悲しき再会
翌朝。
「エイミー」のほうが先に起きて、水筒に入った水を飲んでいました。
私も起きだし、辺りを見回します。
「何もない」ことを確認し、北西へ歩いていきます。
祠から北西へ歩いていると、心地いい風が吹き抜けます。
気温も暑くなく、辺りの緑も生えていて、絶好の移動日和でした。
その時。
連れていた猿が
「キーッ、キーッ」
と鳴きだします。
私は最初「腹が減っているのかな」と思っていました。
ところが「エイミー」が
「あそこにモンスターがいる」
と指摘しました。
確かに、何か土煙をあげて、こちらに向かっていきます。
私は
「何が起きたんだ」
と、つぶやきます。
その間も「謎の土煙」との距離がどんどん近づいてきます。
私と「エイミー」は、臨戦状態を取ります。
そして土煙が目の前行きました。
モンスターです。
それは土煙の中から攻撃しようとしていました。
私は
「土煙か…なら弱点はずばり「水属性」だ!」
と読み切り、剣に「水属性の魔法」をかけて、それを振り上げました。
その瞬間。
敵はうなり声をあげながら倒れこみます。
私は
「ハァ…ハァ…」
と息を荒げてそして
「勝ったー!」
と一言叫びました。
「出来たよ…出来たよ…」
「これもトライブが「たとえ困難な状況下でも、抜けられる道がある。だから戦うのじゃない?」と教えてくれたからだよ…」
と、さらに興奮ぎみに叫びます。
これに気をよくした私は
「見たかエイミー、これが私の力だ」
と自慢げに言います。
一方の「エイミー」は、言葉も出ないほどあきれていました。
「エイミー」は一言
「大丈夫?」
と聞いてきます。
私は冷静になり、自分を振り返って「恥ずかしい思い」でいっぱいでした。
私は気を取り直して
「行こうか」
と「エイミー」に言います。
「エイミー」は不思議な顔をしながらついていきます。
歩くことしばし数時間。
また別の街が見えてきました。
祠のナチュラルクリスタルの光がさす方向と一致しています。
私たち2人と1匹は街の中へ入ろうと門へ向かいます。
門の前にはなんと「グルガン」がいるではありませんか!。
私は
「久しぶりだね。グルガン」
と声を掛けます。
しかし「グルガン」は、一言もしゃべりません。
大きな体で威圧してきます。
私は
「どうしたんだグルガン?ほら、私だよ。アックスだよ」
と問いかけても
「……」
と無言のままです。
こういう展開になったとき、私はどうやって切り抜けるか、一生懸命になって思い出します。
そして、ふと気が付きます。
「まさかグルガン、記憶喪失になっているんじゃないか?」
その読みは当たりました。
「グルガン」は私に向かってきて、胸ぐらをつかみそうになります。
その時
「やめて、グルガン」
と「エイミー」が割って入ります。
しかし「グルガン」はいとも簡単に「エイミー」を突き放します。
倒れた「エイミー」を見て私が
「何をする?」
と言って飛び掛かります。
しかし「グルガン」は私を軽くあしらいます。
私は
「しまったな…」
とつぶやき、この場合の対処法を思い出そう…とします。
そして、突然ひらめいたのが「過去を思い出す魔法の飴」を食べさせて思い出してもらう方法でした。
私は「魔法の飴」を見つけ出し、「グルガン」の口に入れます。
「グルガン」は
「……」
と黙っていましたが、突然
「ハッ」
と言った後
「お前は確か……アックス?」
と言い、私の顔を見つめます。
「グルガン」の記憶が戻ってきました。
彼は
「もしかして……アックス?」
と、私の顔を見つめます。
「エイミー」も
「私が誰かわかる?」
と「グルガン」に問いかけます。
「グルガン」は
「船がモンスターに襲われてから、ここで門番をするまで、よくは覚えていないんだ」
と話します。
私は
「デルフェスはどこに?」
と「グルガン」に問いかけますが彼は
「どうしても思い出せない…… !」
と、何かを思い出しそうになります。
「グルガン」は
「思い出したぞ!デルフェスの弓が折れたんだ」
と言います。
私は
