ローズマリスへの道
まずは魔力を感じるところからだな。一番早いのはやはり直接動かしてやる方法だが、高い魔力を持っているせいで暴走の可能性もある。どうしたものか。
「シャリー、まずは魔力を感じるところから始めなければいけないんだが、まず魔力とはどういうものかわかるか?」
「魔力って魔法を使うためのエネルギーみたいなもので、大気中をさまよう魔素を取り込むことで、回復するんですよね。」
なるほど、魔力に関しての知識などは衰退していないようだな。知っているのであれば感じることも早くできるかもしれんな。
「大まかにはその通りだ、わかっているなら問題はないな。まずは力を抜いて自然とひとつになることが大事だ、さいわいここは森の中だ、自然を感じるのは簡単だろう。」
「はい、やってみます。」
二人は森の中を進んでいく。休憩をはさみながら、魔力について教えていたが、まだあまりうまくいってはいない。
やはり、普段意識していなかった、魔力をすぐに感じられるようになるには、むずかしいか。
「シャリー、方法を変えよう。俺が魔力を送るからそれを感じ取るんだ。」
「はい、わかりました」
俺は魔力を流すためにシャリーの手を取った
「ひゃっ、きゅ、きゅうに何するんですか」
「あぁ、すまん、魔力を流すには体に触れる必要があってな。手が一番いいかと思ったんだが。」
「それならそうと先に言ってください。びっくりしたじゃないですか」
「すまんな、では魔力を流すぞ、準備はいいか?」
「はい、いつでも大丈夫です。」
俺は暴走しないように慎重に少しずつ魔力を流していった。
「なんか、アランさんから流れてきてます、ちょっと気持ち悪いです。」
ほう、流した瞬間に魔力に気づくか、やはり高い魔力を持っているだけあって、それなりに感知する力も高いようだな。
「感じとれたか、ではシャリーの魔力を少し動かしてみるぞ」
動かして少ししたタイミングでシャリーが声をあげる。
「わー、なんか体の中で動いてますよ!これが魔力なんですか!?」
すごいな、もう感じ取ることができるのか。シャリーには高い魔法の才能がありそうだな。
「よし、わかったのであれば、その魔力を自分の力で動かしてみろ。」
「できるかなぁ、頑張ってみます。」
そんなやり取りをしながら、歩いているとようやく森の出口が見えてきた。
「森を抜けて、道を進むとすぐ町につきますよ。なんだかあっという間でしたね。」
「そうだな、シャリーに出会えたおかげだ、おまけにシャリーは可愛いからな。」
シャリーは顔を真っ赤にしてうつむいた。
「もう、そんなこといって、褒めても何も出ませんよ」
おとぎ話に出てくるような人に私褒められちゃった。でもアランさんって吸血鬼なんだよね。聖女様の話とかは本当なのかな。聞いてもいいかわからないし。いつかアランさんから本当に事を聞いてみたいなぁ。吸血鬼は生きた血を飲まないといけないって聞くけどアランさんは大丈夫なのかな。
急に考え込んでしまったな、うーむ。やはり時代が違うせいか、俺はうまく話せていないようだな。早くこの時代に適応していきたいものだな。
「ようやく森を抜けられたな。この道を進めば街へ行けるのか?」
「はい、そうですよ。この道を進んでいけば、私の住んでいる街、ローズマリスにつきますよ。」
「そうか、思ったよりも早く街につけそうだな。」
「街に着いたら、アランさんに預けている薬草を薬屋におじさんのところに持って行ってから私の家に向かいましょう」
「わかった、案内を引き続き頼むぞ」
「任せといてください、と言っても道まで出てしまえば、あとはまっすぐ進むだけなんですけどね。」
アランがシャリーに魔法について説明しながら道を歩いていると、突然アランが立ち止まった。
感知にたくさんの人族の反応、これは街の反応ではないな。この反応から察するにおそらく盗賊だな。まったく、危険な森に一人で来ている幼い少女もいるというのに、下賤な連中もいたものだな。
「シャリー、おそらく盗賊がこちらを狙っている。俺がいる限り怪我はさせない。盗賊が出てきたら安心して、目をつむっていてくれ、一瞬でかたをつける。」
「は、はい。ちょっと怖いですけど、お願いしますね。」
こんな会話をしてから少し進むとアランの予想通り30人ほどの盗賊が出てきた。
なかでも盗賊の頭っぽい奴が声をかけてくる
「俺たちは赤蛇団、俺はその頭やってるルーベンスってもんだ。おい兄ちゃん、ずいぶんといい身なりだな。金目のものと、そこの女を置いていけ!」
周りの汚い身なりの盗賊がボスの言葉に賛同した。
「そうだ、そうだ、てめぇ貴族かなんかだろ、金をよこせよ!!」
「俺はそれよりもあの女だな、まだ子供だが、それを無理やり犯すのが、楽しいんだ」
「お前は相変わらずだな、壊すなよ?俺らもたまってんだからな」
