復活後初めての街
まだ、7人もいるんだ、俺たちのほうが、有利のはずだ。ここで死ね、妄言野郎!
「ようやく調整が終わりそうだ。復活したばかりで本調子が出なくてな。さて、そろそろ本気で行くとしよう」
「はっ、今からが本気だと?やれるもんならやってみな」
「これは地獄へ向かうお前らへの餞別だ、特別に見せてやろう、圧縮などという、子供のお遊び程度の魔法ではなく本当の魔法というものを」
アランは空気中に漂う魔素をも使い、魔力を練り上げていく。
「やはり魔素が薄くなっているようだな。まぁ盗賊程度にはちょうど良い」
『闇夜の狂宴』
アランの魔法は盗賊たちを丸ごと包み込んだ、その闇は徐々に小さくなっていき、やがては盗賊ごと消えていった。
「よし、やったな。これで盗賊も片付いたことだし、街へ向かうか。行くぞシャリー」
「アランさん?あれだけ心配させておいて、何平然としているんですか!?行くぞじゃないですよまったく。」
「もう、アランさんが無事でよかったです。盗賊を倒してくれてありがとうございました」
「ふん、当然だ、降りかかる火の粉を払っただけのこと。護衛は依頼だしな。礼を言われることではない」
「ふふっ、それでもありがとうございます」
「あ、アランさん!そろそろ街が見えてくるはずですよ」
「ああ、おそらく街をかこっているであろう壁なら、かなり前から見えていたぞ」
「み、みえてたんですか?私一人ではしゃいで恥ずかしいじゃないですか、見えているなら見えているって言ってくださいよ」
「す、すまない。見えているぞ」
「もう遅いですよ、まったくもう、そんなんじゃこの時代になじめませんよ?」
「な、なに!?わかった、これからは気を付ける。」
「はい、気を付けてくださいね」
やはりまだなじめてはいないか。これから世界を回るつもりだが、旅を始める前には慣れておきたいな。
やっと着いたな、見え始めてからも意外と距離があったな。さてどこから入るんだ?壁をジャンプで乗り越えるのか?
「アランさん?壁を乗り越えようとか思ってませんよね?」
「思っていたが、違うのか?」
「違うにきまってるじゃないですか、もし壁を乗り越えないといけないなら、私だけじゃなくてみんな帰れないですよ。」
「あそこに門番さんがいるので門番さんに身分証を見せて通るんですよ。アランさんは身分証持っていないと思いますが、私が身分保証人になるので心配しなくていいですよ。」
「すまないなシャリー、世話になる。」
「ジャコネさん、ただいま戻りましたー」
「おおーシャリーお疲れ様、無事に帰ってこれたみたいだな。」
「それで?そこの男は?」
「この人はアランさん、森で偶然会って、街まで護衛してもらったの。」
「街に戻るまでの間に盗賊に襲われたんだけど、アランさんのおかげで助かっちゃった。」
「盗賊?それはまさか赤蛇団か?」
「ああ、確かそんな名前の盗賊団だったな、ルーベンスっていうのがボスみたいだったな」
「ルーベンスだと!?なら間違いなく赤蛇団のようだな。領主様も手を焼いていたみたいだったが、赤蛇を倒すなんてあんた、相当の実力者のようだな。」
「衛兵団が詳しく話を聞きたいだろうから、少し待っててくれ、すぐに呼んでくる。」
「わかった。シャリーはどうする?俺は待っているが、シャリーはお使いを頼まれていたのだろう。届けてきたらどうだ?」
「アランさん私のうちの宿屋の場所わからないんじゃないですか?」
「わからないが、衛兵が来るんだ、話をした後にシャリーのところへ案内してもらうさ。」
「そうですか、わかりました。じゃあ私は先に行ってますね。ちゃんと来てくださいよ、お母さんに話してごちそう用意して待ってますからね」
「わかっている、ならば楽しみにしておこう。」
門の近くの詰め所の中で待っていると、外が騒がしくなってきた。偉そうな服を着た男が詰め所に駆け込んできた。
剣を持っているということは、この男が衛兵のようだな。服を見るにえらい立場のようだな。それにかなりの腕を持っているようだ。
と考えていたら、男から声をかけられた。
「お前がアランってやつか?赤蛇を倒したって話だが本当なのか?」
「俺がアランだ、赤蛇を倒したのも本当だ。」
「そうか、それが本当ならありがたい話だな、俺たちも困っていたところだ。いったいどうやって倒したのか聞いてもいいかい?」
「ああ、別に構わないぞ、隠す意味もないからな。」
「気前がいいねえ、普通の人間なら戦闘方法は秘密にするところだがな。まあ腰に差しているその真っ白な剣を見るに剣で倒したのだろうと予想はつくがな。」
