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2週目:萌えて来ちゃったマゾゲーマー

 《デイライフが発動しました。勇者歴100年7月1日12時30分、『爆発音と探索中の航』をロードします。》


 ドゴン! 立ちながら目覚めたら、開幕遠くから爆音が響いた。

「ここは、……しまったもっと速くセーブしておけばよかった。あーでもこれ以上過去に戻れないんだっけ? ちくしょう!」

 異世界に飛ばされて開幕最初にセーブをしてなかったおかげで、小熊のくぎゅうを探して迷走した後にセーブをしてしまった。

 したがって、遠くで戦闘が開幕するのは避けられない未来となってしまった。

「あと5分後に俺はここで大怪我をする! 兎に角退避だ! 爆心地から離れろオレ!」

 あと5分で半径25メートルがあの4人の戦闘で吹き飛ぶ、まずは身の保全だ! それからじゃないとどうしても打開策にありつけない!

 そうして25メートルの道を走り終わった後……。

 ドゴン! と爆心地に風の精霊センクウのクレーターが出来上がった。未来予知には成功したものの、だからなんだ! とあんまり航は嬉しくなかった。

「問題はこっからだ! この後おれは風と火の同時攻撃で【焼け死にかけた】って事になってる!」

 どうすればいいのか考えても考えても、その答えは出てこず。ソレが25メートル圏内を埋め尽くした。灼熱の業火が最果ての軍勢を包んでゆく。

「ここから先は何も知らない、観てない。どうなる……?」

 と、その時。


「5メートル圏内を僕の領域にセット。魔具発動『均一したあり方』」

 キイン! と何かが変わった。

 そして――。

 

 無傷。


 なんで? どうして?

 いつ・どこで・だれが・なにを・なぜ・どのように??????

 5W1Hが完全に欠けていた、神妹サキは教えてくれたのに。何にも教えてくれない。

「ちくしょう、なんだこの人生ハードモードは!? 異世界に再度飛ばされたらヒント何も無しかよ! おまけに頼りの神様は死にかけた後に出て来る始末! 畜生! このままじゃ死ぬ! また死ぬ! もう一度死ぬ! 死にかける! ギリギリ終わる!? ふざけんな! まだ何にもやってないんだよ!」

 この世界の事とか。綺麗なのか汚いのか、救いようが無いのかどうしようもないのか。どうにもわからないまま終わるわけにはいかない! なら!

「逃げたくないが! 逃げる! 逃げて王道RPGのように村人に話を聞いて! それから何とかするんだ! 何とかして物語の主人公のように劇的ななんやかんやをやってハッピーエンドを……」

 その時、黒い何かが航の顔を通過した。

「『反転世界』、……おい一般人。なんか私達をそこらの〈ボス〉や〈中ボス〉か何かと勘違いしてるようだから。ゲーム風に言ってやるよ」

 黒い少女は無表情に睨みつけて来た、標的が間違いなく航になっていた。

「お前は……確か、『最果ての軍勢』とか言ってた……」

「私達は【EXボス達だ】、まずその認識を間違えるなよ? 今、何をしたと思う? 人間」

「な、……何だ? 何をした?」

 手足が震える航。

「あぁ、これは今魔法っぽいものを発動したから解った事なんだが。確かに私達は今はあいつら神様達の駒なんだろうが……」

「おい、……まて。何を言っている? 俺は何もまだ言ってない、言ってないぞ。エスパーか何かか?」

「違う。そんなチャチなもんじゃ断じてねーぞ【神妹サキ】」

 もはや駒の航の事なんて眼中になかった。

「何をした? どうなってる!? 説明しろ!?」

 そうしていると、センクウとヨスズは縄みたいなもので武に捕まっていた。

「……え?」

「はあ、仕方ない。次の勝負のために教えてやろう。この『反転世界』で世界線航の反物質……、反対の存在を作ったのさ。そこから綺麗に逆算すれば……。お前の置かれてる状況はお前に教わったってだけのことさ」

 意味が……。

「意味が解らねえ……」

「簡単に言えば、お前の知ってる知識は【今知った】って事だよ。解りにくくてすまないね。何せ元が難しい能力なんだよ。射程範囲はその実無いんだが……、この世界観だとこの街一つ分って所だろうな。そろそろ【リセットしたほうがいいぞ?】でなきゃお前は本当に死んじまう」

「だから意味が解らねえって言ってるんだよ!」

「しかたねぇ、ゆっくり殺してやるから。【死にぎわを間違えるなよ?】。『反転世界はんてんせかい』、この街の全ての反物質を作り出し……」

 え……?


「ただ、街を落下させるだけの簡単なお仕事です」


 そして、

 そして航は、

 落下してくる電脳都市ライデンそのものを前に、

 押しつぶされ……。

「で! デイライフ!!」


《デイライフが発動しました。10分前、『爆発音と探索中の航』までロードします。》


 意識と意識の狭間で、世界線航は次の世界への決意を思い描く。


(この時俺はようやく、今さら? 思い知った。気づき始めた……。)

(あいつら、あの神様達……。いきなりゲーム初心者に対して。イージーモードからノーマルモードふっ飛ばして、ハードモードにしやがった!!)

(……、だが。燃えて来たぜ! 俺はちょっと変態選抜代表選手みたいな立ち位置だからよ……! ちょっとしたマゾゲーの方が萌えて来ちゃうんだぜ!)

(あぁ、そうか。【そういうゲームか】……なら上等だぜ! あの2人ぶっ倒すの決定!)

(無理、無茶、無謀? いいねいいねいいね。いいねボタンとリツイートボタンを両方押しちゃうよ!)

(んー好き! って同時押ししちゃうよ! ヒャッハー! 脳から良い感じの快楽汁が出て来ちゃうよ! 気持ちよくなってきちゃうぜ!)

(あーこの世界……スキ!!!!)


 世界線航は、この世界観に萌え始めてしまった。


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