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たった一人の魔法少女  作者: 天竺霽
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第七話 終わりの時

「園香……。」


守りたいと思う衝動が一番正体をバラしたくない人の名前をつい呼んでしまった。

気付いた時には「そのか」と三文字全てを言ってしまったため取り返しがつかないかもしれない。


「ふふっ…やっぱり渚は渚だね。」


やはり何回この子の顔を見ても守りたいという衝動に駆られる。

ここまでくればもう正体をバラしてもいいんじゃないかと思い渚は観念して自分をさらけ出した。


「そうだよ…私は私だよ。」


渚はハッと我に戻った。

今はこの人体模型と戦っている時ではないか。

人体模型は聞き耳を立てていて、涙もろいのか僅かに瞳が揺れていた。

__というか人体模型って泣くんだね…。


『そろそろ終わりか…良い話じゃが、わしはお前さんたちにこんな姿を見せた。じゃからこのような良い話を聞かされようとどうされようとわしはお前さんたちを殺す。』


先ほどまでうるうるしていた瞳が話しているうちに殺意のこもった瞳に変わっていった。


「私があなたを倒す……この子、園香を殴ったから倒す……。」


渚は両手に抱えてある光の集合体にような球体を左手に持ち帰ると再び意識を手の細胞に移した。

__人体模型を殺したらどうなるか分からないけど…やむを得まい。

渚は細胞の一つ一つが活性化されるのを感じるとそのまま力を球体へ移した。


「覚悟…。」


『…わしが簡単に倒れるとでも思うなよ…。』


人体模型は剣を二本持ち構えを、渚は球体に手のひらの意識を込めると片方の目の色が変色した。

夜空に光る一等星のように強い輝きを放っている。

__すごい…これが渚の本当の力…。

園香は深い感動を覚えた。


「___ハァァア!!!」


渚は球体から凄まじい威力と速さを持つ無数の光線に全身の力を込めた。

自然を連想されるような色を発している。

片手だけで打っているものの、本人にも僅かに反動がありぷるぷると震えている。


『__ふんっ!』


人体模型はその光線を剣だけで受け耐えようとしている。

おそらく人が光線攻撃を受けると瞬きするうちに満身創痍になるだろう。

次々と放たれる光線だが人体模型はカスリもせずに受け流し、耐え、そして反撃をいつ仕掛けようとタイミングを狙っている。

当初は渚が勝つだろうと思っていたが、人体模型の耐久度が高いためだんだんと光線の威力と素早さが落ちていった。

人体模型はそろそろ反撃にいけると思い徐々に光線の元へ近づいていった。

__このままじゃ私の力がもたない…だれかサポートしてくれないかな…

声に出さず反動にずっと耐えていると、人体模型の背後に人影が写った。

__誰…?

が、正体に気付いた時には既に人影は行動していた。


「__んっ!」


人影の正体__園香は人体模型を羽交い締めにするとそのまま後頭部に激しい頭突きをお見舞いした。

その攻撃に数秒気を緩めてしまい、その好きに多くの光線が人体模型へと迫っていた。


『し、しまった!』


「ありがとう園香…。」


小声だが園香の行動に感謝した。

反動がかなり片手に押し寄せているがせっかくの園香の行動を無駄にはしたくないと思いもう一段階威力と速度を増した。

威力と速度を増した光線は空気を切り裂き一直線に人体模型の元へと距離を詰めた。

園香は自分もろとも打たれたら重症か死亡すると考え一旦その場を離れた。

離れた瞬間、何百ともいえる光線が人体模型を襲った。


『グ、グァアア!おのれ、おのれぇぇえ!!』


悪役が滅ぶかのように人体模型は跡形も無く光線と共に消え去った。

一瞬の眩しい光を開けて大音量の爆発音が聞こえた。

その大きさに思わず耳を塞いでしまう。

その音は理科室の外まで聞こえたらしく、直後に扉を開ける音が聞こえた。


「渋染!大丈夫か!」


「園香ちゃん!生きてる⁉︎」


南や飯田、ジュンなどのクラスメイトが足音を立てながら次々と部屋に入ってくる。


「大丈夫、私は平気だよ。」


園香は彼らに向かってピースした。

生きていることに安堵した彼らはホッと安心したように笑顔がこぼれた。


「よかった…園香ちゃん生きてるよ…。」


南が思わず涙をこぼす。

彼女を含む他の女子生徒が園香を囲んだ。


「怪我とかない?」


「うん、出血とかの怪我はないけど少し脛を打ったぐらいよ。」


園香は右足にはいてある靴下をめくり脛を確認した。

確かに、百円玉並みの大きめの痣ができている。


「痛そう…今はできないけどあとでなんか応急処置できると思うからするね。」


「ありがとう…。でも、私は大丈夫だよ。渚が助けてくれたの。」


「水上さんが?水上さんって今回の肝試し来てないよ?」


ここで南はもしや…と感ずいた。

その予想は園香の答え合わせで合っていた。


「来てたよ。七不思議の一人としてね。」


園香は渚にお礼を言えていないことを思い出し後ろを振り向いた。

しかし、そこには渚の姿が跡形もなく消えており唯一残されていたのは一枚の紙切れだ。

紙切れを拾い、内容を読み上げた。




『園香ちゃん、怪我とかしてると思うけど帰りに私の家に寄ってくれる?少しだけ話がしたいです。』



















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