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「あ〜パニマ神様からの定期伝令デス。
外の季節が春になったので、春っぽいイベントを用意して下さい。
森林植物マップの景観を春にするも良し。
宝箱に春物を用意するも良しデスかね。」
天使ローライト様が、大木下の屋根付き会議用テーブルの定位置で立ち止まると、淡々と声を上げる。
彼?いや彼女?
うん、性別不明なナマモノ、失礼。
謎生物の天使様は機械的と言うか、やる気無さげなギャル風口調です。
何で私がこんな事を、とか。
コイツラウザっ!
面倒過ぎ!
たるぅ、ネイルはげちゃう。
とかブツブツ小声で呟いているのをたまに聞きますが、気付かないフリをするのも淑女のマナーデスよね?
そのうち堕天しそうな気がする。
いや、だからこそ左遷的なここの担当なのか?
多分、気付か無いんだろうなこの駄天使。
と言うちょっとバカにした様な思考の時は、直ぐ気付かれる。
そして、恒例のゴミを見る目で見られると言う。
余談だが、この青々と茂りキラキラと妖精が舞う大きくファンシーな大木。
気になってローライト様に一度聞いて見たら。
「世界樹ダヨ。
正確には別の異世界で枯れかけた、世界樹の枝から作られた子供。
イグラシルチルドレン。
異世界ゴトに一つは必ずある類のモノさ。
精霊の住処・結界の要・世界の生命の均衡を保つ役割を持ってるの。
コレが有るから疑似空間が保てるの。
ここは一種の小さな異世界ダネ。
繁殖した世界樹の子供達は、盆栽風にしてファーブラ各地に適合者に育成させてるノサ。
緑豊かな大地が枯れたら世界が滅ぶからね。」
いつものカタコトが嘘の様に饒舌で、大木のに手を触れ幸せそうに眺めている。
余程世界樹の子供達と言う大木が好きなのだろう。
まぁ確かに、見上げるとキラキラとして和むし、ホンワカと心が落ち着く気がする。
「貴方方は罪が有るから暫くは無理だけど、気に入られたら世界樹の精霊を見られるカモね?
…まぁ、あの方は人に優しいから、最低でも一度位は顔見せするでしょうけど。」
後半は小声でブツブツ言っていて良く聞こえなかった。
そんな感じのローライト様だが、たまに変な伝令を寄越すのだ。
「もふもふなモンスター週間を用意せよ。」
「宝箱増加週間を用意せよ。」
「アスレチックのような迷宮マップ週間にせよ。」
この辺りは、どうもパニマ様の指示らしい。
多分日本のバラエティ番組でも見たのかな?
つーか、自由な神様だな。
「迷宮の形を完全改装したい者は、それっぽい疑似ダンジョンコアを中期ダンジョン最下層に用意し。
冒険者が迷宮を完全クリアしたと誤魔化してから作り直せ。
との事デス。」
「だから初期ダンジョンを死ぬダンジョンにするのは禁則事項デスよ?」
「迷宮で死亡した冒険者の魂は、迷宮に吸われてもちゃんと転生するヨ。」
「あ〜、作れても宝箱に異世界の近代兵器入れるのは禁止で。
文明が追い付いてない物や禁忌の物は入れても迷宮にボッシュート後消滅されるんで、ヨロシク。」
「ダンジョンマスター期間が終了後、デスか?
任務終了時、幾つかの選択肢が有ります。
ダンジョンから出て生きられます。
その場合、疑似身分や一般知識。
それなりの家や支度金も用意されます。
その後の寿命は人間基準です。
もう一つは一度消滅し、新たに転生です。
消滅する時は、痛みも苦しみも無くサクッと簡単にです。
最後はパニマ様の使徒天使となり、パニマ様の手伝いをするデスかね?
ダンジョンマスター消滅する直前に、新たなダンジョンマスターが用意されます。
新たなダンジョンマスターは、貴方のダンジョンを継続して対応するか新たに作成するコトを選択する事になります。
既に貴方方に作られた迷宮?
そのまま維持したい場合、消滅前に眷属へダンジョンマスターの記憶のみ移植、管理させる。
と言う手も有ります。
その場合劣化ダンジョンと呼ばれるでしょう。」
「はぁ?恋人が欲しい、デスか?
疑似空間で好きに作って下さい。
え?性格がヤバそうな恋人は要らない?
まぁ?!寂しいのに要求大きいデスね!
勝手にして下さい。
もっとも、私の担当はお見合い斡旋業な愛のキューピッドデハ有りませんので無理デスかね。
あ、ダンジョンマスターの間は生殖機能付いていても、性欲湧きませんよ?
いやいや、私に文句言われても知りませんヨ。
そう言う仕様なので、文句はパニマ様へどうぞ。」
「ゴーレムで人形やロボ?
作っても良いデスが、対人間相手に使用許可が出るものは少ないとオモイマスヨ?
特に精巧な物ほど半神か天使以上の権限が無いと使用許可中々出ないとオモイマスヨ?
イエ、以前転生者で半神にもなった使徒女神様が作られて騒ぎになった後に封印されましたし。
いやぁ、アレは便利では有りましたが完全に世界観無視でしたねー、アハッ!
多分ゴーレムロボ辺りは人間相手には危険なので、対魔王対邪神相手用に限定されるかと。」
こっちはクレームや質問対応。
ふむ、ゴーレムロボが凄く気になるんだが…ロマン溢れる転生者だな、おい。
あと、性格難ありで悪かったな!
こんな感じに声をかければ無視はされずにキチンと返事は貰えるんだけど、なんて言うか関わりたく無い空気が分かり易い程プンプン漂う。
そんな天使のローライト様は、今日も蔑んだ目でこちらを一瞥した後、天界に帰って行った。
イヤ!普通に見てくれよ!
マジで怖いんですけど!