勇者の兄と無能の弟
チート能力を持ってそうで持ってない主人公を書きたくてこの作品が生まれました。
良かったら読んでいってください。
「いつまで寝てるの!今日は大事な日なんだから早く起きなさい!」
母が子を起こす。そんないつもの風景だった。
1つだけ違うとするならば本当に今日は大事な日であって、
この家族にとってはさらに特別とも言える日である。
起きる気配がないと踏んだのか部屋に向かって足音が近づいてくる。
そして足音が止まり、一拍置いた後に扉が勢いよく開けられた。
声の主であるメアリは部屋に入るなり手早くカーテン、窓の順に開けていく。
「ほら、イチロ! 早く起きなさい」
「……んー」
「お兄ちゃんに置いてかれちゃうわよ?」
「……それは……困る」
ごろごろしていたイチロは渋渋と布団から出る。
メアリは満足そうに頷くと「ご飯出来てるわよ」と言い残し
部屋から出て行った。
それを見送った後イチロは汗を吸った寝巻を布団の上に脱ぎ捨て
いつもの服の中でも少しだけ気にいっている物を選び手際よく着る。
今日は大事な日だ。
称号がモノを言うこの世界で最も偉大な称号の授与式。
史上二人目となる【勇者】が授けられる日。
「ホント、すげぇだろ……色んな意味で」
「イチロ!起きたか!もう少しで俺遅刻するとこだったぞ!」
着替え終わり食事室にやってきたイチロをジロウの第一声が迎えた。
「いや、そこは置いて行けよ、勇者サマ」
「まだ【勇者】じゃないさ。 もっと言えば別に欲しいわけでもない」
そう、今日はイチロの兄であるジロウが【勇者】を授かる日なのだ。
イチロはいつもの席に腰を下ろし、目の前のパンを掴む。
「ジロウ以外に【勇者】だなんて誰が名乗れるんだよ」
「んー……イチロ?」
ジロウの言葉でパンを千切り、口に入れる寸前でイチロの動きが止まる。
「その冗談は笑えない」
「冗談?本気さ」
ジロウは今日【勇者】になる。だがイチロは何者でもない。
イチロはイチロである事以外では自身を証明できないのだ。
本来ならば十歳になると教会で称号を授かる事になるのだが、
イチロとジロウは共に教会で称号を授かる事が出来ず、ちょっとした騒ぎとなった。
既に頭角を現していたジロウに関しては相応しい称号が無かったとされたが、
秀でた能力のないイチロにとっては無能の烙印を押されたに等しかった。
「俺と一緒に旅をするのはイチロだって決めてる」
「あら」と嬉しそうにするメアリ。
そんな事には目をくれずイチロはまくしたてる。
「はぁ?? お前馬鹿だろ?足手まとい連れて行ってどうするんだよ」
「【勇者】の子が足手まとい?それこそ冗談さ」
イチロとジロウの親にも大きな問題があった。
母が【聖女】メアリ。かつて【勇者】と共に魔王討伐の旅をした超のつく有名人。
そして父がその【勇者】一郎。
ただ、一郎はメアリを置いて一人で魔王との戦いに向かい戻らなかった。
と、メアリ本人が言っているため相打ちにあったとされている。
その二人から生まれた双子がジロウ、イチロ。
ちなみにジロウは一郎が名づけたらしく、
イチロはメアリが一郎からとったと言っていた。
英雄の血を引いた双子。
勇者の兄と無能の弟。
その始まりの朝が過ぎて行った。
序章すぎて見事に何も始まらず申し訳ないです。
展開を早めにする事を心掛けて行きますので、これからもお付き合いいただければと思います。