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急げと磯辺焼き

「という事なんです。助けてください。竹中さん。」

目に涙を浮かばせるという我ながら素晴らしい演技で竹中に頼み込む。


「助けてはやらん。何度も言っただろう。」竹中は聞く耳を持たない。


「そこを何とか」土下座をしようかという勢いで懇願する。


「そこまで言うのなら、ヒントをやろう。」仕方なしに竹中は言う。


「ほ、ホントですか。」


「お前のお父さんは何て言った?」


「え?」


「だから、君が生まれた時、君のお父さんは何て言ったのかと聞いているんだよ」


あ、と思った瞬間、体が動き出していた。

「ありがとうございました」と走りながら言い、扉を閉める。

そして、光太郎の部屋に行き叫ぶ。

「父さんの所に連れて行ってくれ」





「香川はさすがに遠いですよ」光太郎は急かす義雅をたしなめる。


「そんな事を言ってる間に、スピードを1キロでもあげろ」


「お言葉ですが、車を運転したことがない、義雅様に車についてこんなに偉そうにされる、筋合いはありません。」


「父さんにはアポ取った?」


「はい。取ったと報告が来ました。」


「なら急ごう」強引に話を持っていく。


「晴雅様からの伝言です。ゆっくり来なさい。」


「その晴雅様って、あんたの脳内にいる架空の人物だろう」


「さぁ」話のお茶を濁す。


「その晴雅様は何て?」


「香川は遠いぞと。」


「まんまあんただろ。それ。」


「こんなしょうもない話をしてないで、まだ時間はありますから、お休みになってはいかがですか?」


「急げと言ったところで同じだな。寝るは。お休み。」


その時ちょうど高松城が見えてきた。

光太郎はニヤリと笑った。

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