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最強吸血鬼、世界を旅する  作者: 妖狐の戯れ
聖リース王国編
21/27

Cランク昇格試験

 アランは試験内容が伝えられた後、またすぐに街の外に来ていた。


 イヴリーはギルドに入る段階でまたどこかに行ってしまっていたが、街の外に向かっている途中に戻ってきた。


(なに、また外に行くの?今度は何をしに行くの?)


 イヴリーはギルド内での会話を聞いていないからなぜアランが街の戻ってきたのに、すぐにまた外に行くのか理解できていないかったようだった。


「今から昇格試験に行くんだよ、俺にとっては今からでも簡単にできるからな。」


 イヴリーは納得したように頷いた。


(あなたに試験を出そうとはギルドとやらは見る目がないのね。)


 アランはイヴリーの言うことに確かになと思いながらも、前の時のように目立つわけにはいかないとも思うのだった。



 森にやってきたアランとイヴリーは魔物の気配を探っていた。


(Cランクの魔物を探せばいいのね。任せておきなさい私が探してあげるわ。私が役に立つということを教えてあげる。)


 アランはもうすでにCランクの魔物を感知していたが、イヴリーがやる気を出していることからここはイヴリーに任せることにした。



(見つけたわ、こっちよアラン!私が案内してあげる。)


 イヴリーは自信満々に案内を始める。しかしアランにはわかっていた。今向かっている方向に目当ての魔物がいないことを。



 イヴリーの先導で森を進むアランは目的の場所にたどり着く前に魔物と遭遇した。それも試験での対象であるCランクの魔物だった。


 〈あ、あれぇ、こいつじゃなかったんだけど……ま、まぁ細かいことは気にしないわ。〉


(さあアランついたわ。こいつが目的の魔物のなんでしょう?私に感謝の証として魔力をくれてもいいのよ。)


 ものすごいどや顔でそんなことを言ってくるイヴリーにアランは若干の苦笑いをしながら仕方ないなという様子でイヴリーに自分の魔力を分け与えた。



 アランはイヴリーに魔力を分け与えたあと、近くにいた魔物たちを一瞬で葬り去った。

 そう、そこには目的のCランクの魔物が群れになっていたのだ。



 どうしてこんなことになっていたのかは理由があった。


 アランがイヴリーに気づかれないように魔力を使ってコントロールしていたのだ。

 精霊たちは魔力に対してはとても敏感である。それこそほんの少しの魔力にも反応してしまうほどに。


 そんな精霊の中でもアランの魔力により進化しているイヴリーに気づかれないほどの魔力操作、この世界にアランよりも魔力の扱いに長けたものはいないだろうと思われる。


 自分の魔力のより感知した目的の魔物をイヴリーが見つけていたであろうオークへの道に誘導し、ちょうどオークがいた場所に連れてきたのである。イヴリーが感知していたのはEランクのオークであったため、それよりも強いロゴサウルスの群れに驚いたのである。



「よし、イヴリー、目的の魔物も狩り終えた、戻るぞ。」


 イヴリーは何かおかしいなと思いながらも森から出ようと歩き出したアランについていった。



 アランは街に戻った後すぐにギルドに向かった。


「あら、アランさんどうしてまたいらしたんですか?何か忘れものですか。」


 受付にいたレナンはギルドを出ていったはずのアランがすぐに戻ってきたのに気づき声をかけた。


「ああ、忘れ物ではないがギルドマスターに話がある。案内してくれるか?」


「わかりました、ギルドマスターの部屋までお連れ致します。こちらへどうぞ。」


 レナンは試験の説明を行うときと同じようにアランをギルドマスターの部屋まで案内した。


 コンコン


「マスター、アランさんがお越しです。マスターに話があるとのことでしたので連れてまいりました。」



 マスター室ではアレックスが事務仕事をしていた。試験の説明を受けて先ほど出ていったばかりのアランが戻ってきて話があるというので、まさかもう試験の魔物を狩ってきたとは思わず、何か試験に関する質問でもあるのだろうとアランを部屋に入れた。


