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「それではシリウス様、既にパニマ神様からご説明が有ったかも知れませんが、改めてこれから貴女様が行える簡単な行動説明と禁則事項を説明致します。」
出入口設置するまではダンジョンは稼働しない為、ダンジョンを作成したり変動させるときは出入口を閉じられる。
ダンジョンマスターのぼく自身はダンジョンから出入口不可能。
禁則事項として、大雑把に纏めると。
迷宮ポイントを早く貯める為に無理な難易度設定で死者を増加させる行為。
神々への叛逆行為。
ダンジョンに来る冒険者への危険な思考操作行為。
宝箱で配布するアイテムを、犯罪の温床になる物や文明違反の物、例えば人体に悪影響な麻薬・細菌化学兵器や、魔法に頼らない近代兵器武器火器等にする、などが大体禁止。
それよりヤバイのが、魔法と科学を混ぜた上位文明の魔科学と言う物のアイテムらしいのだが、流石にぼくの居た世界では無いものなのでこちらは関係無かった。
何でも世界も精霊も殺す兵器があるのだそうだ。
うん、精霊とか良く分からんけども。
居るんだね、この異世界。
そして、ぼくらが産まれるずっとずっと昔。
神々が地上に居た頃の地球でも、その魔科学文明は有り宇宙とすら交易をしていた。
やはり大戦が発生し、その文明も滅び。
神々は地上を離れ隔離空間から管理し。
科学のみが残され、魔法を人々から禁止されて今の世界に切り替わったそうだ。
その名残として、占い・呪い・御守り・おまじないがあり。
魔法と言う概念は創作物の中のみに残泊を残して居る。
どうも聞いていると魔科学と言う物のは、かなり人類に高度文明をもたらす反面、世界を壊す諸刃の剣みたいな危うさのある物の様だ。
神々はきっと、魔科学が発生したら常に厳戒体制を引くのかも知れない。
さて、今のぼくには魔科学なんて物は関係無いから話を戻そう。
ダンジョンマスターの住む空間はゲームの仮想の街の中の家として存在し、その仮想の街でのみ出入り可能。
ダンジョンの形を決める。
平原型。
地下洞窟型。
タワー型。
この三つが基本。
変わり種に属性型や日替わり週替わり変動型などがる。
初心者向けダンジョンは10階層迄。
ダンジョンマスターがダンジョンを作る際、MP(魔力)HP(体力)SP(精神力)GP(神力)SKPと言った通常のステータスとは別にDPという物を使用する。
DP初期値は100万。
沢山に思えるが、結構細々と消費する。
なので、補填が必要となる。
手っ取り早く入手するのはダンジョンに人が来て迷った時間の体力や魔力なんかを迷宮の壁が少しづつ貰いDPへと変換するか、ダンジョンモンスターとの戦闘で発生するパワーやダンジョンでの死者からエネルギー化させて奪う事も可能だ。
今の所、シリウスはダンジョンに来た冒険者を死亡させる気は無い。
むしろどうやってリピーターを増やす事を思考するしかなかった。
ゲームだろうと観光地だろうと迷宮だろうと、相手が死ねば客は帰ってこないからだ。
もっとも、初心者ダンジョンは死なせず入り口戻り有りきなので関係ないけれどもね。
DEAD or ALIVE
もう少しダンジョン運営に慣れて人が死ぬ事も可能だと思えたなら、後半のダンジョンは殺さずはヌルいと思うのだろうか?
魔物の居る危険な迷宮で人が死ぬのは自己責任だ。
が、迷宮での死は当人納得で有っても気持ちの良いものではない。
無論こちらは殺す側になる。
死のゲームを千年やらされると思うのか。
迷宮と言う娯楽施設環境を提供する変わりの等価交換と思うのか、ダンジョンマスターとしての覚悟も必要になるのだろうか?
