若様と子ども
「嫌がらせにも程があるだろう。」義雅は起こされてから5分も立つのだが、
未だに、文句を言っている。
「義雅様、そろそろ高松城に着くので、降りる用意をしてください。」
まだぶつぶつ言っている義雅はうんともすんとも言わない。
機嫌の悪い義雅に代わって、ここでこの時代の地方について少し説明しよう。
47都道府県があるというのは、2013年と全く変わらない。
そのうち東京以外の46道府県のトップは知事であり。
各都道府県に1個ずつある城に住んでいる。
知事は派遣と世襲の2種類あり、
世襲知事は、将軍家の分家、つまり新徳川家である。
46道府県中20県が世襲である。
他の26道府県は、幕府から直接派遣され、任期は5年である。
「なんで、高松の街は祭りの準備をしてるのか?
夏祭りの季節じゃないだろう。」
機嫌が直ってきた義雅が言う。
「あぁ、これは3日後の晴雅様の知事就任20周年記念祭です。」
「兄さんも来るのか?」
「もちろん」
「あれ俺は?そんな話聞いたことないけど」
「忘れたのですか?義雅様は本家の450周年記念式典に晴雅様に代理で出席する予定です。」
「あぁ、そんな話あったな」と納得する。
「失礼のないようにお願いしますよ」と光太郎は義雅に釘を刺す。
「分かってるよ。」若干イライラしながら答える。
「さぁ着きましたよ。」光太郎は言う。
そして車が止まると、すぐにドアが開く。
「お荷物をお持ちします。」家臣と思われる男が言う。
「ありがとう」と言いながら歩き出す。
城内に入ると、見慣れた顔があった。
「京介。久しぶりだな。元気だったが。」
「はい。若様の方は?」
「元気だよ。後、若様ってのもいい加減やめてよ。
若様何て言うの今じゃ京介だけだよ。」
「私にとって若様は死ぬまで若様ですから。」
「着きましたよ。」そんな思わず微笑みたくなる話をしているといつのまにやら父の部屋に着いたようだ。
「父さん。母さん。お久しぶりです。」と言いながらドアを開ける。
そして、父が見えた。父がとても若く見えた。
なぜなら横に見たことがない小さな子どもが見えたのだ。