだい?」
「……ちょっと?」
「やっぱり、ダメですかい……? お値段の方も異常な値引きをさせて貰いますけど? 破格の家賃ですけどぉ~?」
ダメだ!
そう言おうとも思ったが、僕はあることに気付いた。
この一面の植物……葛だ!
聞いたことがあるぞ!
アメリカ等の海外で爆発的に葛が増えて、特定外来種として問題になっているって!
きっとこの葛邸も、そういうことなのだろう。
そして葛と言えば葛餅を始め、和菓子の材料にもなる。
よって僕が下した決断は――!
不動産屋が半ば諦め気味に、最終確認をしてくる。
「こちらの物件、買いますか? 買いませんか?」
「買ーいーまー……」
「買いま……?」
「――すッ!」
この瞬間不動産屋とエレミーの、ギョッとした目がこちらを向いた。
「えええ!? いいんですかい!?」
「そうだぞナギ。こんなドライアドの棲み処みたいなところでいいのかー? 一日で肌が緑になりそー」
僕は二人に言ってやる。
「だってこの植物、食べてしまっても構わないんでしょう?」
「あ……はい……」
「ナギ……」
思っていた以上にドン引きした目を、二人から向けられるのだった。