「いや、剣で倒したわけではない。剣で相手するのは数が多くて面倒だったからな、魔法でまとめてつぶしたぞ。」
「魔法も使えんのかよ、じゃあその剣は飾りか?いや、その隙のない佇まい、いつ襲われても剣を抜けるようにしてやがんな。剣も相当な腕を持っているみたいだな。」
ほう、気づくのか、この男なかなかいい目を持っているようだな。
「さてな、それで?聞きたいはなしは聞けたのか?俺はこの後シャリーの店に行かねばならんのでな。」
「ああ、事実確認もできたしな、もしかしたら今回の件で領主様から、呼び出しがあるかもしれないから町からはなるべく出ないでくれると助かる。」
「それとシャリーの店ならこの道をまっすぐ行って青い鳥の書いた看板を左に曲がったところにある、茶色の看板の店だ。案内しようか?」
「ああ、俺はこの街に来るのは初めてでな、案内を頼む。」
「あいよ、じゃあついてきな。」
ずいぶんと活気のある街だな、人も多いようだし、露店も多い。
街を歩いていると、とても食欲を刺激するいい香りが漂ってきた。串焼きを打っている店からのようだな。
アランは串を焼いているおっさんに話しかけた。
「いい匂いだな、これはいったい何を焼いているんだ?」
「おや、兄ちゃん気になるかい、きいて驚くなよ?これはロックバードって魔物を焼いた肉でジューシーでとてもうまいんだ。一本食べていくかい」
「そうだな、では一本もらおうか。」
「まいどあり、一本銅貨三枚だよ」
「銅貨?それはなんだ?」
「おいおい、金を持ってねえのかよ、冷やかしなら帰んな」
「わるいわるい、俺が払うよ、二本頼むぜ」
「すまないな」
「いいってことよ、ほれ、ここの串はうまいんだぜ」
アランは串を受け取ると、その肉を一口、口の中に入れた。
「これは、うまいな。今まで食べたことのないうまさだな」
「だろ?っと、ついたぜ。ここがシャリーの店だ。」
「助かった、案内感謝する。」
「おう、自己紹介が遅れたな、俺はローゼン、なんかあったら衛兵団の詰め所にいるから尋ねてきな」
「わかった、何かあったら行くことにする」
ローゼンと別れ、扉を開け店に入ってくと、ちょうど昼時なのか、たくさんのお客が席について断章をしていた。
「いらっしゃいませー、ってアランさん、早かったですね。」
「ちょっと待っててくださいね、お母さん呼んできます」
シャリーは店の奥のほうに走っていった。
しばらく立って待っていると、奥からシャリーによく似た綺麗な女性が出てきた。
「あなたがアランさんですか、娘を守っていただきありがとうございました。私はシャリーの母のセリーヌです。」
「依頼だったからな、当然のことだ」
「それでもです。ありがとうございました。今夜はうちに泊まっていって下さね。」
そういうとセリーヌはカギを取り出して俺に渡してきた
「二階の三号室のカギです、そこにお泊りください。シャリー案内して差し上げなさい」
「はーい、じゃあアランさん、行きましょう」
アランはシャリーの後をついていった。
「ここが三号室です、少し広めの部屋になっています。それで、この後アランさんはどうするんですか?」
「少しこの時代の話を聞きたい。まだ、目覚めたばかりで何もわかっていないからな」
「わかりました、私がお話ししますね、下のお店がまだ忙しいのでひと段落するまで待っていてもらえますか?」
「わかった、この部屋でおとなしく待っているとするよ」
シャリーが部屋から出ていき、やることがなくなった。
〈さてどうするかな、そういえば、かなり魔素が薄くなっているがどうなっているんだ?俺は平気だが、ほかの魔族たちはかなり苦しいんじゃないのか?魔素が減った理由も気になるな。
おそらくだが、魔素が薄くなったせいで封印の力が弱くなり俺の封印が解けたんだろうな。〉
ふむ、……………………やることがない。仕方ない、暇つぶしに魔力体操でもするか。
体の中に流れている、魔力に意識を向け体の中で循環させる。右へ左へとゆっくり循環させていく。そんなことをしばらく続けていると扉をノックする音が聞こえてきた。
「アランさん、はいりますよ」
「ああ、いいぞ」
シャリーが扉を開け部屋に入ってきた。
「適当に座ってくれ、すまんが、この時代について教えてくれ。」
「はい、わかりました、そうですね、まずはアランさんの伝説についてお話しますね」
そういうと、シャリーは静かに語り始めた。
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