許可と拒否
「俺たちの母さんは、お前が産まれる、前日、とても不思議な夢を見たらしい。
その夢の内容は、簡単に言うと、突然、母さんの上に虎が降りてきて、あなたに私の子どもを授けました、
とその虎が言ったという内容なんだが。聞いたことあったか?」
義雅は首を横に振り、疑問を兄にぶつける。
「それだけじゃ、なんで、産まれた時から知ってるのか?という疑問に答えれていないけど」
「え?お前、歴史、光太郎から、習ったのか?」
「ある程度は」自信なさげに答える。
「じゃあ、あの話をしないと。
お前、初代将軍は誰だか知っているよな?」
当然だと言わんばかりに、義雅は頷く。
「家太郎様の母である裕子様は、家太郎様が産まれる前の日、不思議な夢をみたそうだ。」
「まさか」
「そのまさかだよ。裕子様は、虎にお腹の子どもは私が授けましたと言われた、夢を見たそうだ。」
義雅はあまりの衝撃に軽いめまいを覚えた。
「ついでに、父さんはその時何て言ったと思う。こいつは将軍に必ずなる。と言ったんだよ。」
兄が話終えた瞬間、もう我慢できないという感じで義雅は言った。
「兄さん、世継ぎの地位を俺に譲ってくれないか?
俺は将軍になりたいんだ。我がままだと自分でも思う。
でも俺は日本を変えたいんだ。だから、兄さん、協力してくれませんか」
兄は俺を見た。目が合った。そして短く言った。
「断る。」
口調には決意が表れていた。
「何でですか?」
聞くべきではないと義雅は心の中で分かっていながら、黙っておく事ができなかったから。
「お父さんが義雅は将軍になる言った時、もう1言言ったんだ。
お前は義雅の補佐をしろって。
その時は悔しかった。
5歳だったけど、今でもその気持ちは忘れたことは無い。
そして、その時、俺は決意したんだ。将軍になると。」
義雅はただただ聞いとく他なかった。
「用事はそれだけか?なら帰ってくれ」
「あ、あぁ」義雅は戸惑いながら、席を立ち、扉に向かう。
兄が何か、声を掛けてくれるのではないかと期待した。
が、何も言わなかった。「さよなら」でさえ。




