プロローグ終了:そして幕は下りる。
異世界:レストランのなか。
男1人、女3人の会食が始まった。
神姉様ヒメが、チュートリアルを終了したので盤上へ姿を現す。それこそ雲が実態を持つかのようにスルリと現物へと成り代わった。
「やっはろーなのじゃー! こんな感じでワシが敵役やるのでよろしくなのじゃ~」
それに対して世界線航はちょっと怒る。
「てめーか、小熊っ子をこんなにしたのは! ちゃんと謝れ」
「おぉ~ん? わしは清く正しく悪事を働いただけなのになんて言われようじゃ。今回に限っては優しく優し~くイジメてやったのにつれないな~」
「な、お前。デイライフで巻き戻す前は銃殺したじゃねーか! あれの何処が優しくなんだよ!」
それに対してゲームマスターは無慈悲に言う。
「逃げたから、邪魔になった駒を排除しただけじゃよ。退場じゃ退場、でなきゃ変な尾ひれがついて修正が大変じゃからな。むしろ放置しないだけ良い処置なんじゃぞ? 毒にも薬にもならない放置が一番の悪じゃ」
「平穏な幸せの何処が悪なんだよ!」
神妹様 サキは航をなだめる。
「まあまあ、だから言ったでしょ。私達プレイヤーにとっては駒遊びでも、あなた達盤上の駒は生き死にかかってる立派な命なのは解ってるから。だから言ったでしょ、次元が違うって」
「次元が違う……。二次元と三次元ぐらい次元が違うってことか」
「そう! その通り!」
「じゃあこいつをどうやってぶっ飛ばせば良いんだよ! 駒の俺に出来る方法は! 勝利条件は!」
姉妹2人そろって顔を見合わせる。サキが言う。
「お姉ちゃんも盤上には姿を現すつもりだから。二次元のお姉ちゃんをぶっ飛ばして、三次元のお姉ちゃんに『負けました』って言わせたら私達の勝ちだね」
「逆もまたしかりじゃ、解かったか?」
「なるほど、つまり俺は今ここに居る。二次元のお前をぶっ飛ばせばいいわけだな!」
「まてまて、チュートリアルだぞ? まだお前に教えるためにやっただけなのに。感謝こそされ謝罪するつもりは無いぞい」
航に教えるためにやった。それが彼女の歪な動機だった。
「む、……じゃあしょうがないか」
再び椅子に座る。到底、普通の人間の理解を越えてる範囲の中に居ることだけは解った航。
サキが航をなだめる。説得する。
「私達にとってこれはゲームだから、ゲームならゲームで勝ちましょう。ね?」
「お、おう」
その等の本人、小熊ちゃんはモグモグとご飯を食べていた。お腹がすいていたようで、ここぞとばかりに食いだめをする様子がうかがえる。
「で、俺はいつ現実世界に帰してくれるんだ?」
「ん? おお、そうだった。じゃあパッと帰ってくれ。すまんな、私達のゲームに巻きもませてしまって」
言って、指をパチンと鳴らしたらそこは現実世界だった。
――ここでのゲームはここでお開きだ、またどこかのゲーム盤で会おう。世界線航君――
――君ならどこかの世界線ではついてきそうだし、まあ気長に種が芽吹くのを待つよ。じゃあね――
それが、最後の言葉だった。
これから、壮大な物語でも始まるのかと思ったが。どうやら飽きたらしい。
子供が遊んだおもちゃを片付けないように、今回も片付けるのを嫌がったが。
今回はちゃんと片付けられた。
それだけだ、それだけなのだ。
こうして、超越者達の遊びを垣間見た世界線航は。元居た日常の世界へ帰って行った。
「ったく、好き勝手引っ掻き回しやがって……」
でもそこには一抹の楽しさと寂しさがあった。
「ま、こういう日もあるか……」
こういう日もあるんだよ。
なあ、親友――。
「くぎゅ?」
おわり。