眠りの森で
今回の依頼の目的は森の調査と聞いているが、森に何かあるのだろうか。にしてもこの串焼きはいつ食べてもうまいな。
門に向かいながら、串焼きをほおばるアランにサクラは話しかける。
「アラン君、今から森の調査に行くのに余裕ね。」
「ああ、あの森に俺をどうにかできる魔物はいないからな。」
「ふふ、アラン君をどうにかできる魔物がいたら、それこそこの街は終わりね。」
「そうだな、それで以来の詳しい情報はどうなっているんだ?」
「街を出てからにしましょう?そのほうが人に聞かれなくて済むわ。」
人に聞かれてはまず内容ってわけか、これまた厄介ごとだな。まったく、この時代になっても厄介ごとからは逃げられないようだな。
門に近づいていくと、門のところに多くの人が集まっているのが見えた。なにかあるのか?
「なあサクラ、門のところに大勢の人が見えるのだが何かあるのか?」
「多分順番待ちじゃないかしら、この時間は街に来る人も町から出る人も多いから。」
「ああ、関所の役割もしているんだったな。」
それにして乱雑に集まっているように見えるが、まあサクラが言うならそうなのだろう。
そのまま歩いていき、門に並んでいるであろう列の後ろに並ぶことにした。
「本当にたくさんの人がいるんだな。出るまでに時間がかかりそうだな。」
「この日差しの中、待つのは嫌になるわね。あら?あれは何かしら。」
サクラが何かに気づいたようだった。サクラの向けている視線の先を見てみると、そこにはどこかで見たような顔があった。
ん?あいつは確か宿を出た時の………………
「ごきげんよう、無礼な冒険者。先ほどは良くもやってくれたね。依頼があると言っていたから、門で張っていて正解だったな。」
「このアルバーニ様に冒険者ごときが逆らったのが悪いんだ。お前ら、こいつらを囲め!男のほうは殺すな、女はお前らにくれてやる。」
そうアルバーニが言うと門の列に並んでいると思われていた連中が、全員武器を取りアランとサクラを取り囲んだ。
「ねぇ、あんたマリスの執事でしょ、こんなことしていいと本気で思ってるの?」
「貴様ぁ、冒険者風情がマリス様を呼び捨てにするなどゆるされ、る、はず、が………………お、お前は!?」
「なんだサクラ、知り合いだったのか?」
「いいえ、知り合いってほどではないわ、でもあいつも今ようやく誰を相手にしているか分かったようだわ。」
「なぜSランク冒険者がこんなところに!!そんな話は聞いていないぞ!」
「当たり前でしょ、国からの極秘の依頼なんだから。一領主に通達が行くはずがないわ。」
Sランク冒険者とは国からの依頼が来るほどの実力者というわけか、なるほどな。しかしどこまでの力を持っているのかは不明だな。少なくとも領主よりは上のようだが、、
「ちっ、おい、お前ら引け、この女はSランクの冒険者だ、邪魔をしたら打ち首になるぞ。」
周りを囲んでいた者たちは、Sランク冒険者という言葉か、打ち首という言葉におびえたのか、はたまたそのどちらにもなのかはわからないが、走り去っていった。
「次はないぞ、覚えておけよ。」
そう言い残しアルバーニはまたも去っていった。
「なんなんだあいつ、さっきも同じことを言っていた気がするが。」
それにしてもサクラがいてくれてっ助かったな。あの数を相手にするのは、さすがに面倒だからな。
「さ、邪魔は消えたことだし行きましょう。」
「そうだな、わるいな面倒に巻き込んだようだ。」
「ふふ、お互い様ってことでいいわ。」
何がお互い様なのか、俺にはさっぱりわからなかったが、いい笑顔をしていたサクラになぜと聞く気にはならなかった。
そこから俺がいた森、たしか眠りの森だったな。に到着した。
そこで俺はふと疑問に思いサクラに質問をした。
「ここは、眠りの森と呼ばれているらしいが、サクラは本当に伝説の吸血鬼がいると思っているのか?」
「ええ、私は信じているわよ。ここにいるのかはわからないけれども、少なくとも存在していたことは間違いないと思っているわ。」
