1秒前と1万年前は同じ
「おい父さん。誰だよ。この子。」義雅は聞いた。本当は聞きたくなかったが。
「弟だよ。お前の。腹違いではあるが。」申し訳なさそうに言う。
「誰の子なんですか?」怒りを抑えて、感情のない声で言う。
「お前が知る必要はない。」
「あるよ。」怒りを抑えつける事ができず、思わず声を荒げる。
「お前が怒る気持ちもよく分かる。
だが、少し落ち着いて俺の話を聞いてくれないか?」
その問いには義雅は答えず、「兄さんは知ってるのか?」と聞く。
「あぁ」
「認めたのか?」
「あぁ」
「さっきから、あぁ、あぁって、責任持てよ。自分がした事だろ。
代替、父さんの我がままのせいで、母さんは今までどんだけ迷惑したと思ってるんだよ。
ちょっとは母さんの気持ちも考えろよ。」
「綾香には申し訳ないと思ってる。」
「母さんには当然謝ったんだろうな?」
「いや、言っていないんだ。」
「は?ふざけてるのか」怒りが再燃し、思わず口が悪くなる。
「チャンスがなくて」
「この期に及んでも言い訳をする父さんを見て、情けなくなったよ。こんな大人にはなりたくない。」
「若様、落ち着いてください。晴雅様も、反省しておりますし。」
京介にこう言われたので、義雅は仕方なしに矛先を収める。
「分かったよ。でも父さん、自分の口で母さんに伝えて。それだけはしてほしい。父さんと母さんの息子として。」
「分かってる。今度はお前にいい報告が出来るようにがんばるよ。」
「よし。この話は終わりだ。」
終わったことはしょうがない。義雅は世継ぎの件に切り替えることにした。
「父さん。俺からも話があるんだ。」