孤軍奮闘至上主義
諸君!!まぁ周りに私以外誰もいないのだが頑なに諸君と呼ばせて頂こう。突然だが諸君らには友はいるか?友でなくとも、同じ志を持つ者やライバル、果ては顔見知りや友の友…。とにかくそれらの人間は周りにいるだろうか?私には誰一人いない!!!!!これは素晴らしき誉である。故にこれほどまでに声を張り上げたのだ。お陰で隣の壁から今以上の大声で「うるせぇ!何時だと思ってやがる!」と怒鳴られてしまった。私が寝床として利用して幾星霜の月日が流れるこの場所はどれほど気を遣って表現しても幽霊屋敷の四字熟語を逃れられない程のおんぼろぶりであり外的干渉なくとも今にも跡形も無く自然崩壊してしまいそうな退廃的木造建築アパートメントなので今の大声の応酬にミシミシと不穏な立てた。罵倒された挙げ句久しぶりに成立した会話を他人としてしまった事に対する時間の無意味な浪費に少々の苛立ちを感じたがそれはほんの些末な事だ。閑話休題、本筋に戻ろう。前述の通り私には友と呼べる者も顔見知りと呼べる者も誰一人としていない。当然恋人と呼べる人もだ。今諸君らは私にさしずめ憐れみの表情でも浮かべているのだろう。はたまた蔑みの視線かな?夕立後の水溜りよりも浅はかな諸君らの行動など私には手に取るようにわかる。なので言わせて貰う。その行為は大いなるお門違いである!!!!私は自ら進んで孤独の道を選んだのだ!「うるせぇっつってんだろ!!クソガキ!!」…さて今二度目の警告が隣から入った。隣の者は大体3度目でこちらに直接乗り込んでくるので二度目までなら大丈夫であろう。仏の顔も3度まで。隣人の顔も3度までだ。さて再度話を戻そう。私のような絶対的才覚の持ち主ならばその気になれば友達百人数千人、恋人恋人又恋人…更には言葉の通じぬ異国の者にも無条件で慕われ、人類皆お友達計画も異性皆恋人協定も容易く可能である。しかしそんな無駄極まりない事を私は頑として実行しない。他人は所詮どこまでいっても他人の域を出ない。この世界は自身さえ存在しめいればそれで充分である。そこに第三者の介入など不要だ。それに私のような偉大な人間には外界は窮屈過ぎる。考えても見て欲しい、現実世界はやれる事にも限度があり手間もかかりあまつさえそれが上手く行くとも限らないというなんとも甲斐のない結末が待っている事もしばしばある。しかし内側の世界すなわち心の中はどうか?そこには手間も無駄も他人も存在しない。存在は自分自身の自我のみであり何一つ邪魔がない桃源郷が広がっているのだ。外の世界はあまりにも窮屈過ぎる、内側にこそ無限の可能性が広がっているのだ。私は日々その内側の世界に赴き一日の殆どをそこで過ごし精神の統一を図っている。これほどまでに素晴らしい充実した一日もそうそうあるまい。一年前まだ阿呆だった私は大学のレポートに精を出しバイトに労力を注ぎ他人との関係を作ろうとありもしない愛想を振りまいては相手にされない日々を送っていた。しかしある時気がついたのだ。"何故世界に私が合わせる?世界は矮小過ぎるが故私という大いなる存在を受け止める技量がないのだ。ならばそんな世界にいる必要はない。自分を受け止める事が出来るのは自分だけ、つまり自分で世界を作りそこに都を構えればいいのだ!"そうして世界の理にただ一人気づいた私は内側の世界に移った。この事実に辿りつくまでに随分紆余曲折を経てしまった。もっと早く気がついていればと後悔の念も多少はあるが、あの日々が無ければそもそも心理に気づく事が出来なかったと考えるとそんな日々にも感謝が湧いてくる。この世界は本当に素晴らしい、世界は私を中心にして回り求める物は全て手に入る、そんな夢のような世界をようやく手に入れたのだ。私はこの内側の世界唯一の創造神として君臨しいつの日か外の世界で暮らす愚かで純粋な諸君らにもこの世界の素晴らしさを理解してもらい、外の世界を内側の世界の植民地として迎え入れる所存である。そのために私は今日も今日とて内側の世界の拡大に精を出す。いつの日か、私が迷える諸君らを導く存在として君臨する日を心待ちにしていてくれたまえ。今日のところは疲れてしまったので寝るとする。また会おう!!!
昔PCに趣味で書いてた作品に少し手を加えたものです。森見登美彦大好きボーイな私は彼の文体を真似しておりこの作品は特に影響を色濃く受けた作品として記憶に残っていたので投稿しました。森見登美彦の足元にも及びませんがよければ"無料サイトだし別にいっか"ってスタンスです。良ければ読んでみて下さい。