「ほう、その根拠はあるのか?」
「私たちSランク冒険者は世界に限られた人数しかいないのは知っていると思うけど、今は8人しかいないわ。私たち8人はすべての種族の中でも上位に入る強さ、知識を兼ね備えているわ。だから各国の重要な依頼を任されることが多いわ。だいたいはその国に一人属していて、一人ではどうにもならないような依頼にはほかの人が派遣されることが多いわね。その代わり派遣された国は、派遣してもらった国に借りができることになるから頼むことはめったにないわね。」
「なるほどな。ギルド自体はどの国にもあり中立ではあるものの、所属している冒険者は国に属しているというわけか。」
「そうね、大体そんな感じね、Aランクまでの冒険者はかなり自由に国を移動していることが多いわ。ただSランクだけは移動することはほとんどないわ。その国の重要な依頼をしているから素にお国の機密を持っていることが多いからね。」
「でも国に冒険者を引き留める権利はないから、国は高ランク冒険者にはかなりの好待遇ね。それで話を戻すけど、実はSランク冒険者だけの秘密の会合があるのよ。情報交換のためのね。これは所属している国にも知られていないと思うわ。そこで情報が共有されるのだけど、どの国にも伝説の吸血鬼は実在していたとあるの。だから私たちSランク冒険者は全員実在していたとみているわ。」
「そういうことか、しかしそんなことを俺に話しても構わなのか?」
「ええ、私はいずれアラン君はSランク冒険者になると思っているわ。だから教えても問題はないと判断した。」
「なるほどね、ありがたい信頼と思っておくよ。ちなみに実在していることがわかって実際に現れたらどうするんだ?」
「ふふふっ、そこから先はSランクに到達してから教えるわ。」
そこは言えないというわけか、大体予想はつくがな。
さてずいぶん話し込んでしまったが、本格的に森の調査でもしますか。
二人は軽く言葉を交わし森の中へ入っていった。
アランとサクラは何気のない会話をしながら、森の調査を続けた。
「特に何も異常はないように思えるが、まだ調査を続けるのか?」
「ええ、そうね。何も異常はなさそうね。もう少し奥まで確認をしたら戻りましょうか。」
アランは、サクラの後ろを歩いていた。何も言わないサクラに疑問を感じた。
このあたりの地面には、ものすごく薄いが何者かの足跡が無数に散らばっている。これはおそらく魔物の足跡だと思うが。
この足跡は、ベテランの冒険者でもよく注意していないと気付かないほどの薄いものだ。
サクラは何も言ってこないが、気づいていないのか、気づいていて言っていないのか、、、この程度に気づかないようではSランク冒険者などとは名乗っていられないか。となると試しているのか?だがサクラの向かっている方向は間違いなく足跡をたどっている。とりあえずは様子見だな。
二人は周囲に注意を払いながら森の中を進んだ。
前方を歩いていたサクラが立ち止まった。口元に手を当て静かにというジェスチャーをするとともにアランを手招きした。
「アラン君あそこを見て。」
サクラが指さした方向に目を向けると、そこには数匹のゴブリンがいた。
またゴブリンか。
しかしおかしいな、こんな奥でゴブリンが生きていけるとは到底思えないが、、、
「こんな奥にゴブリンがいるなんておかしいと思わないかしら、それにずっと続いていた大量の足跡。これはなにかあると思ったほうがいいわね。」
「そうだな、俺はゴブリンの集落でもできているのだと思うぞ。」
「そうね、私もそう見ているわ。」
少し感知を広げるか
………………………………………………これは、
「どうしたのアラン君?」
「ああ、気になっていつも展開している感知を広げてみたんだ。」
「ほんとに!?この森は魔素が濃くて感知をすることが困難といわれているのに、、、それでどうだったの?」
そうなのか、この程度の魔素で魔素が濃い?ここは突っ込まないほうがよさそうだな。
