第五話 君は確かあの人だ
「人体模型と戦う?無理よそんなの、この中で腕に自信がある奴なんていないし…。」
南が言うことは確かに正しく的を射ている。
飯田は確かに納得できると思った。
「でも、こうしていても今、渋染は一人で戦ってんだぞ。あいつの命が危ねえかもしれねえのに何で俺らが助けないんだよ!」
「そうだけど…そうだけど私達が行って無駄死にしたらどうするのよ。これ以上危険に晒すつもり?大体、七不思議を調べる地点でやめておくべきだったわ。それに死傷者が出る以上危ない訳だし。」
「確かに、確かにそうだ。でも、でも…行かないとアイツが危ないんだよ…。」
南の鋭い言葉に何も言い返せなくなった飯田はただひたすらに自分の思いを伝えるのに精一杯だった。
「飯田が言いたいことは分かるわ。でもねどうにもならない時もあるの。」
「でも、でも何で…。」
二人の会話が続いている間でも理科室から何かがぶつかり合う音が度々聞こえてくる。
__何でだよ、何で助けたいのに動けないんだよ…。
自らが残りの人を率いて園歌を助けに行けないことに情けなさを感じていた。
「じゃあ俺が一人__」
ヒュッ
飯田の声を音が遮った。
風を切るような音だった。
音の源を見るとそこには見た事がない少女が佇んでいた。
西泉中学校の制服を着ていて長い髪の毛を下ろしている。
この場にいる人にとって見覚えのある顔立ちで、一部分が異常だった。
両目が爛々と輝いていて右眼の色が紫色、左眼の色が赤色に見える。
両目の色が違う、つまり『オッドアイ』だった。
「オッドアイ…もしかして…。」
「…ここに来ては……いけない…です……帰ることを勧め…ます。」
少女は途切れ途切れに言葉を紡ぎ出している。
「私が相手を……します……。ですので逃げて………お家に帰って下さ………い。」
全員は気づいた。
今自分達は七不思議に遭遇していると。
「貴方達の友達……私が……助ける、いえ…助けたい…。」
今回はいつもよりかなり短くなってしまいました。
次回は今回が短くなってしまった分、いつもよりかなり長くなります。
…多分