表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Double bind  作者: 佐々木研
灰色のオセロー
138/148

今日役立つ眠たい眠たい理想で

 なぎは『具合が悪い』と言い出して布団を被ってしまった。

 確かに顔色は真っ青だったが、日頃から血色がいい顔色でもないからな…

 しばらくは静かだった寝室も、30分も経つと小さい寝息が聞こえ始めた。

 …。

 やはり、昨夜は寝ていなかったのか…

 携帯を開く。

 『06:08』

 あと一時間もすれば朝食の時間だ。


 仲居の入室で机の上には続々と朝食が運ばれ始めた。

 目の前には2人分の食事が並ぶ。

 なぎを起こした方がいいのだろうか…

 妙齢の仲居が業務的に頭を下げて退室した。

 …。

 一人で食べるか。

 今日は忙しくなるのだから…


 食事を終えて身支度を始める。

 寝室は相変わらず静かなままだった。

 …まだ、3時間位は眠るだろう。

 眠りが浅い子だが、あの調子ならまだ目覚めない。

 なるべく見つからないように迅速に動かなければ…


 「失礼しまぁ~す」

 返事も待たずに若い仲居が入ってきた。

 先ほどの仲居と打って変わって不調法な若い仲居…

 年齢はなぎと同じなんだろう。

 耳が出るほどの短髪で、背も僕より少し低い程度。

 この子が…

 「大分残っちゃってますけどぉ、下げていいですかぁ?」

 彼女が襷をかけ直しながら、僕と寝室を交互に見た。

 品定めをしているかのような眼差し…

 「…すみません。残して置いて頂くことは出来ますか?」

 片付けようと手を伸ばした彼女を止める。

 もしかしたらなぎが起きてくるかもしれないからな…

 「蝿帳はいちょうでも差して置いて頂けると助かります」

 「はぁい。それではアメニティ交換の時にまたお願いしま~す」

 間の抜けた声で返事する彼女は、どことなく嬉しそうに見えた。

 …。

 『今朝、なぎと話していた』仲居が僕を見詰めていた。

 腰を落として作業していた手を止めて、微笑むように顔を上げている。

 「…何か?」

 「あぁっ、ごめんなさい…」

 彼女は大袈裟に謝ると、寝室に目線を逸らして、また口を開いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