などと口々に言っている。ここにいるのがただの人ではないことに気づかずに。男の後ろでぎゅっと身を固くしている少女の姿に、目の前の伝説を怒らせていることも気づかずに。
「貴様ら、悪いが俺たちは、先を急いでいる。一瞬で終わらせてもらう。シャリーしっかり隠れていろ。」
「は、はい。」
こんなに心優しいシャリーを怖がらせた罪は重いな。少しお灸をすえてやろう。地獄で悔いることだな。
そうだな、まずは誰を相手にしているのか見せてやるか。
アランは盗賊のうちの一人のほうへ手のひらを向けてを伸ばす。そしてその手をぐっと握りしめた
『圧縮』
すると手を向けられていた盗賊がぐちゃっと音を立てて潰れた。
目の前で起きた惨劇に盗賊は誰も声をあげることができなかった。現実感のない仲間の死に方を、信じることはできなかった。
「どうした?来ないのならば、手早く終わらしてもらう」
アランの声と、飛び散ってきた仲間の血で現実に突如戻される。そして頭が叫ぶ
「ひるむな!!こっちのほうが人数が多いんだ、囲めばやれるぞ!」
全く、今のを見ても逃げ出さないか。まぁ一人足りともに逃がす気はないのだがな。
っと考えているうちに囲まれてしまったな。この距離なら剣のほうがいいか。
「いくぞ、目を離すなよ」
言われなくても離すかよ、囲んでるんだ、こっちのほうが断然有利、こんな意味わかんねぇ奴に俺の赤蛇団が、この赤蛇団頭のルーベンス様が負けるはずねぇ。
!! い、いねぇ、どこ行きやがった!また魔法か!?
「二人目」
自分の近くにいた仲間の一人が首を切られていた。
なっ、俺は目を離していなかったぞ、あそこまで一瞬で移動したというのか。
仲間の首が切られてから、そこまで考えるのに約3秒。その間に約半数以上がこと切れていた。
くそっ、ふざけんな
「てめぇら一瞬でいい。奴の足を止めろ」
ふん、そんなことができるなら、やってみるがいい。受けて立とう。
アランがルーベンスと戦っている間に盗賊の一人が、シャリーを人質にとり、アランに武器を捨てるように言った。
「よし!おまえよくやった!こいつを殺したら最初にその女を使わせてやる」
「まじかよルーベンスのお頭!やったぜついてる!」
「ごめんなさい、アランさん、私のことなんか気にせずに盗賊をやっつけちゃってください」
「すまない、シャリー、怖い目に合わせてしまったな。」
アランは武器を捨てた。
盗賊はアランの魔法を見ていた。アランの魔法を警戒していた
「少しでも妙な動きをしてみろ!この女の命はないぞ」
ルーベンスがこの隙にアランを背後から突き刺した。
「いやぁーー!アランさん!!」
「はっはっはー、悪いが、そこのお嬢ちゃんはいただいていくぜ。守れなくて残念だったな!はははははは」
シャリーが、盗賊の拘束を振り払いアランに駆け寄っていく。アランは大量に血を流している。誰の目から見ても明らかに致命傷であった。シャリーは涙があふれだしてきた。
「私のせいで、アランさん…ごめんなさい、ごめんなさい……」
アランは血を吐きながら震える声で言った。
「シャリーよ、謝るのは俺のほうだ。守ると言っておきながら、怖い目に合わせてしまった。悪かったな。」
「いえ、私が、、私がどんくさいばっかりに……」
「安心しろ、俺は死なない、俺はアドライト・トワイライトだ」
「アドライト・トワイライトだぁ?妄想もたいがいにしやがれ、あんなのおとぎ話にすぎねぇんだよ。死にそうになって頭でもおかしくなったか。笑えるぜ。」
ルーベンス達盗賊たちが笑い、シャリーが泣いている中、突如アランが笑いだす。
「なんだ、ほんとに気でも狂ったか。あわれだな。はははー」
ふぅ、くだらない茶番はこの辺にして、そろそろ、地獄に落ちてもらうか。シャリーも泣かせてしまったしな。
アランは笑うのをやめるとゆっくりと立ち上がる。剣に刺されて、大量に流れていたはずの血がいつの間にか消えていた。
「おまえ、どうなってやがる、明らかに致命傷だったはずだぞ!なんで立っていられる!」
「いっただろう?俺はアドライト・トワイライト。おとぎ話を知っているなら俺がどんな存在なのか知っているだろう?」
「不、不死の怪物……吸血鬼の中でも伝説とされるほどの、ば、ばけもの」
ふっ、ばけものか、あの時代からずいぶんと時間のたっているはずのこの時代でも、扱いは昔のままか、まぁ別に構わないけどな。
「ア、アランさんは化け物なんかじゃないです。とってもいい人なんです!」
「シャリー、ありがとな、でもいいのさ。俺は怪物、それは今も昔も変わらない真実。」
「さあ盗賊、赤蛇団、終わりの時間だ。何か言い残すことはあるか?」
「なめんな、終わるのはてめぇの伝説だ!ここで死ね!」
アランと盗賊との戦いは終わりが近づいていた。
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