こもりうた
林の中、微かに聞こえる
あぁ、これは赤子の声
だれぞが棄てた
幼子の泣き声
響く、響く
弱き幼子の声
林の中に木霊し
誰にもその声は聞こえない
ふらり、ふらり
何処から現れた女
白き着物を纏いて
幼子の元へと赴く
そろり、そろり
女は幼子に近づく
心配げに覗き込み
まだ息ある様子に安堵する
ゆらり、とその場に座り込む
そして赤子に乳をやる
大人しく飲むその子を見
柔らかに微笑む
ふわり、と少し距離を置く
触れそうで触れないその距離
だけども何かあればすぐに動けるように
はたしてその距離に意味はあるのだろうか?
震える、震える
女の声に合わせ空気が揺れる
それは歌だった
言葉は意味を成さぬが確かに歌だった
がさり、がさり
草の揺れる音
それが段々近づくのを聞き
女は名残惜しく何処へと消える
そして現れたのは男
何かをしきりに探している
否、何かではなく誰か
何故ならその者、歌を聞きつけ林へと入ったからだ
赤子を見つけ驚く男
辺りを見回し誰も居ないと分かるや否や
早足で村へと走る
幼き命を死なせぬために
去ってゆく男を見守る影
それは先ほどまでこの場にいた女
寂しげに、でもどこか満足げに
離れる背中を見送る
村へと帰る男
脳裏に過ぎるは婆の言葉
林から聞こえる歌を聞き逃すべからず
微かに聞こえたその時は、必ずその場へと赴くべし
それはお狐様の子守唄
幼き命を守るための歌
聞き逃すべからず
さすれば彼のお方様の加護が得られるじゃろう
男は今日も耳を澄ます
林から歌声が聞こえるのを待ちながら
かつて自身を助けた彼のお方に
再び会える日を夢見ながら
情景が浮かんだので書いて見ました~
如何でしたでしょうか?
感想宜しくお願いします(ペコリ)