「ああ、ちょっと離れたところに大量の反応を確認した。数はおよそ300。中にはただのゴブリンとは違う反応があった。おそらく上位種だろう。そして一つひときわ大きい反応、こいつが王とみて間違いないだろうな。」
「さ、さんびゃく!?凄い規模ね、この規模はまずいわね。街が滅びるレベルよ。すぐに戻ってギルドに報告しましょう。」
「そうなのか?300程度なら大したことないと思うが、、、」
「私たちSランク冒険者でも300のゴブリンの集落ができていたら、かなりの緊急事態と思うのに、、、、それを大したことないって、、ま、いいわとにかく戻ってギルドに報告よ。」
「ああ、わかった。急いだほうがいいんだな?」
「ええ、早ければ早いほどいいわ。幸いこの森は人が入りにくい森だから、人間は捕まってないと思うわ。」
「ふむ、しかたない。サクラ俺につかまれ。とぶぞ。」
「と、とぶ!?ちょ、ちょっとどうゆう、ってきゃああ」
「よし、森を抜けたぞ。街へ向かおう。」
よ、よしじゃないわよ。自分がどれほどのことをしたのかわかっていないのかしら。
本当に、いったい何者なのかしら。
アラン君の正体も気になるところだけど、今は報告が先ね。
「そうね、街へ急ぎましょう。」
アランとサクラは急いで街へと向かった。
「そんなに急いでどうしたんだ?何かあったのか?」
門番のおっさんが話しかけてきた。
「ええ、緊急の事態です。通らせてもらいますね。」
サクラはSランクの冒険者証を見せて言った。
俺たちは冒険者ギルドに駆け込んだ。
「マスターはいるかしら?急ぎで伝えたいことがあるのだけど?」
「は、はい、ただいま伝えてきます。」
サクラがそういったことによりギルド全体が騒がしくなった。
セシルが俺たちを呼びに来た。
「サクラさん、アランさん、こちらへきてください。」
セシルの案内でギルドマスター室に案内された。
コンコン
「マスター、サクラさんとアランさんをお連れしました。」
「はいっていいぞ。」
「失礼します。」
室内は簡素な作りになっていて、アレックスの机にはたくさんの書類が積み重なっていた。
「おう、わるいな。適当に座ってくれ。急ぎらしいが、いったい何があった?」
俺とサクラは近くにあったソファーに腰を掛け、森で見たことをアレックスに話した。
「な、なに?300の集落だと!?それは違いないのか、ほんとうだとしたら早急に手を打たないとまずいことになるな。」
「ええ、だから、急いで戻ってきたのよ。」
「ああ、よくやってくれた。しかし森の奥まで行ったにしては、よくこんなに早く戻ってこれたな。」
「そこは秘密よ。」
「ああ、別に詮索するつもりはない。とりあえず報告ありがとう。明日までには案をまとめる。討伐するつもりだが二人は参加するということで構わないか?」
「ええ、私はかまわないわ。」
「ああ、俺も問題ない。たかが300のゴブリンだ。相手にならん。」
「ははは、頼もしい限りだな。わかった、じゃあ明日にまた頼むぞ。」
俺とサクラはマスター室をあとにした。
アレックスは考えていた。
場所は眠りの森、この時点で参加できる冒険者は限られてくる。とりあえず低ランクの冒険者は森から出てきてしまった魔物の処理を頼めばいいだろう。問題は集落殲滅の戦力だ。
眠りの森の奥の領域まで行ける冒険者なんて、この街には数えるほどしかいないぞ。アランは余裕といっていたが上位種だけならまだしも、王種までいるとなると、殲滅難易度は跳ね上がる。
だがSランクのサクラと今だ実力の底が見えないアランがいれば、Aランク全員と二人で殲滅は行けるか。Bランクの中でも上位にいる奴らも参加してくれればいいが、、、
とにかく全冒険者に通達だな。
「セシル、全冒険者に通達を出せ。緊急事態だ。」
「はい、わかりました。」
翌日、冒険者ギルドにはローズマリスにいる冒険者のほとんどが集結していた。
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