表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Double bind  作者: 佐々木研
灰色のオセロー
134/148

そんなにアウトドア派だったのね?

 隣になぎがいなかった。

 昨日は泥酔した彼女を寝かしつけて僕も寝たはず…

 隣の毛布を触る。

 …冷たい。

 どこに行った?


 なぎは主室の隅の窓辺にあった椅子に座っていた。

 両足は椅子の前の低い机に乗せて、両膝を抱えている。

 「…おはよう」

 「…」

 机に乗っていた灰皿と煙草を手に取ってもなぎは反応を示さない。

 「死んでないよね?」

 上の空だったなぎの鼻を抓む。

 「…」

 無言で僕を見上げた。

 人でも殺しそうなほどの眼光で僕を睨んでいる。

 「どうしたの?何かあった?」

 いつもなら元気に怒るのに…

 「…さっきのをなかったことにしないでくれる?」

 転がっていたライターを投げ付けてきた。

 胸に当たって床に転がる。

 「ごめんって。そんなに怒ってるとは思わなかったんだ」

 「怒ってない」

 そう言って否定しながらも、彼女の精神が穏やかでないことは分かる。

 「…で、どうしたの?二日酔い?」

 昨日は酔いつぶれていたから、それが原因だろうか…

 「…」

 なぎはまた真剣な顔に戻った。

 膝を抱えて天井を眺めている。

 「…ねぇ」

 声が弱々しかった。

 頼りなく向けられる視線、項垂れた首。

 何かを隠していることは明白だった。

 「アンタはさ…」

 そこまで言って口を噤む。

 「ん?何?」

 催促してもなぎは言葉を続けない。

 …。

 「言い難いこと?」

 ならこれ以上は言及しないが…

 「…ごめん。やっぱり忘れて」

 誤魔化すように手を振ったなぎが勢いよく立ち上がった。

 「さっ。アンタも起きたことだし、買い物にでも行きましょう?」

 そう言ってなぎが荷物置き場に向かう。

 着替えを取り出して、襖も閉めずに着替え始めた。

 …おかしい。

 掛け時計を見上げる。

 「…まだ7時前だよ?」

 それに朝食だってまだだ。

 「…」

 返事は返ってこない。

 忙しなく準備を続けるなぎは、もうすでに下着姿だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