パニマ様は言っていた。
「ダンジョンでの冒険者の死は、若く幼い魂の修行場でも有るから魂への傷も浅く次の転生も早い。
経験値を積めば、死んで記憶を無くした後も魂にはキチンと刻まれるから無駄にはならない。
むしろ対人での騙し合い殺し合いの方が魂は傷が深くなるんだよ。
そんな訳でね、魂の熟練度が上がれば無茶無謀はしなくなる。
だから、覚悟が決まったら死ぬ迷宮を作ってね。」
そんなことを言っていた。
彼からは、人の生死が可哀想とか迷宮で戦闘で死なせる嫌悪とかが有るのか、ぼくには分からなかった。
ただ分かったのは、ダンジョンマスターで人の生死、魔物の生死を千年管理し見つめ続けると言う罰と、人の生死を扱う覚悟が無いとぼくが心を壊す可能性がある仕事かも知れない。
ごくっ、と喉を小さく鳴らす。
すると、ぼくの恐怖心に気付かれた2人が心配そうにこちらを見ていた。
「シリウス様、迷宮運営やそれ以外でも困った時は、我らをパニマ様を頼って下さい。
きっと1人で孤独に抱え込み、ズルズル考え込むよりも良い答えが得られる筈です。」
「私達は迷宮の事だけで無く、貴女様の心も支えサポートする役目を負っております。ですが、前世で傷ついた魂も癒す事は時が必要です。
けれど、孤独にさせるつもりもございません。
私達はシリウス様を絶対裏切りません。
だから、焦らないで。
ゆっくりとで良いのですよ。」
「2人はぼくを甘やかし過ぎです…でも、ありがとう。
ちょっと震えが止まりました。」
つい浮かべた涙が目元に溜まる。
零さないように上を向いて、ちょっぴり半泣きで微笑んでみた。
この身体になってから、感情のセーブが難しい。
感情が身体年齢に近くなったのかな?
いや、心の赴くまま。
泣きたい時に泣き、笑いたい時に笑えって事なのかも知れない。
袖で涙を擦らないように抑え拭う。
そして、深呼吸。
ぼくは迷宮の設定操作し始めた。
「ガラフ、ティナ、ぼくはこの初期ダンジョンを迷宮都市にしようと思うんだ。
だから、初期ダンジョン設定として、外部から悪意有る進入や戦闘を禁ずる。
その代わり、前世のぼくの世界であった遊園地のようなテーマパーク。
娯楽施設として機能させようと思うんだ。
それでオアシスを強化し水源確保。
日影や畑や城や町をあらかじめ完成させる。
残りのポイントで五つのうちの二つ目のダンジョンは、便宜上初期ダンジョンって事にしようかなと思ってるんた。
可能かな?」
「可能と言えば可能です。
ただ、ダンジョン内の戦闘不能都市となりますと、ダンジョンに来る者達数や感情によって追加ポイントを集める事となります。
又、ダンジョンの町に住む為の許可をどう致しますか?」
「2人はダンジョンに来る人達に会えるの?
そっか、大丈夫なら2人に受付場所を用意するよ。
一般的な価格で賃貸物件の貸し出し期間を決めてくれ。
土地はぼくの物だから売れないし、貸し出すしか無いからね。」
「迷宮に住まわせる事で、半永久的にエネルギーポイント補充するのですね。」
あぁ、そう言う考え方も有るのか。
ならお金取らない方が良いのかな?
「いえ、無報酬で家が貰えるとか、とても胡散臭いかと。
寧ろこのままでよろしいかと。
それから、お金もポイントに変換可能です。
あ、賃貸する場所は入口に門番設置するまでは門の関所的な所でやりましょう。
それと、宿屋食事処武器屋防具屋道具屋と言った基本的な町の者達は、我等の配下よりもパニマ様に呼んで頂きますか?
新たな人々でも転生者でも、良き様に用意して下さると思います。
住居と仕事場は同じ建物で可能ですしね。」
「でしたら賃貸許可得た者のみ住宅地の家に入れる様にしましょう。」
「パニマ様に連絡はどうしたらいいの?」
「ステータスのヘルプボタンに神々への申請書・要望書・手紙の三項目が有ります。
今回は申請書か要望書どちらでもよろしいかと。
それを押した後にシリウス様の前世で言うメール?と言う物と入力操作は同じそうです。
入力後、送信を押せば天界のパニマ様方に申請や要望が転送され。
却下なら即座に。
許可が下りれば、パニマ様よりお返事がステータス画面に届きます。
届いた時は音が鳴るそうです。
連絡音や緊急音などは、ステータス左下端の設定を押すとそこから音を選択して変えられるそうです。
それと、音・アイコン・背景画像は貴女様の前世での記憶を元に選べる様になっております。」
パソコンやスマホのようなお年寄りも楽チン親切設定なのか、文字も大きく分かりやすい。
文字の下にこの世界の言葉で翻訳されている。
これぞ異世界翻訳的な!
あ、ディフォルメされたぼくやガラフやティナやパニマ様のアイコンも有るのか。
拘りだね。
「分かった、今から申請書出して置くよ。」
少し考えを纏めてから申請書を入力して送信。
数分後に許可書が届いた。
「ダンジョンマスターは君だからね!
