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「今日はダンジョン入り口から南風入って来たみたいだから、外界はポカポカかな?」
大木の下で、たまにポツポツと会話をするようになった。
ぼくより180年先輩。
ちょっと見た目小学生位の不思議ちゃんなダンジョンマスター。
風見鶏・バルムンク君。
名前は中二病的だけどね。
翡翠色の腰辺りの長さで、触れたら綿毛のように柔らかそうなロン毛。
べっこう飴色の瞳。
彼は、風や飛行魔物に特化した空中に浮かぶ天空都市セラフィに有る迷宮のダンジョンマスターだ。
天空に浮かぶ島は7つ有って、特にセラフィがファーブラの地上にも知られているオーストラリア位の大きさにの島だ。
地上から天空の島に行くには、飛ぶか飛べる生き物に連れて行って貰うか。
古代遺跡ダンジョンに有るワープゲートから行くしか無い。
島の周りに巨大クリスタルが浮遊し、島内部に更に巨大なエクディカルコア結晶塊が動力源として島を浮かせているらしい。
そう、浮かぶ島の大半は自然のものではなかったのだ。
エクディカルコア、ぼくら地球では馴染みが無い物質。
太古神々により魔法と共に故意に喪失させた物質だから知らなくて当然だろう。
何でも、地球のウランなどよりも少量で数百倍高エネルギー出力が出て毒素も無い。
1つ有ればそのシステム装置の寿命が尽きなければ、1000年稼働するそうな。
星間飛行とて可能エネルギーとし、武器などにしてもオリハルコンやヒヒイロカネなどにも引けを取らない万能資源らしい。
使いこなせれば、かなり便利でエコだ。
しかし、他の異世界では惑星破壊を可能にする兵器を作成可能にする科学と魔法の融合文明に繋がるとかで、禁止されるアイテムになりやすく使い勝手が難しいそうな。
地球でも使用禁止になったって事は、何か有ったのかな?
そんで、そんな物騒な巨大アイテムが作られた経緯や作成方法などはファーブラ人類の歴史からも淘汰されて、空に浮かぶ島の装置にしか片鱗が無く。
ぶっちゃけ小さな魔道具や武器に細々と発掘された超レアメタル的にのみ使用されている伝説系アイテムですよ。
因みに、魔道具のコアとなる電源的なエクディカルコアの大きさは、小さな小さな丸薬一粒大の大きさで最低100年は持つのだから人気なのも頷ける。
そんな超古代ロマンはさて置き、風見鶏君はとても風変わりだった。
挨拶しても大体こちらを見ない。
「天気のいい風が柔らかな日は、満天の星屑が散りばめられた天空に包まれて眠りたいですねぇ。」
とか、喋っても意味不明な詩人の様な風の話。
無論こちらが質問すれば、知り得ることをキチンと律儀に答えてくれるので、無視も出来ない。
でも、せめて視線を合わせて欲しい。
「誰かと視線を合わせてたら、風に飛ばされるかもしれないので…。」
一体何を言ってるんだろうこのショタっ子は。
そんな独特な世界を持つ、それが風見鶏君クオリティ。
だからだろうか、彼は関わったら一番ヤバいと思われる瞳の濁った狂気が強めな危険な男、漆黒のザンバラ髪に赤い瞳の死霊系迷宮のダンジョンマスターの怒留逗君に良く絡まれている。
まぁ、お互い意思疎通と言うか全く持って会話が噛み合って無いけどね。
先程も風の話をする風見鶏君に、
「気温上昇はゾンビ達が臭くなる、うっぜえ!」
と答えるドルズ君。
微妙に噛み合ってない。
因みにドルズ君はダンジョンマスター歴210歳位、とちょっとだけ先輩なのだそうな。
尚そのドルズ君は、360歳位のライジン・ストロング君と言う先輩ダンジョンマスターにのみ仔犬のように懐いています。
ライジン君は…完全にヤンキー、いや893にしか見えない。
カタギでは無い感じが溢れている風格の人で、体格は格闘技をして居る高校生位の屈強な長身で、針金みたいな赤銅色髪をオールバックに纏めてる。
瞳の色は金と赤。
担当するのは魔法と金属武器使用不可の迷宮、と言う完全に筋肉祭りの肉弾戦系タワー型ダンジョンマスターです。
出るモンスターが落とすのは美味しい食べ物が多いらしい。
肉かな?
肉なんだろうな?
あと宝箱には罠も多いけど回復アイテムとか強い防具も出るらしい。
あ、初見でぼくにメンチ切って来た怖いお兄さんですよ。
なので、どう見てもドルズ君は完全に舎弟ポジデスネ。
そんな感じで良く男三人でつるんで居るのを見かけます。
会話は多分成り立って無いと思うんですけどね。
ぼくからは怖くて近付きたくは無いから詳しい事は分かりません。
でもまぁ、なんだかんだとライジン君は2人の面倒を見て居るのかもしれません。
アレ?分かり辛いツンデレ?
ハ!なんか又ガン飛ばされてる!
色々怖いのでぼく帰りゅ!