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第8話 女の戦い? 男の煩悩……

魔導士の洞窟っていうよりもラブホ???

乗り込んだ先にいた魔導士が……

 魔導士との対決。


 きっと、壮絶な魔法対決になるんだろう。

 どんな魔法を使えばいいのか?


 そんなことを考えていると、クラリスが声を上げた。


「スクリプトさま、あっ、あれを……」


 岩山を削り出したような洞窟に点々としている燭台がチカチカチカチカ……。

 

 俺たちのところから、どんどんと奥へと誘うかのように光だした。


 なんかラブホのLEDみたいだな。


「しょうがない、待ちくたびれてるみたいだ。行ってみよう」


「は、はい……」


 クラリスは心なし暗い表情をしている。不安なのだろう、俺の二の腕をギュッと掴んでいる。

 ワワワ、そんな掴まれたら豊満なバストが腕に……。またエラーだしちゃうぞ……。



 その洞窟は単調なものだった。複雑なダンジョンを想定していた俺はちょっと拍子抜けした。


 まっすぐと続く洞窟を淡々と歩いていく。


「スクリプトさま、ひょっとしたら、罠が仕掛けらているのでは……?」


「うん、俺もそれをちょっと考えてた。そんな力のある魔導士がいるのに、こんな単調な道なはずないよな、ちょっと待ってて」


 罠、トラップを探す魔法、っと。トラップってことは、通常の「正しい」道とは違うところを探せばいんだよね?


 ってことは、俺は右手を洞窟の奥に向けた。

 そして、頭の中を集中させる。


 電流が脳内に走るのをちょっとだけ待つ。


 きた! 


 そして、こう頭の中で考え、いかにも魔法使いっぽく叫んだ。


 クラリスの前なんだ、恰好くらいつかせてもらうよ。


「トラップサーチ(デバッガーきどう)!」


 ……ない。罠なんてなかった。折角、それっぽくやってみたのになぁ。


 いかにも、魔力使いました、みたいな風を装って首を右肩へ預け、ため息なんてついてみた。


「クラリス、大丈夫だよ。この先は安全だ。それにもうちょっと行った先に扉がある」


 クラリスは目を輝かせて、俺を見ている。フフフ、作戦成功。


「さすがですわ、スクリプトさま!」

「さ、もうちょっとだ」




 そこへ、洞窟内を響き渡る声が聞こえた。渋いハスキーな声で。



「ハハハハハ、その必要はない! 私自ら出向いて差し上げよう」



 そう声がしたかと思うと、目の前の景色が一瞬にしてグニャリと歪んだ。


 そして、その歪んだ空間から姿を現したのは、頭から足の下まで古ぼけたローブを纏った人の影だった。


 やがてその影は姿をはっきりと露わにした。

 

 ダブダブのローブ姿のそれは、身長が普通の男並みってところだ。人間のね。


「折角の御越しだ、私が部屋へ案内しよう」


 全身ローブの人は、俺たちに背を向け足音も立てずに歩いて行く。

 

 俺が後をついて歩こうとすると、クラリスが耳打ちしてきた。


「ご用心ください。スクリプトさま」


「大丈夫だよ、俺がいるから、ね」


 ホッとした顔を見せるクラリス。

 

 でも、内心俺はオドオドしていた。


 ついてっちゃって大丈夫なんだよね? 怖いこと突然しませんよね?


 後をついていくと、すぐに扉の前についた。その人影が扉を開く。

 

 その扉の奥は結構拓けている。

 

 今までの岩山の回廊との違いは、天井や道の脇がゴツゴツとせず、綺麗に磨いたかのように、俺たちの姿が反射するかのようだ。


 さすが、魔導士。なにか魔法を使ったな?


