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おじゃま虫
榊原君はたまに非常口の入り口に来る。
教室ではいつも笑顔を振りまいている彼が、ここに来るときはいつも何かを思い詰めている。
「…またいたのか」
私と目が合うと、彼は決まってそう言った。
ここは私の特等席なのに…
「…何よ」
人気者がここに何の用?
「別に。…少し疲れただけだ」
そう言って何の断りもなく私の隣に座る。
「邪魔なんだけど…」
「俺からしたらお前が邪魔だ」
…後から来たくせに。
「お友達が待ってるわよ。早く戻ったら?」
「あー。お前、友達いねーもんな」
関係ないでしょ…
「うるさいわね。さっさと教室に戻りなさいよ。そして犬みたいに愛想振りまいてきたら?」
「それが面倒になったからここで休憩してんだろ。いいよなー。そんな相手がいない奴はよー」
…。
「良くないわよ。勝手なこと言わないで…」
人の気も知らないで…
「…こっちのセリフだ。分からないくせに勝手なこと言うな」
榊原君はそう言って、その後も無言で座り続けた。