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田中さんのご家族と  作者: みあ
和真さんのご家族と
19/37

3月 ホワイトデーに科学館 2

 科学館に到着してから、まずは入場券とプラネタリウムのチケットを購入した。

 朝早くから人出が多くて、プラネタリウムを見ることが出来るのは二回目の投影ということだ。

「時間まで順に展示を見に行こうか」

 田中さんの提案にうなずいて、そろって行動を開始する。

 ただ、同時に同じフロアには行くけれど、興味の方向性は違う。なんとなく自然と、お互いの間に距離は生まれた。

 一番せわしなくあちこち見て回っているのは年齢的にまだ集中力が足りないであろうまゆちゃんで、逆に一番落ち着いているのは一番年上である田中さんだった。

 室内だから空調は万全だし、今日の田中さんは重い荷物がない。斜めがけのバック一つという身軽な姿も、落ち着いている要因の一つだろう。

 ゆっくりと展示物の間を歩き、近づいたり離れたり説明書きを熟読する様子の田中さんは、前回の動物園よりは楽しんでいるように見受けられる。それでもまゆちゃんが遠く離れようとすれば声をかけたり後を追ったりして目を配っているのはさすがだ。

 まあ、まゆちゃんは物珍しいからか、「あいりちゃんあいりちゃん」と何か見つけては私のととこに来ては見つけたものを教えてくれるからそう離れていくことはなかったんだけど。

 時々まゆちゃんのお相手をしながらあれこれ気ままに見学しているうちに、さほど待った感覚もないのにプラネタリウムの投影時間が近づいてきた。

「あのねあのね、まゆちゃん、あとであそべるトコいきたい。キッズコーナーがあるんだって」

 そろそろ行こうかと集まって移動を開始した途端に、まゆちゃんはそう主張した。

「星見たら、昼ご飯だから出るぞ」

「えー! あそびたいのにー」

 相変わらず仲の良い兄妹は、まるで父親と娘のような会話を交わしながら前を歩く。

「まゆはきっと、終わったらおなかが空いたって言いますよ」

 賭けてもいーですとにやにやするほのちゃんと私はその後に続いた。

 時間に余裕を持って会場に向かうのは私たちだけではなかったのか、エスカレーターを上る人は多かった。

 さらには一回目の投影が終わった人たちもちょうど出てくるタイミングだったらしく、会場フロアは人でごった返していた。

 田中さんはまゆちゃんをかばうようにさっと手を彼女の肩に回して人の少ない壁際に向かっていく。私たちも右往左往しながら彼らに近づいた。

「もう少し遅めに来た方が良かったかもですね」

 私が言うと、

「そうかもだけど、ぎりぎりでまゆがごねても嫌だしなあ」

 そんな風に田中さんは言う。

「プラネタリウムが目的で来たというのにごねるとかあります?」

「目先に楽しいことがあれば、目的なんてまゆは失念するね」

「ははあ」

 自信満々に兄である田中さんが言うからにはそういうものなんだろうと、私は納得した。




 さて、目的のプラネタリウムだけども。

 久々に見たそれはとても綺麗だった。日頃夜空を見上げるような風流な趣味なんてないので、かえって新鮮で。

 たとえ星を見るのが好きだとしても、満天の星空なんて家からじゃ見えないだろうし。

 でも、帰りが遅くなったときにでも、たまには空を見上げてもいいかなあと思える程度には、プラネタリウムの解説は面白かった。

 よどみない低い声音は耳に心地よくて――正直、途中うっかり寝そうになったけど、こういうのも時にはいいなと終わった時にはほくほくした気分だった。


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