「さ、どうぞ。旅のお方々。喉が渇いたでしょう。この飲み物でもお飲みくだされ」


 これが、ノームの若者が飲んでしまって、魔導士の言いなりになるって飲み物か。


「じゃ、頂戴するよ」

「えっ、スクリプトさま! それは……」


 大丈夫だよ、とクラリスにウインクしてみせる。くぅ、こういうのいっぺんやってみたかったんだ。


 

 頭の中で、脳内に小さな電流が走るのを半瞬待つ。そして、飲み物に向かって、唱える。


 そして、盃の飲み物を一気に飲み干す。


「ふぅ、美味しい! 喉が渇いていたんだ、ありがとう」


「フフフフ、飲み干したな、お坊ちゃん」


 お坊ちゃん? あ、そうか、俺今見た目がリアル中二だったんだっけ。


「さぁ、私の虜とおなり!」


 ローブの人影が、バサっと身を覆っていた物を取り払った。


「え?! 女?!」


 クラリスが素っ頓狂な声をあげる。俺も唖然とした。

 だって、さっきまで響いていた声の主って感じじゃないぞ。


 しかも、その女の身に纏っているものに、俺はくぎ付けになった。


 ボンテージっていうんですか? 

 

 黒革でできた、紐でこそないものの、隠すところしか隠してないような服装。


「露出狂よ!」


 クラリスがまた変なことを口走る。


「何よ?! この素敵な衣装になにか文句あるの?!」


 魔導士の女……見た目ではとてもそうは思えないけど、がクラリスに食って掛かった。


 クラリスがキッと睨み返す。綺麗な顔をしているだけに、迫力がある。

 

 ……ってか、ちょっと怖いよ、クラリスちゃん……。


「えーっと、お二方、ちょっと落ち着いて……」


 俺が口を開くと、魔導士の女が驚いたように俺を見る。

 お、こっちもクラリスに負けないくらい美人じゃないですか。ちょっとキツメの顔立ちも綺麗なもんだ。


「お、お前、私の調合した薬に黒魔術を施した薬が効かない……?! この坊やはなにもんなんだい?!」


「おねーさんこそ、何者なの? こんな所で一体なにがしたいのさ。ノームの村を脅かしたりして、迷惑千万だよ」


 チッ、と舌打ちしたかと思うと俺に向かって声をかけてきた。甘い声を出して。


「ねぇ、坊や、私の目をみてご覧」


 おっと、その手は食わないよ。でも、言いなりに従ってみましょう。

 俺は女魔導士の目をジーっと見つめる。


魅了チャーム」と女魔導士は口ずさんだ。


 やっぱりね。でも、俺は先を読んでいたんだ。


「あれ? あ、ああれ? 坊や……かわいい坊や」


 女魔導士はそう呟くと、俺に抱きついてきた。


「なんて、魅力的な男なんだろう。あの人とは全く違うわぁ。ス・テ・キ」


 それを見ていた、クラリスの目が光り、顔を真っ赤にして叫ぶ。


「ちょ、ちょっと、スクリプトさまになにしてんのよ?!」


「スクリプトっていうのかい、いいお名前だこと……。あぁ、身体がとろけちゃいそう……」


 女魔導士が口を近づけてきた。それを全力ではがしに来るクラリス。


 どうも、この女魔導士の黒魔法(なのかな? 自分でそういってたし)のチャームはよほどの力をもっているようだ。


 俺は、女魔導士が目を合わせるように言ったとき、目にミラーリングの魔法をかけた。


 女魔導士からすると、俺がチャームの魔法をかけたような状態になったのだろう、それにしてもかかっていたら恐ろしいことになっていた……俺が、というよりもクラリスが。


「いい加減にしなさいよ、あんた! スクリプトさまに馴れ馴れしいわよ! それになによ、その、は、はははハシタナイ恰好!」


「やれやれ、年増のエルフのお姉さんがヒステリーだよ、怖いねぇ、スクリプトさまぁ。それになんだい、その野暮ったいかっこ……」


 女魔導士の目が光、2,3度瞬きをしたかと思うと、クラリスの胸の辺りを探るように見つめている。


「ちょ、ちょっとチチが大きいからって嫌らしんだよ! このスケベエルフめ!」

「ナ、ナナナ何よ?! あんたこそ、なによ、つ、つ、つるっつるじゃないの!!」


 あ、確かに。

 さっき女魔導士に抱きつかれたとき、クラリスの時となにか違うなーとは思ったんだ。


「えぇー、ご静粛に、お二人さま……」


『スクリプトさまは黙ってて!』


 見事なハモリを聞かせていただきました。


 俺は、いつまでこうして女の戦いを見てなきゃならないんだ?!

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