第7話 エラー?! バストの誘惑……俺ミスる
スケベな俺は魔法でエラーをしてしまいました……
ようやく、魔導士の操るグリュフォンをやっつけた俺たち。
こんどは、乗り込みます。魔導士のところへ!
「魔導士がグリュフォンを操っているっていったよね?」
さっきの戦闘の興奮冷めやらぬクラリスから、身体を離しながら聞いてみた。
本当はもっと、あの身体の感触を味わっていたかったけど。
「えぇ、スクリプトさま。ノームの長老さまからはそう聞いております。長老さまが生まれる前から集落の周辺をグリュフォンが飛び回りはじめたと。それに……」
「それに?」
クラリスの話が止まる。なかなか口を開かないので、促してみた。
「魔導士がいるってどうしてわかったの?」
「えぇ……長老さまが、集落の若者を集めてグリュフォン退治に命じました。300年前のことです……」
300年前……。ファンタジー物の小説を読んだことがあるから、もう驚かないぞ。
ノームの寿命ってだいたい400年くらいだったかな?
「それで? みんな帰ってこなかったの?」
「いいえ、三人だけ帰ってきました。それが……」
また言いよどむクラリス。顔色が少しすぐれないように感じる。
「一人は普通でした。でも、残りの二人は、何かにとり憑かれたようにして、一人の若者を追いかけてきました。その表情は悪鬼が乗り移ったようで、顔色も悪くなっていて……。それはとても恐ろしい光景でした……」
ゴクリと俺の喉が鳴る。
クラリスの話は体験談だけあって、迫真に満ちていて、その光景を想像して恐ろしくなった。
あの温和で陽気なおじいさんみたいなノームたちが悪鬼の如く……。
「一人から話を聞きました。魔導士風の者が一人いたと。そして、振舞われた酒を二人は口にしてしまい、魔導士の言いつけを守るようになった、と」
酒に何かを混ぜていた、魔導士が調合した毒になるようなものが入っていたのかな。
「無事帰りついた一人から聞いた話です。二人は最初陽気に踊りだしたそうです。魔導士が命じるままに。魔導士はどんどん過激な命令をはじめたそうです。そして、残る、警戒していた一人を殺すように命じたそうです」
「そして、村まで追いかけ、追いかけられてたどり着いた、と」
「さようです」
クラリスの瞳に光るものが溢れだしてきた。悲しい出来事だったんだろうな。
「などほど、それでグリュフォンがその魔導士に操られている、と」
「ええ、長老さまはそう断定しました。そして、古より伝わるお話と魔導書をもとに、助けてくださるという大魔法使いさまを待ち続けました」
それが俺ってことですか。なるほど、あの歓待を受けた理由もわかるってものだ。
今にも美しい顔が涙であふれる前に俺は声をかけた。
「彼を知り己を知れば百戦殆うからず、ってね」
「なんですの? それは」
「俺の生まれ故郷の戦い方の指南書に書かれていた言葉さ。クラリスありがとう」
「えっ、私なにかしましたっけ……?」」
「君の話で敵の手の内がおおよそ分かったんだよ、だから、この戦い勝てるって!」
俯いていた美しい顔が花が咲いたようにパーッと明るくなる。やっぱり君の顔はそうやって輝いているほうがかわいいよ、って言いたい気分だけど、俺にはそんな度胸ないっす。
「よし、じゃ、行きますか! その魔導士に会いに」
「はい!」
幸いさっきまで旋回していたグリュフォンは俺の放った炎の塊に恐れをなしたのか、今は見当たらない。
「この先の、山の中腹の洞窟に魔導士はいる、と帰り着いた者から聞いております。あ、きっとあの山ですわ」
辺りには小高い丘が幾つかあったけど、1つだけ他の丘よりも高い、山と呼べる隆起した岩山がそびえて居る。
「じゃ、行きますか。クラリスあそこ迄歩けるかい?」
すると、クラリスは不思議そうに俺を覗き込む。
「大魔法使いさま、移動魔法は使わないのですか? あの山を登り終えたころには夜になってしまいますわ」
ん? そうか、俺大魔法使いだった。そういう事にされているんだっけ。でも、手からファイヤーボールの出し方のコツは掴めたけど……。
その時、脳裏をプログラムのコードが走り回る。あとは実行するだけの状態だな、ん?
魔法ってプログラムに似てるな……。
「クラリス、俺のそばによって。今から魔導士のいる山までジャンプするよ」
「まぁ、さすが大魔法使いさま!」
そういうと、クラリスは俺に抱きつく。
「いや、そこまで近づかなくても」
「いいえ、移動魔法の途中ではぐれてはいけませんわ。私は何もできない女ですもの」
い、いかん。頭のなかのプログラムソースコードが己の欲望でちょっとぐちゃっとなる!
これじゃ、エラーが……。
そう思うのも束の間、俺の脳内で電流のようなものが走り、あたりを緑色の淡い光が包み込む。
むむむ、煩悩炸裂してしまう。特に頭にくっつく豊かなバストに……。
「あてててて、クラリス大丈夫?」
「ええ、私は。スクリプトさま、流石ですわ。山の中の魔導士の洞窟までジャンプなさるなんて!」
そう言われて、みれば辺りは暗闇の中に点々と簡単な装飾の施された燭台にろうそくのような光がぼうっと瞬いている。
これは、恐らくクラリスの言う通り、魔導士の住む洞窟かなにかなんだろう。
でも、俺は山の中腹が目に入ったからそこまで瞬間移動できるよう狙いを定めたんだけど……。
やっぱり、煩悩パワーでエラーがでたのかな?
それにしても、運がいい。エラーがきっかけでとんでもないところに飛んじゃわなくって。
**石の中にいる**
……なんてのはごめんこうむりたいね
「まぁ、スクリプトさま、燭台をご覧ください!」
「ん? あっ……」
燭台はまるで道案内するかのように、俺たちの前に次々と瞬きだした。
魔導士には俺たちがここにいることが見えている!?
恐れたのか、クラリスが俺の腕にしがみついてくる。少し震えているようだ。
「安心しなよ。クラリス。ここからは案内してくれるって、さ」
「えぇ。そのようですわね。それにスクリプトさまがいらっしゃいますもの、ね」
「よし、行こうか!」
「はい!」
本当は、ビビってるのはクラリスよりも俺なんですけど。
魔導士なんかとどうやって戦えばいいんだ?!