「おおアラン俺に話があるって?何か試験に関する質問か?」


 アレックスはまだデスクに積みあがっている書類を処理しながらアランに問いかけた。


「ああ、質問といえば質問だな。ロゴサウルスの群れを狩ってきた。全部で七体ほどいたがすべて倒してきたから安心してくれ。」


 アランはCランクの中でも上位、Bランクの冒険者でも群れたロゴサウルスに一人で勝つことは難しいのにまるでお使いに行ってきたみたいな軽い感じで討伐してきたと言った。



 アレックスはアランから聞いた言葉に驚きつい手に持っていた書類を破いてしまった。


「げっ、やっちまった。ってそれよりもロゴサウルスの群れって本当か!?よく傷一つなく帰ってくれたな。にしても説明したその日にクリアしてくるなんてお前は相変わらずな奴だな。」


 アレックスはアランの言うことを最初から疑ってはいなかった。ギルドの戦闘試験で戦った時からアランの凄さを身をもって体感していたためである。


「とりあえずギルドの受付で魔物の素材を全部題しておいてくれ。まぁないとは思うが念のため鑑定して確認が取れたら試験合格ということで無事に昇格になる。結果が出るまでの間も依頼は受けられるがランクは今まで通りDランクになることは注意しておいてくれ。」


 アレックスは昇格までの流れを説明した。結果までの注意事項も併せて説明してくれたため、アランはわざわざ聞く手間が省けたようでホッとしていた。



 アランはマスターに言われたようにギルドの受付で討伐してきたロゴサウルスを預け、暗くなり始めた空を見ながら自身が宿泊している暁の夜亭へと向かっていった。






「お呼びでしょうかマスター。」


 アレックスの部屋にセシルが呼び出されていた。


「ああ、もう把握していると思うがアランがもう試験の魔物を狩ってきた。これはかなり好都合だぞ。あの方たちを待たせることなくアランを護衛として付けられそうだ。」


「も、もう倒してきたんですか?まだ説明してからそんなに時間経ってないですよ!?」


 滅多に動揺することのないセシルが大きな声で叫んだ。

 アレックスはそれに驚くことなく答えた。


「ああ、本当だ。」


 セシルはこれが嘘や冗談ではないとわかり、口をポカンと開けてしまった。


 なんとか気持ちに整理をつけたセシルは先程の呆け具合を隠すようにまくしたてた。


「これでアランさんに、あの依頼を受けてもらうことができるかもしれませんね。できれば受けて欲しいですが、無理強いすることはできませんからね。」


「そうだな。アランほどこの依頼に打って付けの人間はいない。もしアランが受けなかった場合のプランも考えておく必要があるな。その辺の人選はセシル、お前に任せる。」


「わかりました。」


「とりあえず呼んだ理由はこれだ。話は以上だ。俺はまた書類の続きをやるから下がっていいぞ。」


 そう言ってアレックスは未だデスクに溜まっている書類に手をつけ始めた。


 セシルはそんなマスターに気を使ってか、お茶を入れてから失礼しますとマスター室を出て行った。








 宿に戻ってきたアランは忙しそうにしているシャリーたちに軽く挨拶をして自分の部屋に戻った。


「これでおそらく試験は合格だろう。かなり長い間この街にいたが、なかなかいい街だったな。結果が出たらこの街を出るつもりだ。何かあるなら今のうちに言ってくれ。」


(わかったわ。でも私はこの街で何かすることはないわね。いつでも出られるわよ。)



 アランの部屋は驚くほどに綺麗だった。荷物は魔法で亜空間にしまい、部屋の中も魔法で綺麗にしているからだ。


 なるべくシャリーやセリーヌの掃除の苦労をかけさせないようにするアランの気遣いである。



 その日、シャリーたちと夕食を食べながら試験の終了と結果が出たら街を出ることを話した。


 シャリーは悲しそうな顔を一瞬浮かべたが、もう残り少ないアランとの時間を楽しもうと明るく楽しい話を続けた。



 アランが寝ようかと思うところ、扉が遠慮がちにノックされた。


「アランさん、起きてますか?」


 シャリーが訪ねてきたようだ。


「ああ、起きてる。入っていいぞ。」


 寝巻きを着たシャリーがアランの部屋に入ってきた。


「アランさん、もう出ていってしまうんですよね。ですからまた、あの、あの、わ、私の血を吸ってください!」


 シャリーは街に来たばかりの時に一度だけ行った吸血をもう一度してくれと言ってきた。





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