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くぎゅう?

 異世界:初心者のための街、電脳都市ライデン。


《デイライフが発動しました。20分前、VS小熊の獣人の前までロードします。》


 少年の意識が再び覚醒した。

「はっ!?」


 敵だ。

 本能がそう警鐘を鳴らした。

「うがああああああああ――――!!」

 見ると今にも怒り狂いそうな小熊の獣人、カッコ女の子。がこっちを睨みつけて来るではありませんか。なにか悪いものに憑依されている……?


「……ここからスタートか、当然だよな」

 神妹サキがそれに同調する。

「さて、どうする王将さん。観る限り私達2人でもパワー負けする相手だぞ」

「とにかく逃げるんだ! 今度は円を描きながら! それで周りの人に助けを求めて情報を聞き出す!」

 言って左回りに旋回しながら、村人ABCに話を飛ばす。

「おいあんた達! あの子がどうしてああなったのか知らないか!?」

「あ? ああ、あれは奴隷になった獣人だ。それが暴れて脱走したらしい」

「熊の獣人は高値で売れるからねえ~、よほど厳しい調教をされたんだろう」

「今回はいつにも増して凶暴だ、悪霊にでも取り憑かれたのか? 倒せば落ち着くかも?」


 ヒント1:彼女は奴隷で脱走したらしい。

 ヒント2:よろしくない環境で捕まってたらしい。

 ヒント3:悪霊は倒せば落ち着くらしい。


「うがああああああああ――――!!」

 獰猛な雄叫びを上げながらこちらに襲って来る小熊ちゃん。可愛い。

「って違う違う! どうやら倒せば落ち着くらしいぞ! でもどうやって? 攻撃はまるで歯が立たなそうだし……」

 そこへ神妹サキは助言をする。

「何も攻撃だけが技じゃないよ、ほら。眠らせるとかさ。そういう冒険者達とかは冒険者ギルドに居そうだよね」

「なるほど! 眠らせるか! おーい! 誰か眠らせる魔法とか持ってる奴は居ないかー! 冒険者ギルドのかたとか居ませんかー!」

 だが、場は騒めきによってかき消された。

「いねーのかよ! じゃあ神妹様なら」

「だから言ってるじゃない。私は盤上ではタダの駒の一般人。居ないものと観なさいって!」

「あぁーもう! 頼れる仲間は皆目が死んでるー!?」

 もっとキョロキョロと首を振ってあたりに何かいいものが無いか探す。周りには露天商のような店が並び、水の入ったタルがある。

「水がある。とりあえずぶっかけてみるか。酒じゃないけど、目は冷めそうだ!」

 その動向を注視して見つめるサキ。

「……ふむ」

 航はおもむろに水の入ったタルを持って、水をバシャン! と小熊にかけた。ただの水じゃあ効果がなさそうに見えるが……。

「あー! お客さん困りますよ! それ何でも治せるエリクサーのタル……!?」

 そうして、びしょ濡れになった小熊が出来上がった……。悪霊が浄化された。

「…………くぎゅう?」

 ざわざわざわとと、喧騒が騒ぎ立てる中。どうやら正気に戻って止まった。小熊に手を差し出す。

「初めまして小熊ちゃん、俺の名前は世界線航せかいせんわたる、あんたの名は?」

 そう言って……。

 言い返された……。

「くぎゅうはくぎゅうなのくぎゅう」

「お、おう。くぎゅうって言うんだな、よくわからんけど解かった」


《VS小熊の獣人戦のクリアを確認しました。》


 それを見つめる観測者のサブマスターはというと。

「おお、まさか一発で事件解決とは。てっきり2・3回ループすると思ってたよ~」

「へへ、あ。そうだ。お前みたいな神様じゃない一般人にループの話ってしても良いのか? お約束だとループの話をするとペナルティとかありそうだけど」

 それは、純粋な物語に水を差す行為だから。言わないのがお約束だった。

「あー、そこか~……。ちょっと審議するね、ちょっと待ってて」

「は? 審議?」

 言うと、神妹サキは指パッチンをして。この世界の時が止まった。


◆メタ世界:神様の間


「どうしよっかお姉ちゃん、ループのルールを他者に言う・言わないは……」

 神姉様ことヒメがそこに現れた。

「王道だと、言っても突拍子も無くて失敗とか。そんな高等魔法この世界には存在しないとか。あるけどな、でももし言うなら。代償は払わないと世界観に負荷がかからなくて面白くなくなるだろうな」

「代償ねぇ~……」

「ここは王道に、『時空を操る魔法何て高等技術過ぎて存在しない』が妥当だと思うけどな。で、ループ魔法を言った時の代償なんだが……」

「いるの? 代償?」

「いや、正直いらん。この世界観で『存在しない』って設定なら。航のことを信じる信じない、どちらを取ってもセーブポイントまで戻るから。さほど重要な点にならないと思う」

「でもループできます。信じます。って言った流れの後にセーブしたら。その人はずっとループの事を知れることになっちゃうよ?」

「ありゃ、そう言えばそうだな。……まーそこは設定欄にでもループの事を知ってるか・知らないかを記入して管理しておけば。特に問題はないじゃろうさ」

「じゃあ代償は?」

「無しで良いんじゃないか? デメリットなしのチート当たり魔法」

「じゃあ・デイライフのルールブックに追記しとくね。やっぱメモっとかないと忘れるわこれ」

「じゃな」


・デイライフはこの世界観では高等技術過ぎて存在しない。ループのことを他者に教えても、そのデメリットはない。


「じゃあゲームを続けるね」

「あいなのじゃ」

 そう言って、指をパチンとまた鳴らした。カチチチ! 時が動き出す音がした。



「審議の結果、ペナルティ。デメリットはなしの方向で進むことになりました、そういう物語って事ね。良かったわねストーリーがイージーモードで」

 にこやかにウインクをする神妹サキ。

「お、おう。よく解んねえが解った」

 航は小熊を手でなでなでしていた。


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