吸血鬼
むかしむかし、まだ国というものが作られていなかった時代、ヴァンパイアと呼ばれる魔族が強大な力で初めて国というものを作り上げた。
ヴァンパイアはほかの種族に比べ、長命である上に力も強大であるために人族を含み獣人族、エルフにドワーフ、そして本来強い力を持っているはずの魔族ですら太刀打ちできなかった。
ヴァンパイアの中にもとても珍しい個体がいた。それはアドライト・トワイライト。
トワイライトは、ヴァンパイアの中でも圧倒的な強さを持ちながら、世界を旅することを生きがいにしていた。そのため自身の国の王の言うことすら、聞かず旅を続けていた。
自身の言うことを聞かないトワイライトに怒ったヴァンパイアの国の王様は、全世界に向けアドライト・トワイライトの殺害命令を出しました。
そしてすべての種族がトワイライトを殺すべく行動を開始しました。それでもトワイライトはとても強く一つの種族だけで挑んでも返り討ちにあってしまいました。
そのことで異種族同士の協調による作戦も始まりました。いくらトワイライトでもすべての種族に手を組まれたらどうしようもないかと思われたが、これもまたすべて返り討ちにしてしまいました。
そんなことが続き、殺害命令が出てから数年、人族に大きな聖なる力を宿す赤子が生まれました。
その少女はとても美しく、気高く育ちついに、トワイライトに戦いを挑みました。
あのトワイライトといえど、その少女の持つ大きな聖なる力には敵わなかったのか、トワイライトはついに森の奥深くの神殿に封印されてしまいました。
その後その女性は聖女と呼ばれ高い人気を得ました。しかし、ヴァンパイアの国の王様は、トワイライトをも封印できる聖女様の力を恐れ、今度は聖女様を殺そうとします。
高い人気を得ていた聖女を殺そうと動く、種族はヴァンパイア以外におらず、そのほかの種族は聖女を守るために動きました。
その結果、ヴァンパイアたちは、戦いに敗れ、歴史から消えることになりました。
すべての戦いが終わった後、一緒に戦っていた種族たちは、バラバラになり自分たちだけの国を作りました。
こうして人族、エルフ、ドワーフ、獣人族、、魔族の国が出来上がりました。
なかでも人族の国の一つは、聖女様の国になりました。聖女様はトワイライトを封印した神殿の近くに街を作りました。
その国は、聖リース王国となずけられました。
「これが、聖女様のお話になります、どうでした?アランさん。」
「その話はいったい何年ほど前の話なんだ?」
「大体5000年前の話といわれています。」
5000年か、ずいぶんと長い間眠っていたようだな。それにしてもここまでほとんど正確に歴史が言い伝えられるなんて本当に人気があったんだろうな。一番重要な部分は間違っているがそれは仕方のないことか。
「そうだな、そんな感じで間違いはないぞ。ちなみに聖女な名前は伝わっているのか?」
す、すごい、改めて思うと今、私伝説になっている人とお話しているんだ
「聖女様のお名前は、この聖リース王国の由来にもなっていて、リース様です」
「そこは間違っているようだな」
「えっ!?リース様じゃないんですか!?教会の人に怒られちゃいますよ!」
「間違っているのだからしょうがない。その聖女の名は、リーゼルテなんだ。」
「そ、そうだったんですか」
新しい発見だ、でも私しか知らない真実だ。聖女様のお話が好きな私としてはなんかうれしいな
「どうした?何かうれしそうだなシャリー。」
「わかります?まだ私が小さい頃からからお母さんが聞かせてくれたお話なんです。だから私聖女様のお話がすごい好きで、いつか聖女様みたいになれたらって思ってたんです」
「そうだったのか、シャリーならなれるかもしれないな、リースと同じくらい高い魔力を持っているしな。」
「魔力?聖なる力って魔力のことなんですか!?」
「ああ、間違いないぞ。」
「ふふっ、なんかアランさんとお話ししていると驚くことばっかりです。私がアランさんに教えてあげる側なのに。」
「そうか、それはすまないな。」
「別に全然気にしていませんよ。さてじゃあ今度は今の世界の常識についてですね。」
「ああ、よろしく頼む。」
「はい」
そうですね。じゃあとりあえず人族の国から、人族はこの聖リース王国のほかにも3つの大国があって聖リース王国を含む四大大国となっています。
そしてエルフは森の中に住みあまり外に出てきません。エルフは魔法がすごくて、たまに冒険者として活躍している人もいますがかなり珍しいですね。
ドワーフは手先が器用で鍛冶や工芸品などを作るのを得意としています。ドワーフの国もありますが多くのドワーフは街に出てきて冒険者相手に商売をしていますね。獣人族は身体能力が高く、冒険者になっている人が多いですね。
最後に魔族なんですが、魔族のことはあまりよくわかっていないのですが、いつからか魔族とほかの種族は敵対関係になってしまったのです。魔族は魔王と呼ばれる魔族の中でも一番強いひとがなる完全な実力社会みたいですね。
魔族は時々、いろんな国に戦争を仕掛けてくるんです、ここ何年かは起きていないんですけどね
