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Double bind  作者: 佐々木研
危篤から死ぬまで
16/148

R.I.P

 人生でこれほど水を美味しく感じたことはない。

 冷静さが取り戻されていくのを感じる。

 貧すれば鈍するという言葉があるが、どうやら本当らしい。

 …使い方、間違っている気がする。

 やはり寝不足だ。

 迅速に動こう。



 バックを開けると籠っていた臭いと共に彼女の寝顔があらわれた。

 …相変わらず整った顔立ち。

 ガムテープを剥がし、汚れたタオルを浴槽に投げ捨てる。

 パジャマ姿の彼女が横たわった。

 …。

 そういえばなんでパジャマ姿なんだろう?

 学校、休んでたのだろうか?

 着ている服を脱がし、下着姿にする。

 とても華奢な彼女の肌は泥やら煤やらで汚れているが色白で、とても健康そうには見えない。

 あばらもやや浮彫になっているし、胸も小ぶりだ。

 …起きたらご飯を作ってあげよう。

 下着を脱がせ、まとめて浴槽に投げ入れる。

 …。

 洗濯は明日でいいだろう。

 彼女を抱えて風呂場に入り、壁にもたれかけさせてシャワーをかける。

 薄汚れた泥が落ちて、あらわになる青白い肌。

 …。

 今、起きてこられたら最悪だな…

 どうか安らかに眠っていてくれ。


 一通り洗い終わって綺麗になった。

 バスタオルで彼女の体を拭く。

 そういえば替えの服がないな…

 …僕のTシャツでいいか。

 このままでは目の毒だしな。

 サイズの合わないシャツを着せ、手首をタオルで縛っていたあたりで彼女は目を覚ました。

 「…ここ、どこ…?」

 薄目を開け、か弱い声でそう尋ねる。

 「僕の部屋だ。今、足を縛るから待ってて」

 彼女は改めて自分の姿を確認した途端、顔を真っ赤にして暴れだした。

 「なんで裸なのよ!ってか足持たないでっ!見えるでしょ!」

 「Tシャツ来てるでしょ。それに暴れると余計に見えるよ。大人しくして」

 彼女は急いで前に手をやると、足を閉じ、シャツで必死に局部を隠した。

 「…よし、できた」

 彼女を抱きかかえベットへ向かう。

 …。

 彼女は何か叫んでいたが聞き取れない。

 …。

 正直、我慢の限界だ。

 彼女をベットに寝かせ、僕はその上を覆いかぶさった。

 「えっ!?なになに?」

 「…静かに」

 もう、いいだろう。

 …。

 …。

 焦る彼女をしり目に、ゆっくりと瞼を下した。

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