好きな様に作るといいよ。
町の施設の職員達は、役目に有った転生者。
門番用騎士・錬金術士・鍛治師・薬術士・回復術士・神官・魔道具師・属性別の術士等を配置して置くから安心して欲しい。
まぁ元々何処かへ転生配置する予定が、むしろ場所提供して貰ったのだからこちらこそありがとう。
初期ダンジョン内は人は死なないしエネルギー補充率も低めな設定だ。
だから戦闘させずに配置するなら、町の人の数を増やす事と、ダンジョンも増やす様にね。
初期ダンジョンのダンジョン都市化案はとても面白いから、僕達神々からボーナスポイント100000追加で上げるね。
それで次のダンジョン作ると良いよ。」
パニマ様の許可は大盤振る舞いな気がするが、有り難く色々使わせて貰う。
でも、パニマ様は優しく厳しい神様なのかな?
まず、経験者や能力者が職員として少数でも配置されたのはこちらとしてもかなり助かる。
今後ダンジョンに潜る冒険以外は、サポートとなる武器・防具・魔道具・アクセサリー・回復薬・傷薬・ポーション・解毒薬等を扱えるお店。
宿屋食事処の者達。
門番やダンジョン都市内外警備する専門家などが必要だ。
危険が伴う普通の一般人は、ダンジョン都市には大量には必要無い。
だが、冒険者だけの町など不自然になる。
まぁ今後はダンジョン都市として人が増加すると、数が増えやすい人類は、勝手に一般人も増加するだろう。
申請書が通ったと告げてから初期ダンジョンを作る。
中央にお城。
城の入口手前に台座が有り、剣が刺さっている。
その剣が抜けないと城には入れない。
まぁ、今の所城の中まで完成してないから。
完成したら城の持ち主になる資格者をパニマ様に用意して貰おうかな?
出来れば屈強な男よりも、お城に似合う綺麗で優しい心の女の子が良いよね。
剣は武器?
どちらかと言うと合鍵だよね、コレ。
城の裏は大きなオアシス。
これだけだと水源が枯れた時困るので迷宮全てで循環システムを作り上げ。
このダンジョン環境コントロール用の魔力で定期的に擬似雨を降らせて水源を潤す。
ダンジョンに訪れる人が増加すれば、人々の微量に漏れ出る魔力や感情からポイント変換されて循環させるのだと言う。
初めの100年間は手持ちのポイントと環境で賄えるから、それまでに迷宮リピーターを増やす努力をしろって事かな?
城の手前に薔薇の石垣迷路や噴水広場を設置。
オアシス→城→噴水→道沿い→町→ダンジョン→初期ダンジョン壁を一周して水源浄化→地下を巡りオアシスへ戻る。
そんな上下水道を設置。
上下水道を浄化用のスライムを。
街中にもゴミ処理用のスライムを用意。
この二種類スライムはとても便利なのだ。
彼らは人に危害を与えない種類で、攻撃してもアイテムも落とさないし経験値の旨味は少ない。
数は多いが進化が止まっており、巨大化もしない。
多少駆逐されても人前に出る事は稀なので問題無かった。
増えすぎたら他のダンジョンへと移り、今度はダンジョンの掃除屋として活躍する。
一応ティム可能で、懐っこく。
一家に一匹居ると便利かも知れない。
それと、町には番犬用の小型狼魔物とネズミや害虫用の子猫型魔物も用意した。
彼らも犬猫同様ペット感覚でティム出来る。
やはり懐っこい。
スライムよりは経験値貰えるが、すすめの涙レベル程度なので余り狩りたがるものは少ない。
飼い主出るまではティム専用の魔物ショップで使役し餌も与えブリード、その後販売予定。
スライムも魔物屋で買える。
実験的に半野良魔物を町に解き放って居る。
まぁ、餌は魔物屋で貰える設定にした。
増え過ぎたら彼らもダンジョンへと移る。
そこを抜けると放射状に町を創り上げる。
大きな道は4本。
東は商業や服屋・南は宿屋や冒険者ギルド魔物屋駱駝屋・西は鍛治防具アクセサリー工房兼武器屋防具屋アクセサリー屋・北は錬金や魔法術の研究所兼アイテム屋。
道の先にダンジョンを作る予定だ。
そんな訳で、パニマ様からの追加ポイントも使って、二つ目のダンジョンも完成させた。
三階層までは完全に初心者用の弱いダンジョン。
4階層より上の9階層までは少しづつ強い魔物を出して行き、10階層で炎のダンジョンと後に言われる朱雀を用意してみた。
まぁ、単純にダンジョン四ヶ所だし四神、ボスはそれぞれ朱雀・青龍・白虎・玄武でいいかな?って感じで計画を進めた。