「って、あーーー、予言だと真なる魔王が誕生してることになっちゃう!?」
「予言?」
「そうなんです、この国には予言があって、アランさんが目覚める時は魔族の国に真なる王が生まれる時なんです!やばいですね、これは国に報告しないとやばいかもです。」
「シャリーの身が危ないのか?ならば仕方のないことだ、報告しても構わないぞ。俺はどうとでもできるしな。」
「で、でも、それでアランさんに何かあったら、いやです!私絶対言いません。だからしばらくはうちの宿に泊まっていってくださいね。まだまだお話したいことがたくさんありますから。」
「まあ、かまわないが、そのかわり危険になったら、すぐに言うんだぞ。」
「はい、わかりました。」
その後、シャリーからこの世界の仕組みを聞きいた。
そうだな、とりあえず冒険者になるのが旅をするうえでよさそうだな。明日にでもギルドとやらに行ってみるか。
「アランさーん、夜ご飯一緒に食べませんかー」
「ああ、わかった、今行く」
誰もいなくなった食堂でシャリーとセリーヌの3人でテーブルを囲んだ。
「うちはお父さんが料理を作っているんですよ、この街でもおいしいって評判なんですよ。」
「そうか、それは楽しみだな。」
セリーヌが厨房のほうに行っている間に、シャリーがこそっと耳元に口を寄せてきた。
「アランさんって、吸血鬼なんですよね?何か体に入れるとまずいものとかあるんですか?というか、血のほうは飲まなくても大丈夫なんですか?」
「俺は吸血鬼の中でも真祖だからな、特に問題はない。吸血衝動のほうも下級のヴァンパイアならばかなりの量を飲まなくてはならないが真祖クラスなら数滴の血で数年はもつ。」
「そうなんですね、私の血なんかでよければいつでも言ってくださいね。」
そうだな、シャリーほどの魔力を持っているならば相当美味なのだろう。だが、困ったものだな。実際目覚めたばかりで、血が足りていない。吸血衝動は抑えているもののいつまでも持つものでもないからな。
「そうだな、ならば夜に俺の部屋に来てくれ。」
「は、はい。」
「あらあら、シャリー、ずいぶんアランさんと仲良くなったみたいね。ふふふ、もしかしてすきになっちゃったの?」
「ななな、なに言ってるのよ、お母さん!ア、アランさん違いますからね、お母さんったらほんとにもう何ってるんでしょうね、あはは。」
「そんなにあわてちゃって、まったく。ほらご飯ができたわよ。さあ食べましょう。」
俺たちは3人で今日あった出来事を話しながら食事をとった。
「ふう、間違いなく美味であったな。これは俺の長い人生の中でも上位に入るうまさだな。」
「まあ、まだアラン君も17、8歳くらいでしょ?そこまで長くないじゃない。」
「そうだったな。」
そういって笑った。
そうか、俺はそのくらいの年に見えるのか、よしこれからは、17歳ということにしておこう。
「では、俺は部屋に戻って休むことにするよ。食事は大変上手かったと伝えておいてくれ。」
「はい、わかりました、伝えておきますね。ではアラン君、おやすみなさい。」
すっかり夜も更け、そろそろ眠るかと思ったところでシャリーが訪ねてきた。
「こんな時間にどうした?何か用でもあったか?まあ、立っているのもなんだ、ここに座ってくれ。」
そういうとシャリーはベッドに座っている俺の隣に腰を掛けた。
「ちょ、ちょっと!アランさんが呼んだんじゃないですか!?血を飲みたいって。」
「あ、ああそうだったな、もちろん覚えていたぞ。」
「絶対忘れてましたよね?まあいいです。ちょっと緊張しますけど、お願いします。」
「い、いたくしないでくださいね?」
そういうと、全身を真っ赤に染めながら、首筋を差し出してきた。
「大丈夫だ、痛くはしない。安心して身を任せてくれ。」
そして俺は、差し出されている首元に、舌をはわせた。ビクッと反応があったが気にせずに、シャリーのやわらかいくび筋に歯を立てた。
「んっ、あんっ、なんか変な感じです。アランさんのが、んっ、私の中に、あんっ、入ってます。」
久しぶりの吸血に、そしてシャリーの血のうまさに一瞬我を忘れそうになったが、向かい合い、抱き合う形で吸血していたため、シャリーの抱き着く力が強くなったおかげで気を持ち直した。
「ふう、とても美味であったな。シャリーありがとう。」
シャリーはぐったりして汗をかいており、なんだかとても色っぽくなっていた。
「は、はい、私の血が、はぁ、おいしかったみたいで、はぁ、良かったです。」
す、すごい、これが吸血鬼の吸血なんだ。なんか、すごい気持ちよくて変な気分になっちゃう。
「で、でもしばらく吸血は無しでお願いします。」
「ん?もしかして痛かったか?それはすまないことをしてしまったな。」
「いえいえ、全然痛くなかったですよ、むしろ気持ちよくて、癖になっちゃいそうっていうか、、、」
最後のほうは、よく聞こえなかったが、痛くなかったなら、良かったか。
「じゃ、じゃあ、私はもう行きますね。お、おやすみなさいアランさん。」
「ああ、おやすみ」
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