村
いい夢を観た。
この世界に、シアがいるのか。
マールに言われていた事だが、今初めて自覚した気がする。
だが、流石にこのまま迎えに行くわけにもいかない……か。
最初の目的地はゲーム時代のホーム、だな。
あそこは確か、コトマンって都市だったか?
「おはようございます。ごゆっくりお休みになられたでしょうか?」
その前に、目の前の問題をなんとかしないとな。
ああぁ、めんどくせー。
「はい。ありがとうございます。よく休めました。」
ま、実際あの頃の夢も見れたわけだしな。
少しは感謝しとくか。
「いやはや、高名な魔術師様にはこのような貧しい村のおもてなしではご満足頂けないとは思いますが…。」
「いえいえ、旅の途中ですから、ベッドで寝られるだけで有難いことです。」
「そう言って貰えると助かります。」
で、俺が今知らなきゃいけねーことはっと、
「ところで、ここはどの国のどの辺にあたるのでしょうか。」
どうして知らないのか疑われるか?
「ここはアルトリア王国の南、ヨシムーナ公国との国境付近にある村です。魔の森、アミーンによって国境が区切られています。」
アミーン、か。
確かダンジョンがあったはず。
「アミーンですか。アミーンについて詳しく聞いても?」
「はい。1200年ほど前にダンジョンが発見され、その後200年ほどこの辺りも栄えましたが、突然プレイヤーと呼ばれた不死の天上人達が消えてしまったのと同時に霧となって消えてしまったと聞いています。」
俺たちが消えたのと同時、か。
これは、多分マールが関わってるな。
プレイヤー達は不死の天上人と思われているのか。
「いろいろありがとうございます。ところで、私に何か用事があったのでは?」
驚いたことに このおっさん、次期村長らしい。おっさんの話によると、今回のウルフ共の襲来により、村の若手共が怪我をしたので薬を売ってほしい、けど金がない。どうにかならないか、と。
それに加え、今は黄の月、農民にとって大切な種まき時であるから、出来れば地を魔法で耕してほしいらしい。
「都合の良いことを言っていることは重々承知の上です。断ってくださっても構いません。ただ、死んでもしょうがないと諦めるしかなかったあの状況で生き残った。あの状況に貴方が訪れた。だから、何か運命的なものがあるのかもしれないと聞くだけ聞いてみようと思ったのです。」
確かに虫のいいはなしだ。
だが、悪くない。
これは逆にチャンスじゃないか?
俺が、スキル と 魔法 を使い慣れる良いチャンスだ。
スキルと魔法は似通っているようで違う。スキルには制限があり、Lv.によって使用魔力や回数制限が変わる。その一方で、一度発動したら自分の意思で解除するまで発動時に使用した分の魔力しかかからないのだ。
例え話をしよう。瞬足のスキルを使う時、最初に100のMPを消費するとする。その後、地球で言う、車の速度で走ろうが、新幹線の速度で走ろうが、最初に消費した100MP以上の消費がなされることはない。
Lv.が上がるにつれ使用魔力は少なくなっていくし、使用可能回数は増えていく。よって、俺にしたら、使用魔力は微々たるものである上に回数制限なんてあって無いようなものだ。
だが、魔法は……、
いちいち1回ごとに魔力を消費する。
威力によって使用魔力が増える。
めんどくさいものだ。
それでもスキルには存在しない機能の魔法が存在する事もあるが、その一方で反対もありえることであるから魔法が悪いとも言いきれない。スキル持ちもほとんどがプレイヤーで一般には余り知られていない。だから、使った時にどのような反応が帰ってくるのか未知不明だ。
「いいですよ。両方ともお受け致します。」
「本当にですか!?ありがとうございます。」
さて土魔法と土系スキル、どちらが良いのだか。