「それで、弓の折れたデルフェスはどうなったんだ?」
と問い返します。
「グルガン」は
「しばらく一緒にいたけど、持ち金が流されて新しい弓を買うことができなかったんだ。それでこの街の武器屋に弓を借りてモンスターハンターで弓の金を稼ぐために狩りをしているんだ」
私はそれを聞いて驚きました。そして同時に
「私が一緒なら(ゲームに課金して)弓を買ってあげっれたのに」
と言いました。
私は
「デルフェスと会いたいな」
と言います。
「グルガン」は
「まだ帰ってこないよ彼は」
と言いました。
私が
「街の中に入れるかな」
と「グルガン」に聞きます。
彼は
「もうちょっと待って」
と言います。
私が理由を尋ねると「グルガン」が
「今の俺には決定権がないんだ。ボスの言うことを聞かないと痛い目に合う」
と答えます。
辺りが暗くなり始めたその時「デルフェス」が帰ってきました。
「デルフェス」は私たちの姿を見つけると
「アックス、エイミー、久しぶりだな。生きていたのか」
と親しげに話します。
そこへ「グルガン」が割って入ります。
「早く獲物を持って、魔王様に献上しないと」
といい、捕まえたモンスターを持って街の中に入ります。
その時私が
「一緒に入っていいですか」
と聞きます。
「グルガン」から帰ってきた言葉は
「さっきの話を聞いてないのか」
と、冷たくあしらいます。
それを聞いてた「デルフェス」は
「入れるかどうかボスに聞いてみるよ。それまで待って」
と答え、門の中に入っていきます。
そして数分後。
「デルフェス」が
「入っていいよ」
と言ってきました。
私たちは門をくぐります。
街の中へ入ると、そこにはどこかで見たような景色が広がります。
そう、そこは「最初の街」と瓜二つの景色でした。
……
おびえる住人を横目に、私たちは「ボス」に会いに歩いていきます。
祭壇の前につきました。
すると「エイミー」がおびえだします。
私はその様子に気づき
「何を怯えているんだ?エイミー」
と話します。
「エイミー」は
「私ね、この人知ってる。(最初の)私の街を襲った人だ」
と、弱弱しく話します。
私はしげしげと「ボス」に目をやります。
そして、あることに気づきます。
「こいつ……魔王傘下の雇われ人だ」
と。
そしてさらに
「こいつらは確か……ナチュラルクリスタルを破壊するために世界に散らばった「人間の魂」を魔王にうっぱらった人たちだ」
私の思いが読み取れたのか「ボス」は
「お前は「ナチュラルクリスタル」の洗礼を受けてるな……気に食わん」
と、ドスの効いた低音で話しかけます。
そこで「デルフェス」が
「彼は仲間なんだ。許してやってくれないか」
と、嘆願します。
「ボス」はしばらく考えた後、彼に
「ミッションをクリアしたらここにいる資格を与えよう」
と言いました。
私は
「何のミッションなんですか?」
と聞きます。
するとボスは
「いいから聞け。簡単なことだ」
と言い返します。
そしてボスは
「弓使いと一緒に闘技場の結界を外してくるんだ」
と答えます。
私は
「まさか……あの街で結界が外れたのはデルフェスの仕業なのか?」
と口走ります。
「デルフェス」は
「そう。私が結界を外したんだ。ごめん」
と謝ります。
そして彼は
「生きるために必要だったんだ。グルガンはモンスターに襲われて記憶喪失になって、何とかこの街にたどり着いたときに「ボスの言うことを聞かないと殺す」と言われたんだ。分ってくれ」
と言いました。
私は言葉を失いました。
「まさか、デルフェスがあんなことをするなんて……」
そして
「自分が生き残るために、他者を傷つけてよいのか?」
とも言いました。
「ボス」は
「嫌ならここのモンスターと戦え」
と言ってきます。
私は意を決して「ボス」の言うことを断ろう……と思っていました。
「エイミー」が、心配するように私を見つめます。
その様子を見ていたボスは
「お前は召喚士か?」
と言ってきました。
「エイミー」は小さく頷きます。
「ボス」は
「召喚士か……気に食わんな」
と、つぶやきます。
そして「ボス」は
