そんなにアウトドア派だったのね?
隣になぎがいなかった。
昨日は泥酔した彼女を寝かしつけて僕も寝たはず…
隣の毛布を触る。
…冷たい。
どこに行った?
なぎは主室の隅の窓辺にあった椅子に座っていた。
両足は椅子の前の低い机に乗せて、両膝を抱えている。
「…おはよう」
「…」
机に乗っていた灰皿と煙草を手に取ってもなぎは反応を示さない。
「死んでないよね?」
上の空だったなぎの鼻を抓む。
「…」
無言で僕を見上げた。
人でも殺しそうなほどの眼光で僕を睨んでいる。
「どうしたの?何かあった?」
いつもなら元気に怒るのに…
「…さっきのをなかったことにしないでくれる?」
転がっていたライターを投げ付けてきた。
胸に当たって床に転がる。
「ごめんって。そんなに怒ってるとは思わなかったんだ」
「怒ってない」
そう言って否定しながらも、彼女の精神が穏やかでないことは分かる。
「…で、どうしたの?二日酔い?」
昨日は酔いつぶれていたから、それが原因だろうか…
「…」
なぎはまた真剣な顔に戻った。
膝を抱えて天井を眺めている。
「…ねぇ」
声が弱々しかった。
頼りなく向けられる視線、項垂れた首。
何かを隠していることは明白だった。
「アンタはさ…」
そこまで言って口を噤む。
「ん?何?」
催促してもなぎは言葉を続けない。
…。
「言い難いこと?」
ならこれ以上は言及しないが…
「…ごめん。やっぱり忘れて」
誤魔化すように手を振ったなぎが勢いよく立ち上がった。
「さっ。アンタも起きたことだし、買い物にでも行きましょう?」
そう言ってなぎが荷物置き場に向かう。
着替えを取り出して、襖も閉めずに着替え始めた。
…おかしい。
掛け時計を見上げる。
「…まだ7時前だよ?」
それに朝食だってまだだ。
「…」
返事は返ってこない。
忙しなく準備を続けるなぎは、もうすでに下着姿だった。