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第1話 18年来の付き合いの幼馴染に卒業旅行に誘われた件

「なあ、悠一(ゆういち)。ウチらもこの春から社会人になるわけやん」


 幼馴染である、佐藤沙耶(さとうさや)からの電話は唐突に始まった。

 今年大学を卒業する4年生。大阪市内在住。

 面倒見のいい性格や、ノリの良さ、人懐っこさなどの人間的な美点。

 それに加えて、引き締まった身体に出るところは出るプロポーション。

 男友達のようでいて、女性としての魅力も兼ね備えたいい女だ。

 彼女は、この春から看護師として市内の病院で働く。


 俺は、生島悠一(いくしまゆういち)

 同じく、今年大学を卒業する4年生。東京都在住。

 やや運動は苦手だが、数学やプログラミングが得意。

 この春からは、ソフトウェア開発の仕事をすることになっている。


「まあ、そやね。あと2ヶ月もしたら、社会人かと思うとちょい憂鬱やな」


 大学生活は本当に楽しかった。気の合う仲間と夜通しワイワイ騒いだり。

 徹夜麻雀をしたり。徹夜で議論をしたり。


「でやな。仲間集めて卒業旅行に行かへん?」

「おお、ええな。卒業旅行。やろう、やろう」


 社会人になれば、沙耶たちと会う機会も減るだろう。だから、賛成だ。


「面子はどうするん?特に、仲ええ奴集めた方がええやろ?」


 出来れば、距離感の近い奴同士で行きたい。


「それなんやけどな。和樹(かずき)由美(ゆみ)でどうや?」


 電話口の向こうから聞こえてくる声はどこか弾んでいた。


「見えてきたで。和樹と由美をこの機会にくっつけたろいうわけやな」

「……あ、そ、そうそう。そういうことや」


 少し違和感があったけど、まあいいか。


 奥島和樹(おくしまかずき)。大学4年生で、小学校の頃からの付き合い。

 180cm近い長身で、プロ野球選手を目指して頑張っているスポーツマンだ。

 爽やかな笑顔に引き締まった体格、情に厚い性格もあって、昔から人気があった。

 

 双葉由美(ふたばゆみ)。大学4年生で、小学校の頃からの付き合い。

 身長は女子にしては平均的な、155cm。ほどほどに胸があって、

 痩せ過ぎてもいないし、太っても居ない。

 控えめで清楚なところもあって、昔から人気があった。


 この二人。実はお互いに片想いをしているという両片想い関係。


「よっし。そういうことなら、早速、計画練ろうぜ!」

「あ、ああ。悠一もえらい乗り気やね」

「ん?あの二人、ずっと焦れったい言うてたのは沙耶も同じやろ」

「そ、それもそうやね。じゃあ、計画なんやけど……」


 京都への卒業旅行のプランを練り始める俺たち。


「まずやな。和樹と由美をうまいこと二人きりにするのが重要やろな」


 二人をくっつけるのなら、その場を用意するべきだ。


「それやったら、電車の座席は、和樹と由美が隣同士にするのがええやろな」


 沙耶からの提案。


「賛成。俺と沙耶が隣同士っちゅうことでええんか?」

「そ、そやね。四人席やし、別のとこ座ったらわざとらしいし」


 ふむふむ。確かに理に叶っている。


「京都ちゅうてたけど、場所は決めとるん?」

鞍馬(くらま)の旅館がええかと思っとるよ。リンク送るな」


 と言って、候補地の旅館のページを送ってきた。


「リーズナブルな旅館っちゅう感じで、予算的にも丁度良さそうやな」


 候補地の旅館は、『くらま旅館 ふじみ』というもの。

 4階建てで、部屋からは川が見られるしで、絶好のロケーションだ。


「なら、場所はこの旅館で決まりな!」

「おう。やけに押しが強いな」


 元々、そういうところはあったけど、特に気合が入ってる。


「気づいたんやけど。部屋割どうするんや?」


 二人をくっつけるんだから、部屋割にも気を遣う必要がありそうだが。


「そ、それは。やっぱり、二人きりに、がええやろ」

「沙耶らしくもないな。考えてみろや」

「ちゅうと?」

「あの二人やって、ぽつんと二人きりの部屋とか息詰まるやろ」

「やったら、悠一はどうすんのがええと思うん?」

「四人で同じ部屋で寝ればええやろ。男女は多少距離置く感じで」

「和樹と由美ちゃん二人きりにするのは、どうするんよ?」


 ああ、そこは考えてなかった。


「どうしたもんかな」

「そ、それなんやけど。ウチらが二人きりになるのはどうや?」

「なるほど!逆転の発想やな。そしたら、あいつらも二人きりや」


 計画を詰めていくのが楽しい。

 どうしたら、あの二人をうまいことくっつけられるか。

 それは、この半年程、沙耶と考えてきたことだった。


「よし!早速、和樹や由美ちゃんに連絡とっとくから」

「俺は計画の詳細練っとくわ。旅行計画の大枠は頼んだ」

「当然や。ところで、やな……」

「ん?」


 珍しく、もごもごとした声。


「ああ、別にええわ。当日でも話せることやし」


 挙動不審だ。

 でも、当日に話せるというのなら、無理に聞き出す必要はないか。


「とにかく、京都旅行。楽しみになってきたわ。ありがとな、沙耶」

「別にウチがしてくてやってるんやし、お礼は要らへんよ」


 こうして、俺達の、一泊二日の卒業旅行が始まったのだった。

さてさて、今回は「卒業旅行」という限られた時間での恋の駆け引きの物語となります。

どうぞ、お楽しみください。

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