「召喚士は預かる。お前は弓使いと戦うのだ」
と言ってきました。
私は
「仲間だから戦えません」
と言うと「ボス」が
「じゃあこの召喚士の命はないぞ」
と言ってきました。
私は仕方なしに「デルフェス」と一緒に闘技場に入ります。
すると結界の力で出口がふさがれました。
私は
「何とかこのの事態を打開できないか」
と一生懸命思い出そうとします。
その間にも「デルフェス」が
「ご……ごめん。仲間なのに」
と言います。
……
しばらく膠着状態が続きます。
それに業を煮やした「ボス」が
「嫌ならモンスターを入れる」
と、脅迫してきます。
私は
「デルフェスとは戦えない。モンスターと戦った後、勝利したらここから出さしてくれないか?」
と嘆願します。
しかし「ボス」は
「あくまでデルフェスと戦うんだ」
と言って、こちらの嘆願を聞き入れてくれません。
「一体どうすれば……」
と悩みます。
そうしてるうちに上からモンスターが下りてきました。
クイーンドラゴンです。
対戦相手を誘惑することができる難敵です。
「デルフェス」は炎属性の矢をドラゴンに放ちます。
私も剣を抜き、ドラゴンへ向かっていきます。
その時です。
「デルフェスの射った矢が私に刺さりました。
炎属性なので撃たれたところから煙が立ちます。
「なぜ撃ったんだ?デルフェス」
と、私は思わず叫んでしまいました。
「デルフェス」は
「こればかりは仕方がないんだ」
しか言いませんでした。
本心では一緒に戦いたいのに「グルガン」を人質に取られている以上「ボス」にはむかう事なんてできませんでした。
それは私も同じことで、人質に取られた「エイミー」を何とか助けたい……との思い出いっぱいでした。
そうこうしてるうちに、「ドラゴン」は容赦なく襲い掛かります。
「まずはドラゴンを倒す」
2人の考えが合いました。
そして「ドラゴン」に集中攻撃をあびせます。
しかし相手は誘惑ができる難敵です。
事もあろうに私が誘惑されてしまいました。
「ボス」の思惑通り、私は「デルフェス」に攻撃を仕掛けます。
「デルフェス」も自分を守るため、私に弓を打ってきます。
矢が私に当たりました。
当たった矢の痛さで、私は正気に戻ることができました。
そして「ドラゴン」に向かってまた剣を抜き直します。
しばらく戦うと、「ドラゴン」が倒れました。
これで闘技場の中は私と「デルフェス」だけになりました。
「デルフェス」は半分泣きながら弓を打ち続けてきます。
私は
「矢が当たる。もうだめか」
と、覚悟を決めました。
その時、何者かが結界を破って闘技場の中に入っていきました。
その正体は記憶を思い出す魔法の飴を食べた「グルガン」の姿でした。
「グルガン」が盾となり私をかばってくれたのです。
「デルフェス」は困惑します。
彼は
「なぜボスに反旗を翻すことをしたんだ!?」
と。
「グルガン」は無言でした。
その姿を見て「デルフェス」が攻撃するのをやめました。
そして「デルフェス」が
「ボスに逆らったら生きてはいけないんだぞ。しかしそれで仲間を傷つけたら俺の良心が失われてしまう」
と、一人悩んでいました。
しびれを切らした「ボス」は、人質の「エイミー」を締め上げます。
「エイミー¡」
私は叫びながら闘技場を出よう……としました。
その時です。
「エイミー」が召喚獣を出すために呪文を唱え始めました。
そして召喚獣「リヴァイアサン」が出てきました。
この召喚獣は「水属性」の召喚獣で、大津波を起こして敵にダメージを与えます。
「ぐおお……俺な水が嫌いなんだ!」
と「ボス」が叫び、捕まえていた「エイミー」を放してしまいます。
「ボス」がひるみました。
私はその隙間をついて「ボス」に攻撃を仕掛けました。
しかし「デルフェス」が私に攻撃を仕掛けます。
私は
「なぜなんだデルフェス。「ボス」を倒せば平和が戻るのに」
と思わず口走ります。
ここにきて、明らかに「デルフェス」の様子がおかしいことにやっと気づきました。
そう、「デルフェス」と「グルガン」はここに来た時「ボス」に洗脳されてしまったのです。